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第48話 勇者と理性

「レ、レナ――!? お、お前何してるんだよ!?」


 バスタオルを巻いて隠してはいるが――肩や胸元の真っ白い肌や、理想的すぎるボディラインは丸見えである。胸でけー。そして腰が細い。顔が小さい。

 うーむ……これだけでもなかなかの見応えだな。

 流石レナはいいモノを持っている。あの小さかった姿とは別人だなあ。


「何って――目が覚めたんれ、汗を流したいなあと思ったんれすよぉ、でもお兄ちゃんが入ってて、じゃあ一緒に入っちゃお~って♪ 駄目れすかあ?」


 ご機嫌だがちょっとろれつが怪しい。

 顔もピンクに上気して、いつもより更に雰囲気がとろんとしていた。

 さてはまだ酔っぱらってるな、レナのやつ――


「俺に断る理由は無いけどな――まだ酔ってるだろレナ。大丈夫か?」

「大丈夫れすよお? じゃあ背中を流しますよお。はい、上がってくださいねえ」


 と、俺は湯船から上げられ、レナが背中を洗ってくれる――


「こうしてお兄ちゃんとお風呂に入るのってぇ、凄く久しぶりれすねえ~。あっちの世界の温泉に一緒に入りましたねぇ~」

「ああ。俺的には割と最近の出来事なんだけどなぁ。まさかこんな事になるとはなあ」


 俺をこちらの世界に戻すための転移の大魔法が副作用を引き起こしていた――と。

 レナがそれに巻き込まれてこっちの世界に。

 それも十年以上昔の時間に飛ばされていたとはな――

 まさかあのブラック企業において唯一の癒し要員だった葵玲奈がレナだったとは……

 実際起こってしまった事は仕方ないのだが、中々とんでもない話だ。


「レナは大変だったよな――よくこっちの世界で一人で頑張ったな」

「うふふ♪ じゃあ褒めて欲しいれすよお。アルマ様みたいに、頭を撫で撫でしてくらさぁい?」


 と言うと俺の前に回って来て、ちょんと座って頭を向けてくる。

 撫でろ、というわけか。

 酔っているのもあるだろうが、子供の時より甘えてくるなあ。

 まあ可愛いので、何の躊躇いも無く撫でる事にする。

 さらさらして、手触りのいい髪だな――


「よしよし、よく頑張ったな。偉かったぞ」

「はぁい。ありがとうございます♪ じゃあ、お礼しますねえ?」


 と、すっと俺に顔を寄せて来て、頬にキスしてくる。

 いやまあ、ありがたいけどさ!


「おおっ!? レナ、お前やっぱり酔ってるだろ――」

「えぇ? こっちがよかったれすかあ?」


 ふっくらした唇をちょんちょん、と触って見せる。


「いや、良かったような良くなかったような――」


 あんまりされると、理性が崩壊して押し倒してしまいそうになる。

 レナもそれでいいのかも知れないが、今は絶対酔っぱらってるしな――

 後でレナが後悔するような事になってはいけない。

 俺としては、レナは大事にしてあげなければならない存在だと思っているのだ。


「でも、こっちに飛ばされて大変れしたけど――悪い事ばかりじゃないれすねえ」

「そうか?」

「そうれすよお。お兄ちゃんがわたしの事えっちな目で見てくれますれすからぁ」


 と、バスタオルに隠れた俺の股間をちらり。

 レナに反応して、ちょっと元気になっていた。お恥ずかしい!

 レナは大事にしてあげなければならない存在キリッとか考えつつこれとは、我ながら情けない話である。


「いやうん――すまん……」

「いいんれすよお? お兄ちゃんにそういう風に見られるのは嬉しいれすからあ」


 ゆるふわな笑顔で俺に身を寄せて、ぎゅ~っと抱き着いて来る。

 胸の膨らみやすべすべの肌が押し当てられて、ますますあれだ――

 これはヤバいヤバい――!


「こ、こら――ちょっと離れろって……」


 と、また風呂の扉がガチャリと開いた。

 姿を見せたのは――まだ服を着たままのアルマである。


「うん――先客か? !? ナオ、レナ――お前たち何をしているんだ……?」

「おっ!? アルマか、レナが酔っ払っててな――ちょっと助けてくれ」

「あ、アルマ様ぁ~。アルマ様も一緒にお風呂入りましょうよお、広いですから三人でも入れますれすよぉ? 一緒に旅をしていた時の事を思い出しますれすぅ」

「……まあ構わんが――な」

「やったぁ! じゃあ服を脱ぎ脱ぎしましょ~?」

「きゃっ!? こ、こらナオがいる目の前で脱がすな! 酔っ払い過ぎだぞお前!」


 まぁ三人で入った方が色々な意味で安全だろう。

 幸い風呂は広いので、三人でも余裕で入れるからな――

 俺達は異世界で旅をしていた頃の昔話などをしつつ、でかい風呂を堪能したのだった。

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