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本能寺の足軽  作者: 猫丸
第二章 山崎の戦い
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30話 坂本

 朝早ように安土を発ち明智光秀を護衛しながら陸路を延々と歩かされた俺は途中で戦や争いなどが起こる事もなく、無事坂本城に到着した。


 時はいま正午を過ぎゆき、夕方へと傾いていた。

 明智光秀は幾人かの護衛を引き連れて入城していったが俺ら足軽は幕の張られた仮設の陣屋へと連れていかれた。

 中は安土の時より狭く質素やった。

 寝床も即席で建てられたような壁も床も何もない屋根だけの掘っ立て小屋がポツンポツンとあちこちに建てられている。

 小屋にはたくさんの藁のゴザが積まれているだけや。

 それで寝ろと言う事である。


 大将の男は俺らに明朝まで休憩するようにと伝え、すぐにその陣を去っていった。

 取り残された足軽達は自発的に掘っ立て小屋に入り、積まれたゴザを配り出した。

 みんな床にそれを敷きその上に座り込んでいる。

 俺もゴザを手渡されると直に地面にゴザを敷き、鎧を脱ぎ捨てると寝転んだ。

 横になり目を閉じると眠気がやってくる。

 俺はそのまま眠りについた……



 目が覚めた。

 辺りからイビキの音が聞こえるが話し声もあちらこちらから聞こえてくる。

 俺はそっと身を起こした。

 辺りはもう暗い。

 小屋の外には松明(たいまつ)がいくつか設けられていて炎が勢いよく燃え盛っていた。

 どれぐらい寝たんやろうか。

 身を起こして辺りを見渡すと俺のゴザのそばに紙に包まれたある物が置かれていた。

 それを手に取り薄い紙を取るとそれは握り飯やった。

 誰か気の利いた人が置いてくれたんやろうか。


 確かにまだ飯も食っとらんし腹も減りよる……

 俺はいただきますと呟くと握り飯を頬張った……




 飯を食い終わると厠(便所)へ行き、用を足した後、明智光秀のおる坂本城を見詰めた。

 火がたくさん掲げられた広い敷地内の奥に高くごっつい御城が見える。

 山の上に建てられているのではなく淡海(琵琶湖)の湖畔に建てられた御城や。

 昔来た事あるし見たこともある御城。

 安土城ほどの豪華さはないが十分立派な御城はいくつもの松明に照らされて輝いていた


 ………なんや………城見とったら眠うなってきよった………


 俺は寝床の掘っ立て小屋に戻るとゴザの上に寝転んだ。

 さっき起きたばかりやのに目を閉じるとすぐに眠気に襲われ、俺は再び深い眠りについていった……






 翌日早朝すぐに俺は明智光秀の護衛として京へと向かわされていた。

 坂本を発ち、山科の峠を越えて、正午にもならん前に京の都へとたどり着いた。

 戦乱が続く時勢やけど京の都は特に何も変わる事なく人々は行き交っていたが、明智隊を見掛けると老若男女問わずみなが頭をじっと下げていた。


 そんな中しばらく京の真ん中を行進しとると明智光秀の隊はなんや知らんごっつい重厚な門前にたどり着いた。

 本能寺の時に見た門よりも坂本城の門よりも遥かに遥かにごっつい重々しい門や。

 馬に乗っていた明智光秀は馬を降りると数十人に警備されながらその門をくぐり抜け奥へと消えていった……



「第一隊は左行けえ!第二部隊は右行けえ!」


 明智光秀が門の奥に消え去ると足軽大将が大声で騒ぎ立て俺らに対し指示を送り出した。


 部隊?なんや部隊って……


 俺の周りの連中はバラバラに散って指示通り左右に駆けてゆく。

 俺が何部隊なんぞ一切聞いとらんぞ……

 俺は唖然としながらもその場におった。


 するとなんと……

 俺以外のあれほどいた兵全員が去り、その場に残ったのは俺だけであった。


「えぇ……」


 嘘やろ、俺しかおらんぞ?

 残りは怖そうな侍か足軽大将しかおらんねんけど……


「おい!!お前何ぼぅっとしとんねん!!早よ持ち場つかんかい!!」


 鎧を身につけた男が俺の元に近付いてきた。


「……わたくしの部隊がよう分かりませんで……」


 恐ろしいが俺は侍らしき男に素直にそう伝えた。

 ……男はじっと俺の服装を見ている。

 足軽の鎧の下にある侍の衣服を……


「……どちらから来た?」

「丹波亀山より」


 俺がそう答えると、


「いち兵か?」

「はい」


 素直にそう答えると男は、


「部隊分からんか?ほんならお前御正門の警護行けや!ここからまっすぐのあそこや!ずっと真っ直ぐ行ってくれ!」


 ずっと先の門を指差し男がそう言う。


「はい!」


 俺はそう言い重厚な門をくぐり抜けるとやたら広い敷地の遥か遥か遠くの門へと走っていった。


 そしてこの正門へと向かった事が後々俺に取って大きな影響があったのである…………

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