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パラレルワールドから転生してきたクールな俺に世界中のスパイ(美少女)やテロリスト(爆乳)が言いなりなんだが  作者: WhoamI
第一章 麻薬組織を潰そうとしてたら日本の最大野党まで潰しちまった話
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第四話 深夜のスナックで情報をもらう

「そ、それで……どこまで行けばいいんで?」


 すっかり萎縮(いしゅく)したヤクザを先頭に、俺たちは深夜の歌舞伎町を進んでいった。

 周囲は段々とネオンの灯りも人の姿も少ない場所へと光景を移していく。


「黙って歩け。このまま、まっすぐだ」


 俺たちに危害を加えられると思ってるのか、さっきからビビり過ぎだな。

 それとも、他の組の縄張り(シマ)にでも入ったのか?


(確かに、この辺りは日本のヤクザのルールは通じないかもな)


 俺たちの足は、歌舞伎町と大久保の境目まで伸びていた。

 どちらの街の灯りも届かない、一段と暗い地域(エリア)だ。


「よし、ここまででいい。気を付けて妹のトコまで帰りな」


 この辺でヤクザを解放してやる。

 ここまで来れば目的地はすぐそこだし、部外者に密会の現場を教えるわけにはいかないからな。


「ヤマト君……」


 二人きりになって心細さを感じたのか、隣にいたミズホがピッタリとくっついてくる。

 確かに街灯も店のネオンも無いような場所だが、実際は営業中の店が並んでいる。


「この界隈は韓国式の店が多くてな。閉店時間が決まってないことが多く、大概の店は客が全員いなくなるまで営業してるんだ」


 一見すると店仕舞いした後のような飲み屋の中から、目当てのスナックを見つけ出す。

 入り口のドアを開けてみると、思った通り店内のライトが夜の街に射し込んだ。


「入るぞ、ミズホ」


「う、うんっ」


 意を決したミズホを同伴してスナックの中へと入る。

 目に見える範囲に客の姿は無い。

 カウンター越しに四十歳前後のママらしき女が話しかけてきた。


「今日はもう終わりよ」


「……お伽話を聞かせてくれればいい」


「……それなら、あっちのお客さんに頼んだら?」


 実は、彼女の正体はコチラの協力者だ。

 本物のママには旅行を楽しんでもらっている。


「こっちへ、どうぞ」


 奥からもう一人、女の従業員に扮した協力者が現れて案内してくれる。

 奥まった席に通されると、男が一人待っていた。


「……アンタらが?」


 本当に政府機関の人間なのか、と疑っているような目だ。

 こういう反応には、もう慣れている。

 まるで意に介さないといった態度で向かいに座ると、取り出したライターをテーブルの上に置く。


「そのライターは……松田さんの!」


 俺が取り出したライターを見た途端、男は目の色を変えた。

 このライターは、今日会った警察OBから渡されたものだ。

 松田さんというのは、その警察OBの名前だろう。


「これで信用してもらえたかな?」


「あ、あぁ……」


 ライターから俺の顔へと視線を移して、男が大きく頷く。

 ミズホも俺の隣に腰掛けたところで、男は大き目の茶封筒を取り出した。


「……確かに」


 受け取った茶封筒の中身を確認すると、そいつは俺が求めていたものに間違いなかった。


「何か質問は?」


 情報提供者は、すっかり俺を信用したみたいだ。

 何でも答えるといった態度を表に出している男に、俺は一つの疑問を投げ掛けた。


「報酬はいらないと聞いてる。だが、これだけのリストを用意するのは相当に骨が折れるはず。割に合わないのでは?」


「……松田さんに頭を下げられたからには、男を見せないとな。こんな仕事であの人の恩に報いることが出来るんなら、安い仕事さ」


 ミズホは要領を得ないのかキョトンとしているが、俺の方は察しが付いた。

 警察OBに代わって、協力に感謝するとしよう。


「分かった。礼を言おう。ここから先は俺たちの役目だ。カタギの人には、お引き取り願おう」


「……それじゃ、失礼しますよ」


 情報提供者の男が店を立ち去るのを見届けると、ミズホがくいくいと服を引っ張ってきた。

 あの男が何者なのか、聞きたがっている様子だ。


「あの男は、飛熊(トビクマ)組の元・若頭(ナンバー2)だ。今はカタギだが、組を抜ける時に相当なゴタゴタがあったらしい」


 そのゴタゴタを収めてくれたのが、例の警察OBだったというわけだ。

 ヤクザから足を洗っても、敵対する警察相手でも、義理・人情って奴はあの男の中に宿り続けていたんだな。


「見ろ、このリストを。ここに載ってるのは全部、関東最大の暴力団・神鷹(シンヨウ)会と繋がりのある連中だ」


 いくら飛熊組のナンバー2だからと言って、簡単に集められる情報じゃない。

 その苦労に今度は俺たちが報いる番だ。


「すごい……弁護士に大学病院の院長……ヤダ、警察署の署長まで!」


「しかも管轄区域は神鷹会の本部がある地区だ。警察に匿われながら、色々と悪事を働いてるに違いない」


 だが、この中でも一番重要なのは政治家の名前だ。

 神鷹会と関係を持っている自民党議員のリストを、あえて検察に回すことで政界清浄を図る。

 残った議員で閣内統一すれば、野党にも付け入るスキは無くなるだろうという目論見だ。


「ミズホ、お前はこっちのリストを頼む。自民党議員の名前を手分けして探すんだ」


「らじゃー♪」


 政治家……政治家……こんなに癒着してる奴がいるのか。

 しかし、与党よりも野党の方が目立つな。

 共産党、公明党、社会党……ん?


「高階富蔵――」


「あっ、聞いたことある、その人」


 俺のつぶやきにミズホが反応する。

 名前どころか、テレビ越しとはいえ声も聞いたことがあるだろう。


「野党第一党・社会党の……委員長だ」


「えっ! あの、おじいちゃん?」


 そう。昼間、二人で電気街を歩いてた時、街頭テレビに映っていた人物だ。

 与党の献金疑惑に対して、国会解散しろと(のたま)っていた社会党委員長だ。


「思わぬ収穫だな……。ミズホ、もう少し付き合ってもらうぞ」


「うんうん! イイよ! ヤマト君との夜は、長い方がいいもん!」


「その夜が、永遠の別離(わかれ)にならないよう祈りながら付いてくるのを勧めるぜ」


 何故なら、これから赴こうとしているのは――。


「行き先は社会党委員長……高階富蔵の家だからな」


「えっ……?」


 さすがにミズホも動揺するか。

 だが、俺の直感に従えば高階邸には、こんなリストよりもっと決定的な証拠が眠ってるはずなんだ。

 自民党議員の清浄化よりも、もっと劇的なフィナーレを観られることだろうぜ。

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