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本能寺の足軽  作者: 猫丸
第一章 本能寺
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3話 解散

 少年は砂利の上で眠るようにうつ伏せに倒れたままやった。

 黙れ逆賊!と目を真っ赤にし、さきほど叫んでいたあの少年は目を閉じ地面に伏している。

 さきほど対峙したあの上品な美しい少年が今はただの亡骸と化しているのである。


 ……かわいそうに……


 なぜかそう言う感情が湧いた。

 なんの因果でこないな運命を辿ったのか。なんでこないな事起きたんやろう。

 俺は下っぱで上の者から命令されて動くだけの駒やから深くは分からんが、なんでこんな綺麗な男の子が死ななあかんねん……

 せめて成仏してくださいと俺は彼の死体の頬をそっと撫で、両手を合わせて祈った。




 大きな寺すべてが炎に包まれ、火が消えようとした頃はもう太陽は頭上に輝いていた。


「第六隊集まれーい!!第六隊集まれーい!!」


 足軽大将のおっさんが辺り一面大声で叫んどる。

 あんまりあのおっさん好きちゃうけど俺はおっさんの元に歩み寄った。

 俺と同じ隊の連中もぞろぞろと集まってくる。

 またしょうもない事言うんかな、そう思ってたらおっさんはこう言い出した。


「ええかー!今より織田信長の亡骸(なきがら)探すでー!!本能寺燃えたやろ!!あん中から織田信長の亡骸(なきがら)探すからお前ら頑張りーやー!!」


 はぁ?阿呆か?あんな広い寺で何を探すねん。

 そう思いながらも俺らは焼け落ちた寺跡に向かわされた。




 さっき頭上に輝いていた陽はだいぶ傾き夕暮れの前へと差し掛かっていた。

 俺ら足軽はあれから延々と焼け落ちた寺を掘り返す作業をさせられていた。

 骨を探せと、わけの分からん指示を受けて……

 織田信長というお偉い様の骨を探せと言われたが何が誰の骨なのか分かる訳もなく……

 あの凄まじい炎を目の当たりにすると骨すらも燃えてるんちゃうんか。

 それ程の凄まじい大きな炎やった。


 無駄やろ……探しても……


 そういう正解の答えが心の中にあるものの上には逆らえず俺は一応探した。


 織田信長の骨を…………




 結局織田信長の骨は見付からなかった。

 織田信長が最後までいたと言う跡地を重点的に捜索させられ、ずっと(すす)だらけの焦げ臭い焼け跡の中を捜索させられたが骨は見付からなかった。


 もしかして……これは?と言う人の姿をした灰のようなものは見つけてはいたが敢えて報告はしなかった。

 多分あれが織田信長と言う人物の灰であったのだろうが足軽大将のおっさんと、そしてこの謀反を起こした明智のお殿様の事があんまり好きではなく……

 あの可哀想な少年が命を懸けて守ろうとしたお偉いさんの亡骸(なきがら)ぐらいそっとしてやりたくて、何も見付けなかった事にした。




 解散は本能寺と言う焼け落ちた寺の前であっさりと行われた

 この事は明智の殿様にとって有意義な事やとか織田信長の亡骸が見付からなかったのが心残りやとか、お前達はようやったなどの褒め言葉の後、一人一人に朱色の盃が配られ酒一口分を十五、六の可愛らしい娘さん方が注いでいった。

 その後、えいえいおーの掛け声をあげると盃の酒を一気に飲み干した。

 そうして大将のおっさんはこう叫んだ。


「各々がたよう頑張りはった!!上様も各々がたの働きよう喜んどる!此度(こたび)の働きの事忘れぬよう又次の時も此度(こたび)の事思いだして働くようにお頼みもうしあげる!!では、解散!!!」


 おっさんが解散と言うと周りの連中はザワザワとしながらもみな自由に動きまわり出した。


 これから飯食いに行くか?これから京で女遊びするか?と言った声がよく聞こえてくる中、俺もどうするか考えながらじっと本能寺を見つめた……

 

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