表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/65

第16話 ハイエルフと社会問題

「……それはあれだぞ、こっちの世界の三歳児とかがやって喜ぶやつだぞ。何百年も生きてるハイエルフ様がそれでいいのか?」

「か……構わん! 物珍しくて童心に帰っているという事にしておこう」

「ほんとかよ、お前の場合それが素だろ」

「うるさいな、そうではない!」


 ブーーーーッ! ブブブーーーッ!


 後ろから、全力のクラクションの音が鳴り響いた。


「ん!?」

「な、何だ……あの後ろのやつが鳴らしたのか!?」

「ああ、そうみたいだな」


 アルマの言う通り、こちらの車のすぐ後ろに黒の乗用車がいた。

 車間距離をぶつかりそうな程ギリギリまで詰めて、ぴったりくっついて来ている。

 今は道が空いているし、俺達は走行車線を走っている。

 こちらが遅いと言うなら、追い越し車線に行って抜いていけばいいのだ。

 こんな事をする必要は全く無い――わざとやっているのだ。

 これは社会問題化している煽り運転ってヤツか。


「何だこいつは――わざとやっているのか?」

「だろうな」

「何のためにこんな事をする?」

「単に嫌がらせだな。世の中、こんな事をやって憂さ晴らしする奴もいるんだよ。普段よっぽど嫌な事がいっぱいあるんだろうぜ」

「こんなに便利で飯も上手い世界でか? それは我儘ではないのか?」

「見た目ほどいい世界でもねえって事だろ。人間がつくる社会である以上、その中で踏みにじられる奴が出てくるのは必然ってわけだ」

「ならば、こいつのこれは許されるべきだと?」

「いんや、俺は許さんぞ。あんまり調子に乗りやがったらぶっ飛ばす」

「……ならばいい」


 俺は暫く、我慢してそのまま走行を続けた。

 向こうはそのまま後ろからクラクションを鳴らしまくっていた。

 暫くすると飽きたのか、今度は真横につけて幅寄せだ。

 それを見ていて、アルマは段々イライラしてきたらしい。


「……おいナオ。こちらは何もやり返さないのか? 何なら私がやってやるが?」

「何をするつもりだ?」

「魔法で攻撃するぞ。あれくらいぶっ飛ばしてやる」

「止めろ、こっちが警察に捕まる。そのうち飽きてどっかに行くだろ、放っとけ」

「むう……悪いのは向こうなのに――ケイサツとは正義ではないのか?」


 アルマは不満そうに頬を膨らませている。


「そりゃお前、向こうの世界の国の騎士団が正義ばっかりだったか?」

「ふむ……そうでもなかったな」

「だろ、そういう事だ。こっちも大差ねえよ」

「む……前に回ったぞ?」


 アルマの言う通り、向こうは俺達の前に出て、そして減速して道を塞ごうとした。

 こっちを止めるつもりか――。

 仕方がないので、こちらもそれに合わせて車を減速した。

 向こうは完全に停車をしてしまう。都合、俺達もそうなってしまう。


 すると、向こうの車のドアが開き中から人が下りて来た。

 年齢は30歳くらいの目の細い男だった。

 手には、金属バットのようなものを持っていた。

 何か意味の分からない事を喚きながら、こちらへ向かってくる。


「本当にこういう事が自分の身に起こるもんなんだなぁ――」


 俺はそう呟く。これはもう、ニュースで見た事があるような煽り運転からの傷害事件のパターンではないだろうか。

 春になるとおかしな奴が多くなるな、本当に。

 普通の人ならば、こんな理不尽に見舞われたらどうしようもないだろう。

 まあこちらは普通の人間ではないのだが――これでも異世界帰りの勇者である。


「やれやれ……車に傷つけられてもかなわねえし、ちょっと大人しくさせるか」


 ただし、そこらの監視カメラなどに映されて身バレするのも嫌だ。

 また変装するか――あれに。

面白い(面白そう)と感じて頂けたら、↓↓の『評価欄』から評価をしていただけると、とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ