第6話 ハイエルフとソフトクリーム
しかしヘヴィな話だ。お互い牛丼をもぐもぐやりながら話すような事ではないだろう。
だが生卵をかけたキムチ牛丼は、空気を読まずに普通に美味かった。流石である。
「まあでも俺ももう社畜も勇者も御免なんでね。滅私奉公も慈善事業ももう終わりだ。今度向こうで何かあっても、もう助けん。後は好きにしろってな」
巨大な災害を何とかしようという事には協力も吝かではない。
だが、人間同士の縄張り争いに利用されるのはごめんである。
「……では、これからどうするんだ?」
「どうもしねえさ。向こうで旅してた時に見つけた財宝やら、褒美の金塊やらがたんまりあるからな。これだけありゃあこっちで一生働かずに暮らせるはずだ」
「ほほう――?」
アイテムボックスには金銀財宝をがっぽり貯め込んである。
帰ることを見越して貯めておいたのだ。
詳しくは換金しないと分からないが、数億円にはなるだろう。
やる事やって帰ってきたら、後は好きにさせてもらうぜ。
もう社畜にはならんし、魔王も倒さんからな!
勇者の力と一生遊んで暮らせる金を得た俺に、怖いものはないのだ!
「やっぱ暮らすなら、快適な便利な都会だよな。田舎に隠居は虫とかデカいしちょっとな……農業も別に興味ねえし。これからはここで、金にも時間にも縛られずに自由に生きるんだ――毎日うまいもん食って、やりたい事やって遊んで暮らす。これぞ都会的スローライフってやつだ」
「……ナオ、お前――腐っているなー」
「ああ」
「だがそれでいいかも知れない。お前はよく頑張ったからな、多少は報われるべきだ」
「お、理解されたか。まあお前も来ちまったもんは仕方ねえ、この世界を楽しめよ? 面倒は俺が見てやるからな。金はあるんだし」
「そうだな――では厄介になるとしようか」
「じゃあ食い終わったらまずお前の服を買いに行くぞ。その恰好は目立つからな」
それが終わったら、アイテムボックス内の金とか宝石を換金しに行かねば。
「郷に入れば郷に従えだな――いいだろう。よし食ったぞ」
「ああ俺もだ。ごちそうさまでした!」
「では行くか?」
「いやまだだ――」
「?」
そこに絶妙なタイミングで店員がやって来た。
「はい、ソフトクリーム二つお待たせしましたー」
「ども」
受け取って一つをアルマに渡してやる。
「これは……?」
「食後のデザートだ。冷たくて甘くて美味いぞ」
と、お先に一口食べて見せる。
「どれどれ――」
と、アルマもぱくりと一口。
「!? な、なんだこれはぁぁぁ――!? と、とんでもなく美味いぞ、し、信じられん……! こ、こんなものが存在するとは……世界は広いな――!」
「まあ違う世界なんだがな……ソフトクリームって言う食べ物だ。まだ欲しけりゃ買ってやるからおかわりしていいぞ」
「では早速おかわりだ、ナオ!」
「はやっ!? まあいいぜ、いくらでも食えよ。食べ過ぎて腹壊すなよ」
結局アルマはソフトクリームを6個も食べていた。
気に入ったのはいいが、そんなに食べて大丈夫なのだろうか……?
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