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第3話 ハイエルフと自動ドア

 俺はアルマを連れて牛丼屋に入る事にした。

 アルマも来ると分かっていればもっと高い所でおもてなしも良かったが――

 それはまたの機会に。

 一人で吉松屋に行くつもりだったので、もう口の中が牛丼を求めていた。

 かなりのヘビーユーザーだったので、慣れ親しんだ味が恋しいのだ。

 早速、先程の事故現場から見えている所にある吉松屋に向かった。


「しかし、さっきお前を弾き飛ばしたあの鉄の箱は何だ? 我が物顔で道を走り回って人が窮屈そうだが?」

「あれは自動車だ。中に人が乗って運転してるんだぜ。こっちの世界じゃ遠くに移動する時に使うんだ」

「馬車のようなものか?」

「ああそうだ。こっちの世界じゃ馬車の代わりにあれを使ってんだ」

「しかし馬はいないが?」

「ああ、馬の力じゃなくエンジンで動いてるからな」

「エンジン?」

「まあ、カラクリ仕掛けって言えば分かり易いか?」

「ほおお~? 馬よりも速そうだし、良く出来たカラクリだな――では、あれに乗っているのが貴族で歩いているのが平民か?」

「いや、そういう身分の差はねえよ。少なくとも表向きはな」


 とはいえ実際には資産やら家柄による社会的にな階級差というものはあるが。

 現代のカースト制度と言うか、いわゆる格差社会ってヤツだな。


「ふむ……? 随分大らかなんだな。では、誰でもあれに乗れるのか?」

「免許を持ってればな。使っていいですよって許可証な」

「ナオも持っているのか?」

「ああ、興味あるなら後で乗せてやろうか?」

「おお! 楽しみだな」


 と、笑顔を見せるアルマだった。

 その彼女に、周囲の視線が集中しているのを俺は感じた。

 まあ髪の色は緑だし、服もファンタジックだ――それはもう目立つ。

 知らない人間が見れば、プ〇キュアのコスプレをする少女にでも見えているだろう。

 ちょうどあれと同じくらいの年齢に見えるしな、アルマは。

 ――メシが済んだら、まずアルマの服を買いに行くか。


「随分と色々な物があるな……情報量が多すぎて、何から見ていいのか分からん」

「あんまキョロキョロしてんなよ。迷子になるぞ」

「失礼な。私は年上だぞ、子供扱いするんじゃない」

「見た目はどう見ても年下なんだがな」


 ぽんぽん、と頭を撫でてやる。


「止めろと言っているだろうに!」


 不貞腐れる姿は、子供そのものなのだが。

 と、言葉を交わしながら歩いていると、工事中のビルの手前に差し掛かった。

 シートが張られ、外周を囲むように足場が設けられている。

 吉松屋はすぐそこだ。ああ、早く牛丼が食べたい。


「ああぁぁっ!? 危ない――!」


 同時に、ガランガランと金属が落ちてくる音。

 ビルを囲む足場が崩れたのだ。

 それが、俺達の頭上に降り注いで来た――!


「うん……? ほいっと」


 手を伸ばして落ちてくる鉄柱をキャッチ。まあ軽い軽い。

 一般人なら大怪我間違いなしの事故だが、勇者は特殊な訓練を受けているのだ。


「大丈夫か? アルマ」

「ああ。問題ない」


 アルマも平然としていた。

 俺が受け止めると思っていただろうし、別に俺がいなくてもアルマなら簡単に受けるか避けるかできるのだ。


「……」


 ふと思いついて、俺は落ちてきた鉄柱を両手でぐいと曲げようとしてみた。

 ぐにゃり。ああ簡単に曲がるな――これなら車くらい素手で破壊できそうだ。

 再びぐにゃり。バレないように元に戻しておかないとな。

 勇者の力がこちらでもそのままなのは、間違いなさそうだ。

 あとは銃弾を素手で受けたりできるか試してみたい所だ。


「す、済まん! だ、大丈夫かあんたらーーー!?」


 上から作業員が血相を変えて呼びかけて来た。


「ああ平気ですよ。それじゃ行くぞアルマ」


 俺は軽く応じて、アルマを促してすぐ立ち去る。

 さっきみたいに絡まれたら面倒だからな。

 そして少し歩いてすぐに、吉松屋の目の前に到着。


「ここだ、入るぞ」


 ウィーンと自動ドアが開き――


「うわっ!? 何もしていないのに開いたぞ!?」


 アルマが目を真ん丸にしていた。


「ああ、自動ドアな。これもカラクリ仕掛けってやつだ」

「しかしカラクリと言うには歯車も何も見えんのだが……? どういう仕組みだこれは」


 アルマは自動ドアをぺたぺたと物珍しそうに触り始めた。


「おいおい……止めてくれ、恥ずかしいから」

「むう――口うるさい奴だ。興味があるんだ、仕方ないだろう」

「目立つから困るんだよ。もっと人のいない所でやれって。それにあんまりそこに立ってると、何かの拍子に挟まれても知らねえぞ」

「わあああっ!? 勝手に閉まった! 痛い痛い私を挟むな!」

「ああもう! だから言っただろうがっ!」


 言わんこっちゃない! 思わず大声でツッコんでしまった。

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