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■■がほしいのですが  作者: ゆりかご
1/1

あなたの■■をもらえませんか?


《エピローグ》





さて、突然ではあるが一つ昔話をしよう。



あるところに、食べることが大好きな女の子がいました。


木こりの父親を追いかけて入った山。

母親と花を摘みに行った森。

近所のおじさんが世話をしている牧場。

色んな食べ物を、好き嫌いなく沢山食べる女の子に気をよくした大人達は、女の子と会うたびに料理やお菓子を少しずつ分け与えていました。 「◯◯さん、ありがとう!」

満面の笑みと、きちんと感謝をつたえらるれる素直さ。

キレイかつ、豪快に食べ進める姿は気持ちの良いものだと大人達は温かい気持ちで少女を見守っていました。


ある日のこと。

母親のお手伝いとして、森で木の実や野苺を集めていた女の子に声をかけた妖精がいました。

その妖精は、女の子が大人に内緒で森に入り、果物や木の実を美味しそうに食べている姿を何度も見かけていたそうで。

「君の食べっぷりは、見ていて気持ちがいい! 本当に食べることが好きなんだね」

「うん、大きくなったら遠くの町に行ってね。もっと色んなものをたくさん食べるのが夢なんだ」

満面の笑みで話す女の子に、妖精もそれは楽しそうだと笑います。

「そうだ、君がもっとどんなものでも食べられるように『おまじない』をしてあげる!」

女の子が大きくなっても好き嫌いが起きないようにと、妖精は『おまじない』をかけます。

町に行っても、食べたかったものが売り切れていたり。お店に置いてあってもお金が足りなかったりと。そういった巡り合わせが少しでも良い方へ転がるようにと。

「妖精さん、素敵な『おまじない』ありがとう」

大きくなるのが楽しみだと笑いながら、妖精と女の子は別れました。



妖精の『おまじない』は本当でした。

女の子が大きくなり、隣の村や町にひとりで行けるようになると店先にある人気商品は売り切れる前に入手できたり。

森や川にある見たことのない実や魚を食べてみれば、それらはとても美味しいものばかりであったり。

天候が悪く、不作続きな時期も『おまじない』のおかげで食べるものには困らなかったそうです。




食べることが大好きな女の子は、気づいていたのでしょうか。


彼女が食べるたびに笑顔で見守っていた大人達の表情が、次第にひきつるようになり、恐ろしいもの見るものへ変わっていったことに。

森や川で見つけた美味しいものを教えた友人や知人を次の日から見かけなくなり、そのまま何年も会っていないことに。

周辺の村々が不作となり、町に買いに行ける金銭もなく、皆が家に引きこもってしまった年、夥しい血痕と怯えきった数人の村人を残して廃村扱いになった故郷のことを。

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