第11話 さま〇うよろいと職務質問
「うーむ……?」
よく分からん。
色々追い詰められて犯罪に走る人間の心理は、瘴気に侵されているようなものだと?
なかなか、興味深い考察である。
だとしたらこれを使える俺は、カウンセラーとかに向いているかも知れない。
このストレス社会には役に立つ魔法だろう。
ピロン。突然俺の脳裏にシステム通知音が。
そして情報が浮かんでくる――
あなたは1500の経験値を取得しました。
これはシステムメッセージだ。
向こうで身に着けたスキルで聞こえるようになったものだが、ゲームよろしく色々教えてくれるので助かる。
こっちに戻って来ても有効なんだな――
しかし経験値がそれも1500も入るとは――何だこれは。
本当にモンスターなのか?
いやこの男が特別なのではなく、こちらの世界では一般人をボコると1500入るものなのかもしれないが……
確かめるためには、誰かほかの人間をボコらないといけないが、そんなことをすれば傷害事件である。試すわけにも行くまい。
「……まぁいいか。あのー早く手錠を」
俺は大守さんに呼び掛けた。
顔つきも元に戻っているし、もう危険もないだろう。
「ご、ご協力感謝します! あっ!? その声……どこかで聞いたような……?」
「いや気のせいですよ。それじゃ俺はこれで。あ、それと――俺の存在は無かった事にしておいてください」
「ま、待って下さい――!」
と、食い下がって来るが俺は速くこの場を立ち去りたい。
「いえいえ、礼には及びませんので」
「いえ……! そのぅ――ご協力頂いた身で非常に心苦しいのですが、そのようなご恰好をされているものですから、少々職務質問にご協力願いたく……」
「そっちかよ!?」
確かに白昼堂々フルアーマーは怪しいので、当然ではある。
いわば、ちょっと豪華なさま〇うよろいだしな――しかし面倒なのでもう逃げたい。
身体能力任せに全力で逃げてもいいが、それはそれで目立つ――どうするか。
とその時、急にあたりに霧が立ち込めて視界を覆わんばかりの深さになった。
「えっ!? な、何いきなり……!?」
「ん……? アルマか!?」
何にせよチャンスだ! 俺はその場をさっさと離れる事にした。
(おいナオ、霧だったな。今出してやったぞ、感謝しろ!)
アルマの声が脳内に響いた。
どうやら色々な意味で間に合ったらしい。
(ああ、まあありがとうな。お前の方は大丈夫だったのか?)
(なんとかな……いざ自分の番が回って来ると、これはいいものだな。仕切られていて他からは見えんし、座って用を足せるし、全体的に衛生的だ。勝手に水の音が鳴って、色々隠してくれるのも気が効いている。感動すら覚えたぞ)
(ああ――日本のトイレは世界一って言うしなあ)
確かに異世界の方では、そっちのほうの環境はお世辞にも良くはなかったしな。
アルマにとっては衝撃的だったかも知れない。
(それより終わったらすぐ出てくれ。状況が変わったから、ここでの買い物は中止な。早くここから離れねえと――!)
(ああ、分かった)
俺はアルマと合流すると一度家に帰ることにした。
ここらをうろついていると、また大守さんに遭遇しそうである。
アルマの服は、車を出して郊外のショッピングモールにでも買いに行けばいいだろう。
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