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第7話 ハイエルフと女子トイレ

 さて、メシを食い終えた俺達はアルマの服を買いに、少し歩いたところにあるファッションビルへと向かった。

 駅前の大通りに面した、ガラス張りのお洒落な建物だ。

 まあここなら店もたくさん入っているし、アルマにちょうどいい服も見つかるだろう。


 予算は十万くらいか? 途中でATMに寄っておろして来た。

 アイテムボックスには金銀財宝が満載されている。

 今の俺は、鬼ヶ島から金銀財宝持って帰ってきた桃太郎状態だ。

 おとぎ話的に言うと、異世界から帰ってきた勇者は末永く幸せに暮らしましたとさ。メデタシメデタシ。と〆る所だ。

 俺は今から『末永く幸せに暮らしましたとさ』の部分に入るわけだ。

 十万など余裕である。


 先程金をおろすついでに、アイテムボックスがこちらでも機能するかを試してみたが、別に問題も無かった。

 外から見れば、何もない所からいきなり金塊を取り出したように見えただろう。

 いずれ全部換金して、現ナマにしておこう。

 一括で換金できればいいが、数億~十憶円レベルだとさすがに無理か……?

 ちまちま色んな所を回るしかないかも知れない。

 一人であまりにも大量に持ち込むと、犯罪を疑われたりする可能性もある。

 あまり目立ちたくは無いし、そこは考える必要がありそうだ。


 だが今はそれは置いておいて――アルマの服を買うべし、だ。


「さてまあ、目に付いたのをぱぱっと買っていくか。生活に必要な分だから結構数がいるしな。お前も気に入ったのがあったら言えよ?」

「……」


 だがアルマは無言で、俺の袖を掴んだ。


「? どうした?」

「ナオ……お腹が痛い――」

「はぁ!? 馬鹿お前、だからソフトクリームの食い過ぎなんだよ!」

「し、仕方ないだろう! つい止まらなくなってしまったんだ! あれが美味しすぎたのがいけないんだ……!」

「やれやれ――とにかくついて来い、トイレ行くぞ!」


 というわけでアルマを連れて女子トイレの前に。


「よし行って来い、この中でできるから」

「よく分からないから付いて来て貰いたいのだが……?」

「いやこっち女子用だから。俺がここから先に入ったら犯罪だ。行けば分かるから行って来い」

「わ、わかった……」


 アルマは女子トイレに入って行き――


(ナオ……! おいナオ――! 聞こえるか!?)


 どこからともなく声が聞こえる……まあ声の主は当然アルマだ。

 思念による会話――念話というやつだ。テレパシーとも言う。

 RPGによくある、どこからともなく天の声が聞こえてヒントをくれる的なやつを地で行く特殊能力である。

 正確には測っていないが、1~2キロ程度までならこうやって交信ができる。

 これは俺の能力ではなく、アルマの能力だ。普通のエルフにはできないが、ハイエルフにもなるとより神や精霊に近しい存在となるので、こういった奇蹟も行使可能なのだそうだ。


(何だ? どうかしたか?)

(入ったがそれらしきものはどこにもないぞ? 手を洗っている奴がいるが、その横に並んでするのか?)

(馬鹿お前、それは洗面台だろ! 違う違う!)

(だが他は全部入り口の閉まった囲いだけなのだが……?)

(ああ。満員なのかもな……近くに何人か並んでないか?)

(ああ、並んでいるぞ……)

(その後ろに並んで順番を待ってろ。順に囲いの入り口が開いて人が出てくるから。空いた所から順番に次のやつが入るんだ。見てりゃ分かる)

(ま、待つのか……? いつまでだ!? 私はお腹が痛いんだ……!)

(俺が知るか! とにかく並んで待ってれば大丈夫だから! 我慢しろ!)

(ううぅぅぅ……! わ、わかった――がまんがまんがまん……!)


 念話が終わると俺はため息を吐く。


「やれやれ……」


 まさか神にも近いハイエルフ様のありがたい天の声相手に、トイレの案内をさせられるとはな――

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