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廃人による大会出場

 hawk bridgeさんの家は王宮のような内装をしていた。豪華なシャンデリアや、金の装飾が施された赤い絨毯に、大理石のような白い壁。

 凄い家ではあるけど、豪華すぎて少し落ち着かない。

「ひ、広いですね」

「ああ、俺はギルドマスターをやっていてね。ギルドの移転の時に、古い方を俺の家にしたんだ」

「なるほどねー。通りで広すぎて落ち着かないと思ったよー」

 ももは結構ズバッと物を言うタイプだった。私は冷や汗をかきながらおっかなびっくり見ていた。

「それは悪い事をしたね。もう少し狭い部屋を案内しよう」

 彼に連れられて小部屋まで連れて行かれた。さっきまでの部屋よりは狭いけど、私の家よりまだ広い。

「さて、RKさんがログインするまで何をしたものかな」

「はいはーい。今度武闘大会があるからみんなで参加したいなー」とももは高らかに宣言した。

 武闘大会? 私は公式非公式問わず、あらゆる大会の参加資格を剥奪されているのに、ももはそれに参加しろって言うの?

 二人が真剣に話し合っている中で、私はももにメールを送った。

『忘れてるかもしれないけど、私は大会に出られないんだよ』

『んー? アンブラァにはryuutaもあるでしょー?』

 確かにバグ不使用のryuutaは大会にも参加できるけど……私が大会に参加するのはどんなデータを使おうとも卑怯な気がする。

 私は断ろうとした。するとそれを察知したももが潤んだ目で上目遣いに見つめてきた。

 目は口ほどに物を言うとはよく言ったもので、その目はどんな言葉よりも饒舌に参加を訴えかけてきた。

『分かったよ。はぁ、顔合わせもしなくちゃいけないから今からアカウント変えるね』

「申し訳ないのですが、リアルで急ぎの用事ができてしまったので一旦落ちます。お疲れ様です」

「お疲れ様」とももとhawk bridgeさんの声が重なった。

 私はログアウトしてからryuutaでログインした。場所は前回ログアウトしたラストダンジョン。すぐに始まりの街、プレゼピオに転移した。

 街中の広場で適当なベンチに座り、少し息をついた。

 程なくしてももからパーティ申請を受けた。すぐに入った。別にパーティメンバーがすれ違うように入れ替わるのは珍しい事でもないため、hawk bridgeさんも、まさかアンブラァとryuutaが同一人物だとは思わないだろう。

「ryuutaさん! もも、ryuutaさんの友人だったのかい。それは強いはずだね」

「そうだよー。て言うかー、鷹ちゃんも面識あったんだねー」

 楽しそうに話している二人に水をさすように私は口を開いた。

「どうでもいい。大体の話は聞いた。用は戦うだけだな」

 別にこんな事が言いたいわけではないけど、このキャラがこんな話し方なんだから仕方ない。

「おー、ryuutaくんかっこいいなー。その通りだよー」

「それで、その大会について、もっと詳しく話してくれないかい」

「私から聞くよりー、これを見た方が早いよー」

 彼女がそう言うとプレゼントの通知が鳴った。チラシのようなデザインをしたアイテム『手紙』が届いた。

 色々な字体が混在したり、文字の大きさが違って文章そのままを読むと意味が伝わりづらいけど、全体の雰囲気で、大体の内容が伝わってくる。

 公式武闘大会『カリ・ユガの時代』が開催。

 優勝景品は今後実装予定『カリ・ユガ』シリーズ装備一式。

 開催日時は今日の二十一時から。

 一回戦はバトルロワイヤル。八人になるまで戦って、二回戦からはトーナメント。

 要約するとこんな感じかな。にしても、こんなイベントの情報は聞いた事がない。予告なしでやるゲリライベントにしては景品が少し豪華な気もする。

 こう言う限定品が強かったり、代用品がないと新期層が入った気づらくなる。特に、PVPが多いこのゲームでは尚更。

 そこら辺のバランスが良かったからここまで発展したゲームなのに、いきなりどうしたんだろう。それとも新しい装備が微妙なのかな?

 いくら考えても製作者の意図なんて汲み取れない。だから、そう言う物だと諦める事にした。

「カリ・ユガ装備か。確かに欲しいけど、優勝者限定か。俺は取れそうにないな」

 一応彼のために補足すると、彼が弱いのではない。むしろ通常プレイでは最強の部類に入る。

 ただ、HPを普段から低く設定しているせいでプレイヤースキルでの回避力が異常になっているももや、戦闘中に武器を変えて長いリキャストタイムが必要になる必殺技を、簡単にポンポンと出す私がおかしいだけだ。

「そうだねー。決勝は私とryuutaくんになるだろうねー」

「……俺は装備なら事足りている。そうなったら負けてやる」と私が提案すると、ももは不快感を露わにしてこう言った。

「ダメだよー。私と互角に戦える人なんて少なくて貴重なんだからー、一回一回ちゃんと戦ってくれないとー」

 もものプレイヤースキルはプログラムを覗いている時の私とそう変わらない。ryuutaを使っている間は戦闘力に極端な差は、HP以外にはなく、互角な戦いを繰り広げる事ができる。そのせいで一時期はチーターではないかと疑った程だ。

「……好きにしろ」とだけ言って会場に歩き出した。

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