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パラレルワールドから転生してきたクールな俺に世界中のスパイ(美少女)やテロリスト(爆乳)が言いなりなんだが  作者: WhoamI
第一章 麻薬組織を潰そうとしてたら日本の最大野党まで潰しちまった話
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第一話 麻薬取引の現場をクールに押さえる

 路地裏の壁に背中を預けて、ジッと様子をうかがう。

 俺から見て右手の路地は、白髪の浮浪者(ホームレス)が座り込んで塞いでいる。

 反対側の路地には二人の男が、何やらコソコソ話している。


「じゃあ、これで……」


「よし、それで手を打とう」


 そんな話をしていた二人の男の間で、金の受け渡しが行われるのが見えた。

 続けて金を受け取った男が何やら小さな袋を取り出すのを、俺の鋭い目は見逃さなかった。


「いっ、てぇ……!」


 すかさず手にした日本刀の鞘で、袋を持った方の男の手を叩いてやる。

 地面に落ちた小さな袋は透明で、中に白い粉が入っているのが丸分かりだ。


「ひぇぇっ!」


 金を渡した方の男が、情けない声を上げながら一目散に逃げていく。

 俺は鞘に納められたままの日本刀で、取り残された男のアゴをすくった。


「お前の組織(バック)はどこだ? 言え」


「な、何だ、テメェ……警察(サツ)か?」


「そう思うんなら質問に答えるんだな」


 刀の白刃をさらす代わりに眼光を鋭くさせて射すくめてやると、奴も観念したようだ。

 脂汗が浮かぶ顔をゆがませて、ゆっくりと口を開いた。


「……飛熊(トビクマ)組だ」


 飛熊組――かつて関東一円に勢力を誇った暴力団・白虎(ビャッコ)会の下部組織だな。

 そんなことを考えている隙に、奴は俺の刀を振り払って表へと逃げ出していった。


「馬鹿め……俺が警察を配していないとでも思ったか?」


 無論、反対側の路地で座り込んでいる浮浪者風の男も俺の仲間だ。

 先に逃げた男ともども、警察で取り調べを受けるんだな。

 俺は、この証拠品を持ち帰るとするか。


「……ヘロインか」


 飛熊組の構成員とか言った男が落とした袋を拾い上げて、中身の白い粉を分析してみる。

 原料は……ラオスで栽培されたケシの実だな。そいつからアヘンを作って、中国に運び込む。そこで加工されたヘロイン――麻薬だ。


「やれやれ、こいつは飛熊組みてぇな落ち目のヤクザがバックとは思えねぇな」


 平成元年を迎えても、日本に真の平和が訪れる日は遠そうだ。

 だからこそ、俺みたいな男が必要ということだ。


 * * *


敷島(シキシマ)大和(ヤマト)、参りました」


「入りなさい」


 ドアをノックして名乗ると、中から入室の声が届いた。

 六十歳をとっくに超えた、しゃがれた声だ。


「失礼します」


 中に入ると、この狭い部屋の主の他にもう一人、六十歳を超えてそうな男がソファに座っていた。

 俺の顔を(いぶか)しむように見ているが、そういう視線にはもう慣れっこだ。

 部屋の主も大して気にも留めず、俺に話し掛けてきた。


「敷島君、君が捕まえた暴力団の男の身元が判明した。神鷹(シンヨウ)会のチンピラだそうだ」


 神鷹会――白虎会に取って代わって関東を牛耳るようになった暴力団だ。

 なるほど、職質された場合は敵対勢力の名前を(かた)るよう言われてたってわけか。


「関東最大の暴力団・神鷹会の幹部には、政治家とも付き合いのある者がいるという噂だ。国家公安委員長も、奴らを長いことのさばらせし過ぎた……と、言っていたな」


 俺を呼び出しておきながら、上司は一人で納得したみたいに(うなず)いている。

 もしかして、そこのソファに座っているのが国家公安委員長とやらか?


「室長、その口ぶりから察しますと――」


「そうだ、カンがいいな。ここいらで神鷹会と関係のある政治家を明るみに出しちまおうと、こう俺らは考えているんだな」


 いや、俺が聞きたいのは同席している人物が誰なのかなんだが。

 そんな視線を察したのか、上司である室長がやっと紹介してくれた。


「おう、そうだったな。こちらは俺と同じ警察OBで、今は隠居の爺様だ」


 つまり、俺のカンは外れたわけだ。上司の顔を立てて、そこは黙っておこう。

 それに、この警察OBが公安委員会の人間でないのなら、言いたいことを言っても問題は無いだろう。


「公安委員会は、なぜ自分の管轄(警察)で神鷹会を検挙しようとしないのですか?」


「公安委員長が乗り気でも、手下は分からんもんよ。どこまで神鷹会が入り込んでいるか分からんからな」


 やれやれ、公安委員会や警察庁にまでヤクザと手を組んでる奴がいるってことか。


「理解しました。今、世間では政治不信が高まっています。政界を清浄化する意味で、暴力団との癒着にメスを入れたいというわけですね」


「そういうことだ。そんな仕事、警察には出来やしねぇよ。そのために、俺たち『内閣情報調査室』が存在しているんだ」


「そして……その『内調』の任務遂行のために俺がいる」


 内閣情報調査室の室長は、満足そうに頷いてみせる。

 内閣の重要政策に関する情報の収集を担当する平成日本の隠密――それが、内閣情報調査室だ。

 その内調の職員が黒スーツのオッサンばかりじゃ、いかにもスパイだとバレてしまう。

 そこで、俺の出番というわけだ。


「なるほど、そういうことか。ようやく私も合点がいったよ」


 ずっと口を閉ざしていた警察OBが、俺の顔を見ながら膝を打った。

 多分、見るからに場違いな俺のことを、部屋に入ってきた時からずっと訝しんでいたんだろう。


(無理もない……確かに俺は十七歳。普通なら高校生の年齢(とし)だからな)


 そう。だからこそ、あの麻薬の売人も俺のことをただのガキだと思って油断したはずだ。

 そういった特殊な任務をこなすため、俺みたいな若者が何人かメンバーに選出されているんだ。


「この警察OBのツテで、神鷹会と繋がりのある人間を調べることが出来た。だが、その情報提供者と正規の職員が会うわけにはいかん」


 蛇の道は蛇……その情報提供者も暴力団の人間か。

 確かに内閣の人間が会うわけにはいかない。一個の暴力団組織を潰そうとしているのなら、なおさらだ。


「分かりました。その情報提供者と接触します」


「うむ。この任務は『内閣安全保障室』と合同で当たってもらう」


 俺が所属する情報調査室と同じ内閣五室の安保室か。

 なら、アイツがいるはずだな。


「同行する安保室のメンバーの指名は可能ですか?」


「知った人間がいるのか? 言ってみな」


高天原(タカマガハラ)瑞穂(ミズホ)――彼女を指名します」


 ミズホの他に俺のパートナーが務まる職員はいない。

 俺と同じ十七歳だから一緒に行動していても怪しまれることはないだろう。

 可愛い顔とEカップのおっぱいが衆目を集めてしまうのが難点だがな。

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