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パラレルワールドから転生してきたクールな俺に世界中のスパイ(美少女)やテロリスト(爆乳)が言いなりなんだが  作者: WhoamI
第二章 東ドイツのスパイを捕まえたら十四歳の金髪美少女に惚れられた話
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エピローグに芽生える恋心

 俺とミズホとノゾミは、日本に帰国するためフランクフルト空港へとやってきた。

 二人を先に保安検査へと行かせた俺は、見送りに来てくれた金髪美少女と会っていた。


「色々と迷惑かけたな。悪く思うな……と言っても難しいか」


「いえ……」


 俺と向き合うゾフィーは、妙に素直に感じた。

 そのくせ、どこか恥じらう様子も見せている。


「貴方たちが来てくださらなかったら、事態はもっと悪くなっていたと思います。事件が解決し、西ドイツが守られたのも貴方たち……特に、ヤマトさんのおかげです」


「そうか? 余計なことばかりして、とか言われると思ったぜ」


「そんなこと……私たちは、このままではいけないと実感しました。今は、東西ドイツの協力が必要なのだと。二つに分かれたままの国家を統一させ、自国の脅威を取り除き、ドイツ全体の平和を築く時代(とき)が来たのだと気づいたんです」


 いい考えだな。

 俺が前世のいくつかで見て来た東西ドイツの統一も、そろそろの時期だった。

 そいつに向けて、若い世代が限りない情熱を注いでいく。自分たちの明るい未来のために。

 ゾフィーだけじゃない。皆、そう願っているはずだ。


「それに……私自身、自分の未熟さを思い知らされました。このままでは、いたくない……」


 一瞬だけ目を伏せ、それから顔を上げるゾフィー。

 強い意志が込められた瞳は、彼女の顔をより美しく見せていた。


「私は、ドイツ連邦軍に入ることを決めました。女性の配属先は医療部隊だけですが、訓練は男の人と同様に受けられますから。そこで、一から鍛え直してきます」


 ほぅ……今の憲法擁護庁にいれば安泰だろうに。そこを去って、軍隊にか。

 決意は本気らしいな。感心するぜ。

 反面、身幹順(自衛隊用語で、背の高い順に整列すること)だったらドンケツだな、と考えると吹き出しそうになる。


「……おかしい、ですか?」


 おっと、(こら)えてたつもりだったが、口元が(ゆる)んでたか。

 軍隊入りを決めた誇り高い意志に対しては、誰も笑わねぇさ。


「そうじゃねぇ……楽しみだと思っただけだよ。お前の将来を想像すると、どれだけいい女になるのか……見せてほしいもんだ」


「えぇ……待っていてください。ヤマトさんが目を見張るくらい、立派に成長してみせます。貴方と……肩を並べることが出来るように」


 赤みが差した頬を隠そうともせず、まっすぐに俺を見つめてくる。

 そこから、ゾフィーが決意した切っ掛けが……俺への想いが、伝わってきた。


「だから、そうなった時には……もう一度、会ってくれますか?」


 十四歳の少女が今、告げられる精一杯の気持ち。

 意を決して伝えてくれたゾフィーに、俺は背中を向ける。


「……お前の頑張り次第だな」


 背中越しに感じられるゾフィーの視線。

 自分の想いが届いてなかったのかと、不安そうに俺を見ていることだろう。

 そうじゃない……俺が次に見るお前の姿は、立派に成長した後だと信じているからだ。


「頑張れよ、お嬢さん(フロイライン)


「! ……はいっ(ヤー)


 背中に届いた声は明るい響きを(たた)えていて、そして涙でくぐもっていた。


 * * *


「ヤマト君、遅かったね? 何話してたの?」


 ミズホたちに追いつくと、当然のごとくゾフィーとの会話について尋ねられた。

 十四歳の少女の純真な気持ちを尊重して、その内容は俺の胸の中に留めておこう。


「別に……()いて言えば、これからがアイツにとって本当の戦いが始まるってところか。自分のこと以上に、大切なもののために戦う……そんな対象が見付かったんだろう」


 はぐらかした俺の言葉に、ミズホは小首をかしげる。

 ミズホには、そんな大切な存在があるんだろうか。

 俺には、ある――。


「俺たちが守るべきものは、空を越えた先にある。そこへ、帰るとしよう」


「……うんっ。私にとって何より大切なのは、ヤマト君と一緒にいられる場所(ところ)だもんね!」


 そう言い返すミズホの瞳も、ゾフィーと同じくらい輝いて見える。

 大切に想う“誰か”と共に歩いていきたい――そう願う瞳の輝きは、同じものだ。


「そうだな……お前がパートナーでいてくれれば、俺も安心して仕事に(のぞ)める。お前がいる世界(ところ)を、二人で守っていこう」


「ヤマト君……! うん!」


 ミズホと肩を並べて、飛行機の搭乗口に向けて歩き出す。その道は、二人が共に歩いていく未来へと繋がっているんだろう。

 そんな俺たちの後ろで、仕事から解放されたノゾミの大声が響いた。


「よーし! ドイツにいる間は(いそが)しゅうて飲むヒマ無かったきね! 飛行機の中で、勝利の祝杯を挙げるぞね!」


「……ミズホ、日本に着くまでは眠れないものと覚悟しておけ」

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