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本能寺の足軽  作者: 猫丸
第六章 濃尾
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124話 強い意思

「明智光秀を討ったんは俺じゃあぁ!!」


 俺がそう叫ぶと連中は俺を睨み付け殺意の気配を高めだした。

 四人討ち取ったがまだ十五人ほどはおる。その男連中が一斉に俺に向けて殺意を抱き出した。


 ちょっと……挑発し過ぎたか……


 そうも思ったが俺の味方の護衛隊からも敵方に対し殺意を抱き出しとった。


「お前ええ!!光秀様のかたきぃ!!」


 突然敵方の一人がそう叫ぶと俺に槍を突いてきたが……

 俺はそれを槍の柄で弾くと一瞬で男の胸を突いた。

 連中は鎧を着ておらんからわざわざ無理に喉を突く必要も無かった。


「やかましいわ、しょうがない事じゃ」


 そう言いその男の腹を蹴飛ばす。槍が男の胸から抜ける。男は既に絶命していた。


「かかれ!!」


 俺が男を刺した後に味方の侍が護衛隊にそう言うと一斉に味方が敵方に襲い掛かりだした。

 敵方も味方に襲い掛かるが……

 相手方の六人が周囲には目もくれず俺のみを襲ってきた。かなりの殺気を宿しながら。

 俺は一人の太ももを瞬時に突くと一歩二歩三歩と後退し槍を構え直した。

 連中は叫び声を上げて刀や槍で俺を殺そうと突進してくる。

 俺は刀を振り上げわめき声をあげている男の一瞬の隙をつくと心臓を突き刺した。そして、更に俺に斬り掛かろうとする男の腹を思いっきり蹴飛ばした。

 その男は後ろに倒れると槍で俺を突こうとしてきた男も巻き添えになり転倒しとる。

 俺は心臓を刺した男から槍を抜くと転倒しとる男の腹を渾身の力を込めて刺した。そしてすぐに槍を抜くと、


「かかって来いや……殺すぞ貴様ら……」


 残り四人に向けてそう言い、腰を深く落とし飯田の重槍を構えた。


 こいつら……全員討つ……


 秀吉様のお言い付けは必ずや守る。三法師様の護衛のお言い付け……必ずや守る。

 その意思の強さは、あの伊賀の忍び百地玄蔵の意思の強さを肌で痛感し感化されたんかもしらん。


「邪魔立てするんなら……貴様ら全て葬る……」


 俺は強い殺気を放ち、槍を構え男四人を睨み付けたが……


「やかましい!光秀様のかたき……」


 男がそう言い刀を振り上げた時、俺は瞬時にそいつに近付くと飯田の重たい槍を心臓目掛けて貫いた。

 そして又そいつの腹を蹴飛ばす。槍はいとも簡単に男の胸から抜ける。


「次はどいつじゃ……かかって来んのやったらこっちから行くぞ……」


 そう言うと俺は槍を構えた男の槍の柄を飯田の重槍で思いっきり払った。

 槍を持つ男の手から槍が払わされそうになった。


 ……隙が出来とる……


 その瞬間、俺は男の喉を槍で思いきり突いた。槍は男の喉を貫通する。

 又俺はそいつの腹を蹴飛ばし槍を男から抜いた。


 ……こいつら全員殺したる……

 三法師様には一切手出しはさせん……


 そう思い残り二人を睨み付けた。男二人はかなり動揺しとる。

 周りも乱闘騒ぎでわぁわぁ言いながら殺し合いをしとる。


「早よ来いや……お前らの主君明智光秀を討ったんは俺やぞ……」


 物凄い殺気を放ち男二人を睨み付け俺はそう呟いた。

 男二人は刀を構えながらも動揺しとる。


「あっ!光秀様や!!」


 俺は左方向を指差してそう叫んだ。すると男二人の意識が左方向に移った。


 俺は一瞬で男に近付くと槍で男の喉を貫いた。


「隙だらけやな、たわけ」


 男から槍を抜くともう一人を睨み付けた。


「普段は情け掛けて……命までは奪わん事もあるがな……」


 俺は刀を構え動揺しとる男を睨み付けてそう言った。


「お前らみたいなごろつきには……一切情け掛けんぞ……明智光秀隊の残党ども……」

「ひっ……か、かんべんしとうくれ……雇われただけや……」

「知るか……三法師様の命狙う奴は……討つぞ」

「す、すまん!!」


 そう叫ぶと男は刀を捨てて走って逃げて行ってしまった。

 まだ周りでは殺し合いをしとったが、さっきの男が走って逃げていくのを見ると敵方は全員同じように武器を捨てて走って逃げて行きよった。


「ふぅぅ……」


 俺は飯田の槍の構えを解くと深く息を吐いた。何とも言えん虚しい気持ちが心に広がっていく。

 周りには俺が殺した男達の死体が散乱しとる。


「二郎!!」


 うつ向いているとお香が駆け寄り俺の右腕を掴んできた。


「あぁ……三法師様は御無事か?」

「大丈夫、誰も襲って来なかった」

「そうか、良かった……」

「二郎は大丈夫?」

「大丈夫や、俺は……蜀の趙雲やぞ?ふふふ」

「二郎……」


 お香が涙ぐみ俺の右腕を強く掴んでくる。


「大した槍の腕前で御座いますな、感服致しました」


 ここまでこの集団を引率してきた侍が俺の側に来てそう言ってくれた。


「ありがとうございます。三法師様に危害加える者が居れば……」

「…………」

「全て討ち取る所存に御座います。羽柴秀吉様よりの御命令で御座いますので」

「分かり申した。では再び三法師様をお連れ致して岐阜へと参りましょう」


 侍がそう言い頭を下げてきた。俺も彼に頭を下げた。

 お香は俺の腕を握り締め、すすり泣いている。




「では再び美濃の岐阜の御城へと参る!各々方ぁ!再び織田三法師様の御守り御頼み申し上げまするぞぉ!」


 先程の侍がそう言うと男達は声を上げた。

 そして、俺ら三法師様護衛隊は岐阜へと向けて進みだした。

 この血に染まる明智の残党の死体達の転がる場……俺は早くこの地を離れたかった。


 その殆んどを俺が討ったんやから……

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