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本能寺の足軽  作者: 猫丸
第五章 飯田家
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72話 覚悟

(あらが)うな!!杭えば……殺すぞ……」


 俺は飯田の槍を構え、依然槍を構える男三人を睨み付けた。

 隣のお香も何も言わず相手を睨み付けとる。


「…………」


 男らは黙ったままでおる。

 全員若く見えるが、若干俺よりか歳上やろうか。


「さっきも言うたように俺はたった今ここに来たばっかやぞ!何ゆえに俺らを襲うんじゃ!!」


 俺は連中に怒鳴り付けた。


「…………」


 連中は黙り込む。


「言ええええええ!!言わなんだら首突いて殺すぞ貴様らぁ!!」


 俺はそう叫ぶと槍をぶるんと回し、再び槍を構えた。


「じゃ、じゃかあしい!!お前はお館様を討った反逆者なんや!覚悟せえ!!相手は男と女二人だけじゃ!!かかれ!!討ち取るぞ!!」


 男の内の一人がそう叫ぶと俺に突進してきた。


 ……動きが鈍い……


 俺はそいつの槍を柄で弾くと、男のこめかみを思いっきり槍の柄で殴りかかった。


 バキッと音がすると男は吹っ飛ばされて倒れ込み、動かなくなった。


「来いや貴様ら……あいつは殺さんかったが貴様ら襲ってくんなら本気で殺すぞ……」


 俺は殺気を放ち残り二人の男にそう言った。

 残りの男達は若干気負いをしとる。


「言え!!なんで俺らを襲った!!正直に話したら命までは奪わん!!飯田の与右衛門はどうした!!与右衛門の指示でこないな事しとんのか!!」


 俺は二人に向けそう叫んだ。二人は怖じ気づいとる。

 俺に腿を刺された男は出血させ、腿を押さえうずくまったままやった。

 俺に槍の柄で殴られた奴はぴくりとも動かん。


「言いな!何ゆえに私達を襲ったのか!」


 お香もそう叫ぶ。


葛原(かつはら)がお館を討ったって聞いた!」


 男の一人がそう叫んだ。


「…………はぁ?!」


 何を言うとんのや……意味が分からんぞ……


「まもなく葛原が里に現れる言うから待っとって討つ用意しとった……」


 男が意味の分からん事を抜かしよる。


「…………誰の指示じゃ……」


 俺はその男を睨み付け、そう訪ねた。 


「……お嬢様……」


 男がぽつりとそう言った。


「……お嬢様?」



 ……お嬢様?



「言うな!!やるぞ!!葛原!!覚悟!!」


 突然二人の男の一人がそう叫ぶと槍を構え俺に突進してきた。

 すると……


 ザクリ……と男の脇腹に槍が刺された。

 男はその衝撃で倒れ込んだ。


「…………」


 お香が槍を突いていた。


「貴様ぁぁぁ!!」


 それを見たもう一人の男がお香に向けて槍を刺そうとする。

 不意を付かれたお香は瞬時に身を避けるのが精一杯であったが反撃をする余裕がない。


「ふんっ!」


 俺は槍をひと突きした。

 重い飯田の槍はいとも簡単に男の首筋を貫いた。

 槍は首を貫通し、ひと突きで首が切断寸前になっとる。

 貫いた瞬間に男は絶命をしていた。


 お香に脇を刺された男は脇を押さえ、うずくまっている。


「貴様……お嬢様ってどういう事や……言え……」


 俺はその男に歩み寄ると髪を掴みあげそう言った。


「はぁ……はぁ……」


 男は肩で息をしとる。


「言え、俺らの命狙う覚悟あったんやったら最後ぐらい潔く言え貴様……」


 俺は槍の刃を男の首筋に突き付けた。

 情けはかけられん……俺らの命を狙ってきた連中に情けはかけられん。

 そやないと、俺らが死ぬからや……


「お嬢……おとは……さん……」


 男が意識朦朧としながらもそう言った。


「音羽?」

「死にさらせ……葛原……」

「じゃかあしいわい!!音羽やと?!どういう事じゃ!!」

「……ふふ……」


 そう笑うと男は小刀を取りだして自分の首に刃を当て……


 そのまま自決してしまった。


「……二郎……」


 お香が俺の側に来る。


 ……これは……なんかおかしな事になっとるぞ……

 なんかおかしい……妙な事になっとる……


「お香……都に戻っとくれ」


 俺はお香を見詰めそう言った。


「……なして……」

「都に戻れ、迎えに行くよってに都に逃げとくれ……」

「……そんな事出来る訳ねえ……ここまできて……」

「普通ちゃう、俺には分かる。ここは普通じゃなくなっとる」

「……嫌だ、私もここにいるよ」

「……帰れ……京に帰れ!死ぬやもしらんのじゃ!!俺の問題や!!!お前は京に帰れ!!!」


 俺はお香を見詰め怒鳴り付けた。


「…………」

 お香は俺をじっと見詰める。

 俺は槍を握り締め飯田の館を見詰めた。

 館からは人の気配は無い。


「帰れって言われて帰る馬鹿がどこにいるのよ!!!」


 お香がそう叫ぶ。


「ここまで来てさ、何言うてんだ!!余計に付いてってやんべぇさ!!馬鹿にすんでねえよ二郎!!!!」

「…………」

「舐めくさりやがって!!死んでも付いてってやるよ!!」

「……ほんまに死ぬかもしれんぞ……おかしな事態になっとる……」

「付いてってやんべ!!!舐めんな馬鹿!!!おいおめえ!!!」


 お香が最初に俺に腿を疲れて動けんようになった男の元に駆け寄った。


「何のつもりだ?!何のつもりでおら達襲ったんだ?!言え!この!」


 お香が男の首根っこを掴んでそう言うとる。


「……ふぅぅ……」


 一瞬感情的になった俺は深呼吸をすると落ち着きを取り戻しお香と男の元に歩み寄った。

 そして男の前でしゃがみ込んだ。


「……正直に言うたら殺さん、なんで俺ら襲った……それだけは言え……言え貴様……」


 俺はお香に襟元を掴まれている男を睨み付けそう言った。


「はぁ……はぁ……お、お前がお館殺したって言われて……」


 男は怯えながらも俺を見詰めそう言う。


 ……殺した?


「……与右衛門はどうした」


 俺は怯える男をじっと見詰めそう尋ねた。


「……お亡くなりになった……殺された……葛原に……」

「……なに?」


 亡くなった?

 殺された?


「嘘偽りねえだろうね!!」


 お香が興奮して男にそう言う。


「葛原に殺された!!」


 男は怯えながらそう叫ぶ。


「…………」


 俺は黙り込み、館を睨み付けた。

 これは…………異様な状態になっとるようや……


「お香、やはりお前は京に戻れ、こっからは俺一人で行くわ」

「はぁ?」

「こっからは命奪われる可能性がある。お前にそこまで付き合わせる義理は無い」

「ふざけんでないよ、逃げんな馬鹿」

「いや……なんで逃げやねん」


 俺は思わず吹き出しお香を見詰めた。


「逃げてんでねえか、何のつもりだ?一人で何する気?なら一度二人で京戻るべ?そこで太刀買ってさ、乗り込んでやるよ!!全員成敗してやんべ?!!」

「ふふ……」

「おらの腕疑ってんのか?!太刀ありゃおら……私は無双だ……」


 お香が涙ぐんどる。


「ちゃう、そうちゃう。ただ命失う恐れもあってやな……」

「だったら二郎はどうなんだ?死ぬかもしんねえのに一人であの館行くのか?馬鹿でねえの?ふざけんでねえよ!」

「……お前に死んで欲しくないからや……」

「私もおめさんに死んで欲しくねえ!行くなら私も付いてくよ?」


 頑固やなぁこいつ……


 とは言えあの館に行ってどうなるかなんて分からんが……

 相当数の人数が襲ってくる可能性もあるし……


 そもそもこんな場で襲われているのであれば、わざわざ館に行かずに京に戻れば良いだけの話なんやが……


 どうしても気になった。

 与右衛門の事が、音羽の事が……


「俺の、事情を知りたいと言う下らん理由の為にお前を巻き添えにして死なす訳にはいかん、とりあえず迎えに行くから京に戻ってくれんか?」

「二郎、それ以上そんな事言ったら縁切るよ?」

「……ふっ……」


 縁か……そこまでの深い縁は無いんやけどな……


「嫌いになんよ?おめえの事さ」

「それは嫌やな、ふふ」

「このまんま好きでいさせてくらっせ」

「ふっ……」


 どないするか……ほんまにどうするか……


 素直にこいつを死なせたくないと言う気持ちが強いから、わざわざこいつを危険な場に連れて行きとうないと思っとるんやが……


「邪魔はしねえから」


 お香が俺をじっと見詰めそう言う。


「……刀でもあればな」


 刀があればお香の力が発揮出来る。


「槍もそこいらの連中よりは扱えるよ?」


 そう言い手に持つ槍をぐるりと振り回している。


「ほんなら……分かった。その代わり絶対死ぬなよ?絶対無茶もすんな、ほんで……」

「…………」

「絶対……その綺麗な顔に傷を負わせんなよ?」

「……馬鹿……」


 お香はうつ向いた。


「ほんなら行くか、事情聞かんとなぁ、そやないと、この槍返すに返されへんぞ!」

「そうだね!」

「俺はな、今趙雲言われたんやぞ?みんな蹴散らせてくれるわ!」


 俺はそう言うと飯田の重槍をぐるりぐるりと振り回しながら館へと向かっていった。


「趙雲?蜀の?あはははははははは」


 お香が高らかに笑っとる。


「笑うな」

「あははははははは」


 俺らは笑いながらも飯田の屋敷へと一歩一歩近づいていった。



 内心、集団に襲われ死ぬんちゃうかと不安に感じながら…………

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