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第41話 勇者と人事構想

「ふむ……右肩下がり――になっているな?」


 俺のスマホの画面を見て、アルマが感想を述べる。

 その通りで、うちの会社の株価はあれ以来爆下がりを続けていた。


「ああそうだ。この三日で株価は半額以下になってる」

「……結界で隔離されているからか?」

「そうだ。本社ビルが誰も何も分からないような場所に取り残されてるんだ。仕事に支障出まくりだろ?」


 実際あれ以来休出強要も無いしな。

 世間はゴールデンウィークな所に無償の休出強要とか正気の沙汰ではないが、あれがなければ俺達は会社に出ていただろう。

 それが無くなって普通にゴールデンウィークに休めるなんて、社員はみんな喜んでいるに違いない。

 犬養課長とか社長とか、頭のネジがぶっ飛んだ奴等は別としてな……


「いつ結界が消えて正常化するのか、誰も分からねえんだ。下手すりゃずっとそのままってのも考えられる。そうしたら会社がつぶれてもおかしくないだろ?」

「ああそうだな。かいしゃが潰れたらかぶが単なる紙切れになるわけだな? 存在しないかいしゃの権利など意味がないものな」

「そうそう、流石ハイエルフ様は理解が早いな」


 頭を撫で撫でしてやると、ぺしりと振り払われる。


「止めろ無礼者が。ともあれ、かいしゃが潰れそうなら、かぶが紙切れになる前に売って金にしておきたい。売りたい者が多くなると、かぶが余って売れなくなり、売りたい者は値段を下げて売らざるを得ない――そうしてこうなったと言うわけか」

「うんうん、そうですよお。それが資本主義ってやつですねえ。みんな損はしたくないですから、こういう時の動きは速いですよ。もう何日かでもっと下がると思います」

「で、もっと下がってくれれば――俺が持って帰ってきた金で、ウチの会社の株を大量に買い叩いてやれるわけだ。それこそ、会社の権利を左右するくらいにな」

「おおなるほど。かぶを買い占めてやったら、かいしゃの権利が自分のものになるという事だな。それが乗っ取るという事なのだな?」

「ま、全部は買えねえし浮動株比率の問題とか色々あるんだが、基本そういう事だ。この騒ぎで爆下がりしたウチ会社の株を大人買いするぞ」

「ちょっとワクワクしますよねえ~会社乗っ取りなんて、ドラマみたいですから」

「馬鹿上司共が慌てふためくのを見るのが楽しみだよな~。こんな面白い話は中々ねえぞ」


 レナも和樹もノリノリである。


「しかし、かぶに大量に金を使って、失敗したらどうするんだ?」

「また売ればいいんですよお。結界を解いて中を浄化してしまえば元通りです。そうすると株価は元に戻ろうとしますから、売れば安く買った分儲かりますよお」

「レナの言う通りだ。どっちにしろ俺達に断然有利な戦いなんだよ、これは。クックックッ――」

「おぉ~なんて嫌らしい笑い方をするんだ。ではお前はこれを見越して、私に一部を結界で覆わせたわけだな。中々腹黒いじゃないか」

「そういう事。これはお前がいなきゃ出来なかったからな~マジで感謝してるぜ」

「構わんさ。代わりにソフトクリームを沢山買ってくれればな。しかしお前の今のその腹黒さを、向こうの世界の王共にも味あわせてやれば良かったものを――かいしゃを乗っ取るより国を乗っ取った方が面白かっただろう」

「いや、乗っ取ったら他の国と戦争になったりするし、そもそも国王なんてやりたくねえし。会社だって乗っ取っり成功しても社長はやらんぞ俺は」


 と俺がアルマに応じると、和樹が口をはさんで来る、


「あれ? 社長にならねーのか直? んじゃ儲けるだけ儲けて計画倒産か?」

「いや、俺は非常勤の会長になりたいんだ! 役員報酬を頂きつつ会社には来ねえ!」

「うっは、腐ってんなー! 直!」

「社長だと常勤だからな。常勤は嫌だ常勤は――時間を好きに使えないからな。俺は時間に縛られずに都会的スローライフに入るんだ!」


 大株主のオーナー会長って事で一つ。

 世間的な肩書は会社役員だな! 実質ニートに近いが、世間体は申し分ないぜ!

 金のあるニート最強説!


「というわけで社長は――」


 と、俺はレナをちらっと見る。

 意図を察したか、ぱたぱたと手を振られた。


「あ、わたしもお兄ちゃんと一緒にいられる時間が長い方がいいので――できれば非常勤がいいなあ、なんて――勿論週に何回かはお手伝いに行きますよお」


 そんな可愛い事を言われたら、認めざるを得ないだろう。

 それにレナの頭脳には何かとお世話になりたいからな。会社だけに拘束させるのはもったいない。

 俺の秘書的な感じでいてくれると助かる。これからも何があるか分からないからな。

 じゃあレナは非常勤の取締役かつ会長秘書って感じかな。


「というわけで社長頼むな! 和樹!」


 俺は和樹の肩をバシッと叩く。持つべきものは親友だな!


「俺かよ!? まぁいいけどな――橘の会社は兄貴共が継ぐから、俺は奴等の下っ端の中間管理職しか目は無かったしな。雇われだろうが、一国一城を任せられるのは悪くねえ。お前の頼みなら、尚更な」


 和樹は結構乗り気になってくれたようだ。

 さあて、事後の人事構想も落ち着いた所で、あとはお宝の鑑定結果を待つのみだな――

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