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第34話 勇者と必殺技

 俺は彼女を下ろして立たせると、おもむろに片手を天に向ける。

 そして、魔法を発動。

 使うのはこの間駅前で刃物男相手にも使用したバニッシュリングだ。

 今思えば、あの男は先行してこちらに漏れ出した障気の影響を受けていたのだろう。

 ともあれこの魔法、対アンデッド用攻撃魔法としては初歩的なものだ。

 俺は魔法の種類的には、比較的習得が容易なものしか扱えない。

 掲げた掌の上に、光のリングがポワンと出現する。

 そこに――


上級事象加重(ハイ・インクリース)!」


 これこそが俺があの世界の勇者たる証。

 勇者のみに許された神性魔法である。

 その効果は――バニッシュリングの光の環に現れる。


「光が大きくなって――!?」


 大守さんの言う通りだ。

 リングが物凄い勢いで分厚く大きく拡大していくのだ。

 これは、対象の事象の世界に対する比重を操作し、より重みを増すものだ。

 簡単に言ってしまえば、威力を増幅する。

 もっとアレな言い方をすれば、何にでも効く界○拳だ。

 神性魔法とは言うがマナを使うわけではなく、勇者がその身に纏う特殊なオーラを使うため、俺が存在さえしていれば使えるものだ。


 グングン成長したリングは、とうとう眼下の魔の森全体を囲むほどの大きさになった。

 直径数キロの光のリングだ。

 さすがにここまで大きくするには、より強い上級事象加重(ハイ・インクリース)が必要だった。


「ようし――」


 拡大を終えたリングは、地表近くまでスッと高度を下げる。

 準備はOKだ。


「ど、どうするんですか?」

「――こうだよ!」


 俺は開いていた手をグッと握る。

 今度はリングが、中心に向かって加速度的に収縮をはじめる。

 その軌道上にいたアンデッド共は、増幅されたリングの力の前に、触れただけであっさりと消滅していく。


 ピロンピロンピロンピロン。


 あなたは10の経験値を得ました。

 あなたは10の経験値を得ました。

 あなたは1500の経験値を得ました。

 あなたは10の経験値を得ました。


 1500入るのはあれか、障気の影響で暴れ出した人間か。

 本当にやけに経験値が高い。とりあえずこれで正気に戻っているはずだ。

 リングの加速と共にメッセージも加速して行く。


 ピロピロピロピロピロピロピロ。


 うむ、元気いいね。


 ピロロロロロロロロロロロロロロロロロ!


 経験値ももりもり入って来るが割愛。


 ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ!


 荒ぶってんなあ。


 ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


 いい加減うるさいんだが……!


 ボカアァァンッ!


 え? 爆発した!?


 ピンポーン。メッセージが多すぎます。伝えるのが面倒です。


 面倒って何だよ面倒って!? システムメッセージ仕事しろ!

 とにかく、システムメッセージをオーバーフローさせる程の広範囲殲滅により、一旦眼下のアンデッド共は全滅した。放って置けばまた沸いて来るが。

 ノーマルの事象加重(インクリース)やその上位版の上級事象加重(ハイ・インクリース)により、低級魔法を超ド級の必殺魔法に変えて戦うのが勇者スタイルです!

 初歩の初歩のファイアボールで小山くらい吹っ飛ばせますが何か!?


「……す、すごおおおおぉぉぉい! ほ、本当に一掃ですね……! もう何が何だか分かりませんが――でも分かりました!」


 妙にキラキラした目で、大守さんが俺を見る。


「? 何が?」

「あなたみたいなスーパーヒーローが本当にいるって事がです! 私昔からアニメとか特撮のヒーローに憧れてて、だから、正義の味方になりたくて警察官になったんです!」


 がしいっ! と勢いよく両手を握られた。


「いやまあそれはいいんだが……」


 今言う事じゃないだろうに。

 あれか、好きな事になると周りが見えないタイプか。


「教えて下さい! どうしたらあなたのようなスーパーヒーローになれるんですか!? 私もなりたいんです! 何か秘密の組織があるんですよね!? 私にも紹介して下さい! 是非お願いします! 何でもしますから!」

「いや俺はヒーローじゃなく勇者――って今はそういう場合じゃねー! 取りあえず一掃したが、放って置けばあいつらはまた沸くんだよ! 俺が暫くここで殲滅を続けて時間稼ぎしてやるから、今のうちに魔の森のエリア内から人を避難させろ! 警察の連絡網と人員を動員すれば、避難も早く済むだろ!」

「う……! そ、そうですよね――済みません興奮してしまって……! 今度ゆっくりお話を聞かせて下さい!」


 面倒臭そうなので、御免被りたい所だ。

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