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第23話 ハイエルフとMP

「あーもう! 手動かよ!」


 俺は手動で銀騎士の鎧を装着にかかる。

 しかし急いでも、時間はそれなりにかかりそうだ――やはりフルアーマーは着るのが手間だ。


 そんな時――駐車場の野次馬達から悲鳴が上がるのが聞こえた。


「うわあああぁぁぁっ! 逃げろ!」

「こっちに来るぞおおぉぉぉ!」


 ライオンが動き出したのか!?

 隠れている俺の位置からは見えないが――


(ナオ。野次馬共が危険だぞ。私があれを止めるが、構わないか?)


 アルマから声が飛んでくる。


(ああもう仕方ねえな――! やったらすぐにその場から離れてくれよ! なるべく人目に付くな!)

(了解だ――任せておけ)


 俺は急いで銀騎士の鎧をアイテムボックスに戻す。

 そして、様子を見に戻る。

 蜘蛛の子を散らすように逃げる野次馬達。

 その後方に一人残って、ライオンに対峙するアルマの姿――


 ガアアアアァァッ!


 ライオンはアルマに飛びかかり――


 びしいぃぃぃっ!


 アルマの手刀がライオンの首筋をとらえた。そして――

 ぱたり。

 ライオンはそのまま昏倒して、その場に崩れ落ちる。

 アルマは手刀一発でライオンの無力化に成功したのだ。


 決して肉弾戦が得意というわけではなく、本来魔法が得意な後衛タイプのアルマだが――

 そこは、一緒に魔王を倒した勇者パーティーの一員である。

 ライオンを素手で気絶させるくらいは、どうとでもなる。


 俺にとっては、その事に驚きはないのだが――

 だがこちらの常識では、中学生ぐらいの女の子がライオンを手刀一発で仕留めるのは異常な事だ。

 唖然とアルマを見る野次馬達。

 幸い蜘蛛の子を散らすように逃げていた最中なので、その瞬間を動画を撮っていた奴はいないかも知れない。


 だが助かったと分かるや、アルマにカメラを向ける仕草をするものがちらほら。

 そうはさせん――! 俺は奴等の注意を逸らすとっておきの方法を用意していた。

 そのために、奴等の近くの建物の上まで走って移動をしていた。

 MPを使って現場を混乱させ、目撃されないように逃げるべし!


「でぇいっ!」


 というわけで俺は、百万円の束を全部解き、空中にぶん投げた。

 諭吉兄さんの紙吹雪が、その場に舞い降りる。

 MPはマジックパワーではない、マネーパワーだ!

 ひらひらと舞う諭吉に気を取られ、狙い通りその場は混乱状態に陥った。

 やっぱ目の前に札が振ってきたら拾うよな――


(よしアルマ、今のうちに逃げるぞ!)

(ああ分かった)


 俺達は混乱に乗じてショッピングモールを後にした。

 しかし魔法で目隠しが出来なかったとはいえ、MPを使うとは俺も偉くなったものだ。


 諭吉兄さんをバラ撒く瞬間、学校の社会の資料集とかにある成金の風刺画が頭の中に浮かんだぞ。

 暗い所で靴を探すためにお札を燃やして、探すというものだ。

 金などうなる程あるから、燃やして明かりにしてもいいという事なのだろう。

 今なら俺もその気持ちが――分かるとでも思いましたか!?

 俺には分からん! 普通に辛かったぞ!


「あああああ~……勿体なかったなあ。三百万バラ撒くんじゃなくて、二百万でもよかったかなぁ――ああー……」


 俺は車を運転しながら半泣きになっていた。


「女々しい奴だな。やってしまった事は仕方ないだろう」

「そんなに割り切れねえよ! 俺の諭吉三百人がががが……お前には分からんだろうが、あれだけ稼ぐのに俺は一年かけて働いてたんだぞ」

「やれやれ――ならば、あんな猫など放っておけばよかっただろう」

「うるせえ。分かってるよ、そんな事は――」


 アルマは渋滞待ちでハンドルにもたれている俺の頭を、よしよしと撫でて来た。


「よしよし、私は分かっているからな? お前はよく頑張った、偉かったぞ。だから機嫌を直せ」

「あ、ああ――」


 珍しいな、こいつがこんな事をするのは。

 ちょっと癒された感を覚えてしまった。


「そして機嫌が直ったなのら――すまほを買いに行こう! 私の分のな!」


 アルマの目がキラーンと輝いていた。

 こいつさては、スマホが欲しくてご機嫌取りをしただけだな――!


 結局帰りにショップに寄って、アルマのためのスマホを契約する事になった。

 やれやれ、俺もこいつに甘いな――

以上で第一章終了です。ここまでありがとうございました!

第二章からは新展開。書いてみたかった展開があるので、それをやります。


『これからも頑張れ』

『早く続きを書け』

『もっと勇者活躍しろ!』


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