第17話 さま〇うよろいと金属バット
俺はアイテムボックスから例のあれを呼び出し、着替えてから車を降りる。
意味不明な事を口走っていきり立っていた男は、俺を見ると驚いたようだ。
「な、なんだよてめええぇぇっ!?」
無理もないだろう。
煽り運転して止めてやった車に近づいたら、中からさま〇うよろいが降りて来たのだ。
あいつの金属バットも大概だと思うが、やはり白昼堂々フルアーマーのインパクトには勝てない。
「さあな、自分で考えろ。まあ考える頭があればな」
「あああああっ!? なめてんじゃねえぞこらああぁぁぁっ!」
「なめてねえよ、暇な奴だって呆れてんだよ。人様に迷惑かける事しかできねえのか、この能無しが。どうせちゃんと働きもしてないんだろ、お前。まともな社会人はこんな事しねえからな」
「うるせぇぇぇっ!」
図星を突かれたのか、男は金属バットを振り上げて俺を威嚇してきた。
弱い犬ほどよく吠えるというやつだ。
「こんな事してもお前の人生は変わらねえんだよ。馬鹿やってないでちゃんと働け」
「てめえに何が分かるっ!? これが見えねえのか、ぶん殴るぞ!」
「ふん。分かるんだよ――働かずに生きるのが許されるのは、それだけのカネと力を既に持ってる奴だけだって事がな――お前にはどっちもねえだろ、なら働けカスが」
「あああああああぁぁーーーっ!」
ぶち切れた男が、金属バットを振りかざして襲ってくる。
ガキン! と金属音がして金属バットは鎧の表面を叩いた。
が、それだけ。こちらはノーダメージだ。
「おら! おら! おら! おらああぁぁぁっ!」
ガキン! ガキン! ガキン! ガキン!
男は力一杯俺を叩くが、銀騎士の鎧がそれを弾く。
ひとしきり暴れた男は息を切らせてハァハァいっていた。
「はいはい、あーうるせえ。もう絡むのもめんどくせえから、貸せ!」
俺はヤツから金属バットをむしり取った。
そしてそれを持って力を込め、ぐにゃっと半分に折り曲げた。
そしてそれを男の足元に放り投げる。
「ほらどうだ? ぶっ殺されたいか?」
「な、なんだとおぉぉぉぉ……」
情けない声を出し、男は俺から後ずさりする。完全に顔面蒼白になっていた。
「消えろよ。今なら見逃してやる」
「ひ、ひえぇぇぇぇ~~~~!」
悲鳴を上げて逃げ出す。
だがしかし、余程混乱したのか追い越し車線側に飛び出して行く!
「あ――おいお前! 飛び出すな……!」
男が飛び出した追い越し車線は、ちょうど赤い色をした車が通りかかる所だった。
これは――あいつは轢かれる!
「ちっ!」
俺は男と走ってくる車の間に素早く割り込む。
流石に知らぬふりをするのは寝覚めが悪かった。
それにこいつが轢かれて死んだりしたら、俺も取り調べになってしまうだろう。
俺は赤い乗用車の勢いを両手で受け止めにかかった。
――ある意味、俺の力がこっちの世界でどの程度のものなのか測るいい機会だ。
「ほっ!」
ドン! と結構な衝撃が俺の腕の中に残る。
俺は多少後ずさりしつつも、赤の乗用車の突進を組み止めていた。
正直なところ、思ったよりは軽かった。
これならダンプカーとか電車くらいなら止められそうな気がする。
もし全能力をフルに使えば、ジャンボジェットくらいは受け止められるか?
「あわわわ……! あわわわわわ――!」
男は腰が抜けたのか、それを繰り返すばかりだった。
突っ込んで来た赤の乗用車から、慌てた様子で人が降りて来た。
その人物に、俺は見覚えがあった。
生真面目そうで、それでいてとんでもない美人でスタイルもいい――
あの婦警の大守さんだった。これは何という偶然だろうか――!?
彼女は今日は私服だった。恐らく非番なのだろう。
「ま、またさま〇うよろい――!? あ、あの昨日の方ですよね!? 大丈夫ですか!? 昨日新宿で暴漢を取り押さえるのに協力頂いた、警察の者です!」
これは、まずいな――!
ピロン。とシステム音が
あなたは100の経験値を取得しました。
んん? 車を止めて経験値が入ったのか!?
しかしここは100なんだな、少なく感じる。
だがまあそれはいい。今は――
(アルマ、霧だ! 今すぐ頼む! 逃げるぞ!)
俺は念話でアルマに呼び掛けた。
(ああ分かった!)
俺達は霧が深くなった現場から、一目散に逃げだしていた。
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