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第8話 美人婦警と刃物男

 さて、アルマの用が済むまで俺はやることが無く暇である。

 近くの店でも覗いておくか。全部レディースの店なので、男一人は少々気が引けるが。

 と、ふらっと歩き出した俺の耳に入って来る声があった。


「おあああぁぁぁぁっ! ああぁぁぁぁーーーーっ!」

「きゃあああああぁぁぁ!?」

「うわあぁぁぁぁーー!?」

「な、何だあいつ……やばいぞ逃げろ!」


 ……何だ? 外からか?

 ここは一階で出口にも近い。外からの大声が耳に入ったのだ。

 しかし何か大事のようだが……?

 俺は外に目をやる。ビルの外装はガラス張りだから、外が見えるのだ。


「!?」


 刃物男だ! サバイバルナイフを携えた三十前後の男が、通行人に襲い掛かろうとしていた。

 表情も、口から発している意味不明の唸り声も、およそ正気のようには思えない。

 通行人達は一斉に距離を取って逃げようとするが、男は目に付いた者を追いかけようとしていた。


「おいおい警察はまだかよ――!?」


 ――これは、下手をすれば大事件になる。犠牲者が出れば間違いなくそうなる。

 だが、俺があれを倒してしまうと勇気ある一般人の元にマスコミが取材に押し寄せてくるだろう。


 うざったいのでそれは勘弁だ。下手に目立つのはNG。

 また国から命を狙われるような事に繋がりかねない。

 俺の力が現代の軍隊に換算してどの程度の戦力かは分からないが――数十や数百程度の部隊で抑えられるようなものではないだろう。

 そんな人外が存在するとなれば、その先は徹底的に研究されるか排除されるか――


 いずれにせよ俺の望む都会的スローライフとは程遠くなってしまう。

 なのでうかつに手出しは出来ない。

 これはできれば警察に何とかしてもらいたいのだが……


「うわああっ!?」


 刃物男の前で、足をもつれさせて転んだ男がいた。

 四十がらみの、サラリーマン風のスーツの男だ。GWなのにお仕事お疲れ様です。

 刃物男はその中年サラリーマンにロックオンし、サバイバルナイフを振り上げて近づいて行く。

 このままでは、間違いなく刺される――


「……ちっ……! 仕方ねえか」


 俺は決心して、アイテムボックスから宝石を一つ取り出した。

 この離れた位置からの指弾なら、見つからずに止められるかも知れない。

 丁度いい硬いものが無かったので、弾はこの紅いルビーだ。

 えらくラグジュアリーな指弾になってしまうな。


「よし……」


 俺ルビーの指弾を構える。


「まま、待ちなさあぁいぃぃっ! け、警察です! は、ははは刃物を捨てなさい!」


 放つ直前、刃物男とサラリーマンの間に立つ人影が!

 おお、いいぞ間に合ったか警察! だがその人物は――


「お、さっきの――!?」


 大守さんだったか。彼女が刃物男の前に立ったのだった。

 あれからまだ近くにいて、通報を受けて駆け付けたのだろう。

 しかし大丈夫か……? 彼女、明らかに怯えているんだが――?


(ナオ……! ナオ! も、もうダメだ……! た、助けてええぇぇぇっ……!)


 不意に天の声が割り込んだ。


(いや知るかよ! こっちは大変なんだっての! 黙って我慢してろ!)


 俺は思わずそう返していた。

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