第54話 ハイエルフと宇宙世紀
「むむむ――! よっ! はっ! あっ!? ああーーー……っ!」
アルマの操るマ〇オが、穴に落っこちて死んだ!
「むぅ――もう一回だ! 行け! よっ! はっ!」
興奮した初心者にありがちな事で、マ〇オを動かしながら自分の体も動くという――
ゲームを覚えたての俺もこんなだったのかもな。
いや、もうちょっと上手かったよなあ、きっと。
こいつは下手だぞ、中々見ていて面白い。奇想天外な死に方をしてくれる。
今も穴の落ち方が前方ジャンプじゃなくて、何故か後ろに飛んで落ちている。
「プププ――何でそんな死に方になるんだよ、狙ってんのかお前は……!」
「うるさいな! そう言うならお前は出来るんだろうな!? やってみろ!」
と、アルマが俺にコントローラーを押し付けて来る。
俺達はクラシックミニのファ〇コンで遊んでいる所だった。
アルマがゲームに興味を示したので、やらせてみたのである。
流石に初見では難しいらしく、なかなか面白い光景を見せてくれている。
場所は俺の部屋だ。時間は昼を過ぎたあたり。
宣言通り俺は会長職なので常勤はしないぜ!
今は和樹やレナが、特別業務の指揮を執ってくれているはずだ。
俺達は和樹やレナからの連絡で、必要に応じて動く事になっている。
つまり必要が無ければ――こうやって遊んでいていいわけだ。
引っ越しはまだだが、落ち着いたらするつもりだ。
それまでこの部屋との名残を惜しむのも悪くない。
「貸してみろ。余裕だこんなもん。ゲーマーをなめんなよ」
俺の操るマ〇オは見違えるような動きで、1-1をサクッとクリアして見せた。
「ふふん♪ よーし次の面も行くか~」
「……ふんっ!」
気に喰わなかったのか、テレビ台の隅に立っていたガン〇ムのプラモが飛んできた!
「あっ! こらお前、投げるな壊れるだろ!」
と気を取られた隙に敵に当たって死ぬ俺のマ〇オ。
「この野郎――!」
「どうだ、お前もやられたぞ!」
「無理やり妨害するな妨害を! ったく俺のガン〇ムが……!」
「前から疑問だったが、それは何なんだ? 鎧の騎士の置物か? やたらと派手な色遣いだな」
と、アルマがガン〇ムに興味を示した。
「いやこれはあれだ、騎士じゃなくてロボだな。車と同じカラクリ仕掛けだ。中に人が乗って操縦するんだよ」
「ほ~!? こんなに小さいのにか? どうやって乗るんだ?」
「いやいや本物は人間の十倍以上でかいんだよ。これはそれを小さく作った玩具だ。プラモデルっつってな」
「おぉぉ! そんなものまであるのか!? しかしクルマは外を走り回っていたが、ロボはいなかったぞ? どこにいるんだ? 現物を見たいんだが」
あぁこいつ、現実とアニメの区別がついていない。
本当にリアルガン〇ムが存在すると誤解したようだ。
「いやいや現物はねえよ、これはアニメの中の話でな――まあ作り話だ。その中では人間の十倍以上もあるでっかいロボが戦うんだよ」
「ほほう――なかなか荒唐無稽な話だな……? 見当もつかんぞ」
「見てみるか? 俺も体感では十年ぶりだし、見たいかも知れん」
ブルーレイのディスク持ってるからな。
「ならば見てみるか――百聞は一見に如かずだ」
「ああ。お前も見ればガン〇ムをぶん投げたり出来なくなるはずだ。恐れ多くてな」
という事で、俺はブルーレイのディスクをセットして再生した。
んで、いきなり宇宙に浮かぶスペースコ〇ニーの絵とかが出てくるわけだが――
「おぉ? 何だこの真っ黒な空間は? そういう異空間でもあるのか?」
「そうか宇宙とか知らないんだな、お前。確かにそういう概念無いよな向こうじゃ」
「うちゅう?」
「あれだよ、空をずーっと高く昇って行くと宇宙になってるんだ。ここに出てくるような黒い空間な。キラキラしてるのは全部星だ」
「それはあれか? また作り話か――?」
「いやこれはガチで本当だ。本当に宇宙はある」
「ほ~! そうなっているのか!? ではこれは何だ? この丸い筒のような――」
「ああそれはスペースコ〇ニーって言ってな、中に人が住んでるんだ」
「おお凄いな! うちゅうにまで家を作っているのか、こちらの世界は!」
「いやスペースコ〇ニーは作り話だ想像の中の物だ。このロボ達もな――」
「? それは作り話なのか――どこまでが本当でどこまでが作り話かがよく分からんな」
「まぁお前にとっちゃそうかもなあ。まま、深く考えずに楽しめばいいんだよ」
「うむ……しかし想像力が豊かな事だ、こちらの世界の人間は凄いな」
「そうかもなあ」
「おお、こいつが出て来たぞ、こいつが」
と、ガン〇ムを指差して言う。
「んん!? 何だあの光を撃つ武器は!? 魔法か!? おお、光の剣もあるのか! なかなか格好いいじゃないか!」
結構楽しんでいそうである。
まぁいいものだからな、ガン〇ムは!
こいつにも魅力を分かって貰えると嬉しい!
結局、アルマは和樹達からの連絡で出かける頃には、先が見たいからと行くのを嫌がるくらいにはハマっていた。
いい事だが、最低限やるべきことはやって頂かないと困るぞ。
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