表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/65

第9話 勇者と銀騎士の鎧

「ああぁぁぁぁーーーーっ!」


 刃物男はいきり立って、駆け付けた婦警の大守さんを威嚇した。

 その寄生といい、目つきといい、尋常ではなかった。

 心なしか、目が薄赤く光っているようにさえ見えた。


「ひいっ!? は、刃物を捨てなさいと言っています! これは冗談ではありませんっ!」


 脅えながらも、拳銃を構えて威嚇の姿勢を取った。

 それも、後方に人がいない位置にしっかり回り込みつつ――だった。

 このあたり、テンパりながらも彼女はちゃんと動けているように見えた。


「むっ……」


 ただ、回り込んだ立ち位置がちょうど俺と刃物男との間になってしまった。

 俺の位置からは、彼女の背中に隠れて刃物男が見え辛い。

 これでは指弾を放っても彼女に当たりかねない。


 彼女は口ぶりよりもちゃんと働けそうなので、任せてしまっても構わないか――?

 銃を向けられれば、流石に刃物男も観念するだろう。

 俺がそう考えた瞬間、刃物男がそれを裏切った。


「ああぁぁぁぁーーーーっ!」


 大きく刃物を振りかぶり、大守さんに斬りかかったのだ。

 直後にパァン! と乾いた発砲音。

 大守さんが拳銃を撃ったのだ。

 銃弾は刃物男の太腿に直撃したようだ。


「があッ……!」


 撃たれた刃物男はその場に崩れ落ち――刃物も地面に落ちてカランと音を立てる。

 発砲まで行ってしまったが、それはもうあの男の自己責任だ。

 これは撃たれても仕方がないだろう。


 彼女が無事刃物男を制圧してくれて、俺も助かった。目立たずに済む。

 そうほっと一息ついた瞬間――刃物男は何事もなかったかのように立ち上がり、彼女に向かって肉薄していた。


「……!? きゃああぁぁっ!?」


 そして首を片手で掴むと、そのまま軽々と持ち上げて見せた。

 片手で人を持ち上げるなど、人間の腕力でできる事ではない。

 あの眼つき、正気を失ったような言動、それにあの力――


 全くあり得ない事ではあるのだが――俺が異世界で足を踏み入れた事がある『魔の森』の瘴気にやられてしまった人間の症状を彷彿とさせる。


「くっ……!」


 周囲の人間は脅えて見ているだけ。

 これは俺が動かないと彼女が危ない。

 しかし銃弾を受けてもああだった男に指弾では効果が薄いかも知れない。


 直接引き剥がしに行くべきだがそうすると目立つ――

 そこで俺は、アルマに呼びかける事にする。


(アルマ! おいアルマ聞こえるか!?)

(な、何だナオ……!? 助けてくれるのか!?)

(違う! 建物の出口あたりに霧を出してくれ! 目くらましにする!)


 アルマの魔法であたりを霧につつみ、それに隠れて事を済ませようという事だ。

 そうすれば目立たなくて済む。


 俺は神の加護を受けた勇者のみが使える神性魔法を除けば、ごく一部の初歩的な攻撃魔法と回復魔法しか使えない。

 それだけ神性魔法の習得のハードルが高く、他を覚える余裕など無かったという事なのだが――とにかく、今欲しい霧での目くらましのような小洒落たものは使えない。


(ば、馬鹿を言うな! 今の私にそんなことをさせるつもりか、この鬼! 助けてくれると思ったのに!)

(あーあーわかったもういい! お前はお前の戦いに専念してろ!)


 駄目だあいつは話にならない。

 俺一人で目立たずに何とかしたいが――!

 と考えて、俺ははっと閃いた。

 ああそうだ、目立っても正体が分からなければ別にいいか!

 時間も無いし、すぐに行動に移すことにするべし!


「アイテムボックス! 銀騎士の鎧!」


 俺は物陰に隠れて、広大な容量を持つアイテムボックスを呼び出した。

面白い(面白そう)と感じて頂けたら、↓↓の『評価欄』から評価をしていただけると、とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ