第14話 ハイエルフと不届き者
翌朝――
ピピピピピピピ――!
「うん……?」
この音は、俺のスマホのアラーム音か――?
目覚まし用に使っているものだ。
「うう……もう朝かよ……?」
半分眠った状態で手を伸ばそうとする。
むにゅ。と何か柔らかい手触りがした。
「んん……!?」
ぼやけていた視界が少しクリアになる。
俺の手は隣に眠っていたアルマの胸を鷲掴みにしていた。
「うおっ!?」
外から見たら控え目で、あるようなないようなという程度の膨らみなのに――
いざ触ると意外と存在感があった。俺はそれに動揺して声を上げてしまった。
その声に反応してか、アルマの翠色の瞳が開いた。
「う……ん――きゃっ……!? な、ナオお前……! ふ、ふん! 私の事を子供だと馬鹿にしておきながら、寝ている隙に襲おうとはこの不届き者め……! どうしてもと言うならば、まずは昨日の無礼を私に詫びるんだな――床に頭をこすりつけてだぞ!」
アルマは身を起こすと、勝ち誇ったような顔をする。
「ちがーう! 俺はスマホのアラームを止めようとしただけだ! お前が邪魔な所にいるからだろ、なんでそこで寝てる!?」
ベッドはアルマに譲って、俺は床に毛布で寝ていたのだが――?
「さ、さあな……いつの間にやら落ちてしまったらしいな」
「嘘つけ、ベッドから落ちたら俺の上に落ちるから、俺が気づくだろ。気づかなかったって事は――お前俺が寝てからわざと下に降りたな?」
「ば、馬鹿を言うな。なぜそんな事をせねばならん。お前が鈍くて気が付かなかっただけだろう。私はそのベッドで寝たぞ」
「怪しいな……素直に『知らない世界で寂しいから一緒に寝てくだちゃ~い』とで言えば考えてやったものを――」
「はあ? 寝ている隙に人の胸を揉むような変質者と一緒にか? 何をされるか分からんな。御免被る」
「だからそれはわざとじゃなくて事故だと――!」
と言い合っているうちに、鳴り続けていたスマホのアラームが止まった。
「うん……? 静かになったな?」
「ああ。何分後かにまた鳴るけどな」
スヌーズ機能と言うやつだ。
俺はとりあえずスマホを操作し、アラームを停止する。
「まあいい。私は腹が減ったぞ、ナオ。下らない言い争いは止めて、何か食べさせろ」
「……ああメシにするか」
大して自炊などしない俺ではあるが、トーストや袋ラーメン位の用意は置いてある。
何か適当に食べて、昼と晩は外食だな。今日も出かける予定だ。
「今日は私の服を買いに行くんだろう?」
そう言うアルマは、俺の服を着ていた。
ぶかぶかのTシャツに、同じくサイズの合わないハーフパンツは、本来の五分丈でなく七分丈のように見える。
「ああ、昨日買いそびれたからな」
それからアイテムボックス内の金銀財宝の換金ができる店を回って――
時間があれば新しい部屋の候補を探しに不動産屋にも行きたい所だ。
「途中でソフトクリームが売っていたらまた買ってくれ。それで私の胸を揉んだ件は許してやろう」
「……へいへい。また食い過ぎて腹壊すなよ」
「大丈夫だ。昨日は急いで食べ過ぎたんだ、ゆっくり食べれば問題ない」
「食べる量を減らせ、量を」
「嫌だそれはできん! あんな美味いものを我慢できるものか!」
よっぽどソフトクリームがお気に入りらしい。
まあこちらの世界で気に入ったものがあるのはいい事だが。
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