エピローグは次の任務の幕開け
※ミズホ視点。
「おい、聞いたか? 高階富蔵の話」
「聞いたも何も、そのニュースで持ち切りじゃんか」
「ワイロに脱税か……社会党も信用ならねーな」
「『金は受け取ってない。秘書が勝手にやった』とか言ってるらしいぜ。秘書の不祥事は議員の責任じゃなかったのかよ」
「それと、神鷹会か。会長が捕まって、解散の危機に立ってるとさ」
ふふ、私たちの活躍についてウワサしてる。まさか事件を解決したのが十七歳のコンビだなんて、思わないよね。
人の切れ間が無い新宿アルタ前なんかで待ち合わせしてるから、さっきから耳に入りっぱなしだよ。
あっ、待ち合わせの相手が来た!
「ヤマトく――」
って、何か怖そうな人と一緒に歩いてる! もしかして絡まれてる? 助けに行かなきゃ!
けど、どこかで見たことあるような……あっ、歌舞伎町で会った飛熊組の人だ!
「どうも、兄さんには世話になりやした」
「そう思うんなら、街中で話し掛けんな」
「いや、兄さんには十分に礼を言っておけと叔父貴からも言われてまして」
オジキって誰かな? もしかしてスナックで会った情報提供者さん?
何て考えてる間に、お礼を言い終えたのかヤマト君を解放してくれたみたい。
「おーい、ヤマトくーん!」
「ミズホ、待たせたな」
この感じ、なんかデートっぽくてイイね。
アルタ前で待ち合わせって言ってくれたのもヤマト君だし、私が言ったこと覚えててくれたんだね。
「歩きながら話すぞ。付いてこい」
「はーい! それじゃ、また腕組む?」
「あぁ、そうしようか」
えっ! ホントにいいの? やったー!
ヤマト君とピッタリくっつきながら、都会の人混みをスイスイ進んでく。
今日は日曜だからか、カップルの数も多いね。私たちも、そんな風に見られてるのかな?
「ミズホ、お前ドイツ語は話せるか?」
「うん! ドイツ語だけじゃなく八ヶ国語も話せるもん」
「なら、決まりだな。次の赴任地はドイツだという話だ」
ありゃ、仕事の話でしたか。
あー、それで腕組んでいいって言ったのかな。周りの人に聞かれないよう、ひそひそ話がしやすいように。
「ドイツかー。いいよ! ヤマト君と一緒なら、どこだって行っちゃうよ!」
「どこだって、か……。さっき八ヶ国語話せるとか言ってたな。他は何語が出来るんだ?」
「えっとぉ……英語、ドイツ語、フランス語、北京語、広東語、土佐弁、広島弁、博多弁!」
「何だ、そりゃ」
あっ、ヤマト君、笑った!
嬉しいなー。もっとギュッてしちゃお!
「ドイツまで行くってことは、お泊りもあるんだよね? ヤマト君と一緒に夜を過ごせるなんて、楽しみ♪」
「そっちの期待は、しないでおこう」
もー、全然ノッてくれない! そういうクールなトコを好きになった、私の負けかな……。
でも、いっこだけ反撃しちゃお!
「心配いらないよ! その日は“黒”は、はかないから!」
「お前……」
へへ、ヤマト君の趣味、一つ発見しちゃったもんねー。
次の任務の時こそヤマト君を振り向かせて、本当のパートナーになれるようガンバるよっ。