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第43話 勇者と録音データ

 アルマが確定ボタンを押し、これで後戻りはできなくなった!

 俺は思わず悲鳴を上げてしまっていた。


「うわあああぁぁぁっ!? アルマお前やりやがったな!」

「勇者たる者がそう狼狽えるものではない。堂々とかいしゃを結界で魔の森に閉じ込めかぶの値段を暴落させた挙句に、かぶを買い漁ってやればいいじゃないか」

「うわ何かそう言われると、とんでもない悪さしてるように聞こえるなー」

「自分で考えておいて何を言っている。お前の力で街が助かったのも事実だからな、多少の見返りを貰うのもいいだろう。今さらぐずぐずするんじゃない」


 と、アルマが俺に発破をかける。


「あ、ああ……そうだよな、もうやっちまったし後はやるだけだな!」

「そうですねえ。やっちゃいましょう! ブラック企業を乗っ取って労働環境を正常化するのも、社会正義だと思えばいいんです!」

「ま、あの環境は是正されるべきだわな~。訴えられたら絶対負けるしなあ」

「まあそれは間違いはないな」


 訴えられたら負けるのに、これまで誰も訴えていないのは、まあたまたまと言うか、誰もそこまでしてこの会社を相手にしたくなかったというか――

 会社を訴えて争うなんて、すげー時間と労力を消費させられるからな。

 だったら泣き寝入りになってしまうが、さっさとやめて別の会社に移った方が早い。

 そうせずに会社を訴えて戦うというのは、同じ境遇にいる他の人のためであったり、会社に良くなって欲しいという思いであったり、何かしらの義侠心のようなものが絶対必要になると思う。俺にはそこまでの情熱は無い。


 事実俺だって、これまで会社を訴えたりはしてこなかった。

 ガチで会社を辞めるとしても、別に訴訟とかは起こさなかっただろう。

 面倒くさいからな。こんな会社に俺の時間と労力を取られたくない。

 外から見たら泣き寝入りに見えるが、戦う方がしんどいわけだ。

 たとえ確実に勝てるとしても――だ。


 みんなが俺と大差ない考え方だったため、ずるずるとあの環境が許されてきたというのが実際の所だろう。こういう状況は何もうちの会社だけでなく、他にも似たような状況の会社も多いだろう。

 そういう所がいざ何かしらのきっかけで注目されると、時代錯誤の昭和的な風習に世間がドン引きして、SNSで爆発炎上するってワケだ。

 まあウチの場合はそうなる前にこの勇者様が経営権を奪い取って、ホワイト化してやろうではないかと思うわけだ。

 まあ実務は新社長に任せますがね! 俺は実務はしねえ! 働かずに役員報酬だけ貰って過ごすんだ!


「お兄ちゃん、これで最低限必要な株は確保できましたね。じゃあ次は持ち合い株の切り崩しって事でいいですよね?」

「ああ、やるぞ!」

「じゃあ、例の会社の社長さんのアポを取りますね。いいですか?」

「おう頼む」


 レナにアポを取って貰うのは、うちの会社と株式を30%持ち合っている会社の経営者の人だ。そこで持っている30%分の発言権を俺達に白紙委任してもらえるように交渉する。それでOKを貰えれば――こちらの持ち株が過半数を超えて、現社長をクビにして人事体制を刷新できる。

 白紙委任を貰うための説得材料は、既に揃えてある。


  ◆◇◆


 というわけで二日後、俺達はうちの会社の株を30%持っているキノシタ広告という会社の社長さんに会いに行った。

 あちらは中小の広告代理店で、こちらはWEB制作会社である。

 こちらが向こうから仕事を貰う立場って感じだな。

 ちなみにうちの会社の名前は株式会社ホワイトアッシュです!

 何がホワイトやねん! ブラックやないか!

 ってみんなが突っ込まざるを得ない社名だ。

 思えばうちの社長は突っ込み待ちで社名を決めたのかもな。ふざけやがって。

 ともあれきっちりスーツに身を固めた俺達はキノシタ広告の社長に会うと、挨拶もそこそこにあるデータを披露した。


『えーと……急な用事があって――今日は有給にしておいて下さいって言うのは……?』

『バカを言うな今日は表向き出勤日ではない! 出勤日ではないのに、有給休暇が適応できるわけがないだろう! そんなことも分からんのかね?』

『じゃあ休んでも欠勤扱いにもならないと――?』

『今日はならんが、次の出勤日が代わりに欠勤になると思え! ワシは絶対認めんぞ、それが社会の掟だ!』


 俺と犬養課長の会話の録音データである。

 いや、そのくらい普通に取ってますよ?

 使う使わないは別として、集めるのは普通だろう。

 いざという時のためにな――それを使って戦うか戦わないかは別の話だが。

 他にも犬養課長のトンデモ言動を記録したデータは沢山ある。

 俺だけじゃなく和樹も、レナも持っていたりする。

 それらを集めてまとめて、ここに持って来ているのだ。

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