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第4話 ハイエルフと紙幣とお箸

 俺は挟まれたアルマを救い出し、変な目で見てくる店員の視線を感じながら券売機の前へと立った。ここは食券制なのだ。俺はポケットから財布を取り出して――

 いや、転移魔法での帰還前にアイテムボックスから出してポケットに入れておいたのだが……久しぶり過ぎて何故か嬉しさが込み上げて来た。

 中から千円札二枚を取り出して――


「何だそれは?」

「ああ、こっちの世界の金だぞ」

「そんな紙切れがか? 金貨でも銀貨や宝石でもなくか?」


 確かに向こうでは紙幣は無いからな。

 アルマが珍しがるのも分からなくはない。


「ああ。その方が軽くて持ち運びやすいだろ?」

「だが紙切れに何の価値があるんだ?」

「こいつの価値は国が保証してるんだ」

「? 国とは王の事だな? 保証と言っても、紙の金に価値があるならいくらでも作って大儲けできるじゃないか?」

「そういう事すればハイパーインフレが起きるだけ……つっても分からねえだろうし、まあとりあえず国はズルをしないで、必要な分だけこの紙の金を作ってるんだぜ」

「凄まじく清廉潔白な王だなそいつは――私達の世界の王どもとは大違いじゃないか」

「王はいないようないるような感じなんだが……そうでもないとは思うがなあ。いや、あの世界と比べりゃそう見えるのかもな」

「……?」

「まあいいやまずはメシだメシ。お前も俺と同じでいいか?」

「ああ、構わない。楽しみにさせて貰おうか」


 アルマが笑顔になる。

 では――俺がよく食ってたキムチ牛丼大盛りにトッピング生卵!

 あとソフトクリームも置いているようなので、買ってやろう。

 子供にソフトクリームは鉄板だ。喜んでもらえるといい。


「お待ちどうさまですー」


 俺とアルマが並んで座るカウンターに、店員がキムチ牛丼と生卵を2セット置いて行った。


「おおぉ……懐かしいぜ。帰って来たんだなあ」


 学生時代からヘビーユーザー過ぎて、もはやここが家庭の味といっても過言ではなかったのだ。

 十年ぶりに家族と再会したかのような、しみじみとした感動が俺を包んでいた。


「何を涙ぐんでいる、ナオ。キモいぞ」

「うるせえなっ! いいだろ別に、よく来てたから懐かしいんだよ」

「もっと他に懐かしむべきものがあるかと思うが?」

「ないない。親兄弟もいねえからな。天涯孤独なんだわ、俺」


 俺は生卵を割って溶きつつそう応じる。


「そうだったか――初めて聞いたぞ、私と同じなんだな」


 アルマも俺を同じようにしている。

 慣れていないので手つきは少々たどたどしい。


「まあな――で、溶いた卵をこっちにどばっと……」


 箸で牛丼の一部にちょっと穴をあけて、そこに卵を流し込む。


「ふむ。こうだな?」

「で、軽くかき混ぜて――食う!」


 俺は最初の一口を口に入れる。


「! うわうめえぇぇ……! 十年ぶりに食うとたまんねえな――これだよ、これ!」


 この一杯のためだけにでも帰ってくる価値があったな!


「……食べづらい」


 喜ぶ俺の横で、アルマは箸に苦戦していた。

 口に運ぶ前に牛丼が落ちてしまい、食べられないのだ。

 まあ確かに異世界には箸の文化は無かったな……


「何だよ? 箸が使えないとはお子ちゃまだな~」

「う、うるさいっ! 慣れてないんだ仕方がないだろう……!」


 俺がニヤニヤしながら煽ると、アルマは唇を尖らせた。

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