♥ 瀬圉家 1 / 本家 1 / 別邸 1 / リビング 1
──*──*──*── 瀬圉家
──*──*──*── 別邸
──*──*──*── リビング
玄武の転移陣で別邸のリビングに戻って来た。
別邸の書斎には最新式のコピー機があるから、態々コンビニへ行ったり、コピー機を置いてあるスーパーへ行く必要はないから便利。
リビングも地震の影響を受けていて、グチャグチャになっている。
別邸の中を片付けるのは大変そうだけど、玄武が式神を出してくれて、後片付けをするように指示を出してくれた。
式神は玄武に従順で、文句も言わずに素直に後片付けの作業を始めてくれた。
式神は12体居るから、もしかしたら十二支の式神に命令してるのかも知れない。
また地震が起きても困るからって、玄武は弓弦さんに式神を1体付けて、守らせる事になった。
玄武は実体化を解いて、私の傍にいる。
私を守る為に付けていた式神を弓弦さんに付けたみたい。
十二支中の十一支が別邸の後片付けと掃除に当たっている。
弓弦さんは書斎へ行って資料本のコピーをするみたい。
私は何をたらいいのかしら?
後片付けを手伝った方がいいのかしら??
弓弦さんのコピーを手伝った方がいいかしら??
衛美
「 ──玄武、私も何かしようと思うんだけど、何をしたらいいと思う? 」
玄武
『 何もしなくていい。
ソファーに座ってTVでも見ればいい 』
衛美
「 …………そ、そうね?
また地震が起きたら危ないものね?
大人しくTVでも見てるわ… 」
玄武に言われて、TVを見る事にした。
テーブルの上に置いてあるチャンネルを持って、TVの電源を入れる。
画面には地震速報が映っていたけど、チャンネルを変える。
ニュースで地震の事が報道されている。
画面に映っている光景を見て、私は愕然とした。
だって初めて見る光景だから!!
画面に映っているのは、木の太い根っ子──みたいなのが根上がりしていて、道路のアスファルトを持ち上げて、アスファルトを割って、地上に出て来ている。
木の根っ子は幹みたいに太くて道路は滅茶苦茶になっていて、木の根っ子に妨害されている所為で、車が大変な事になっている。
横転している車もあれば、上下が逆転してひっくり返っている車がある。
どうやら元の根じゃなくて、2段根や3段根が車の妨害をして道路を使えない状態にしているみたい。
現場を取材しているリポーターも初めての事でパニクってるみたい。
衛美
「 ──玄武、地震の原因って…… 」
玄武
『 もしかしなくても、そうだろうな。
面倒で厄介な植物が召喚されたな 』
衛美
「 召喚??
玄武、召喚ってどういう事??
玄武はあれを知ってるの? 」
玄武
『 実物を見るのは初めてだが、遥か昔に資料でなら見た事はある 』
衛美
「 資料?
遥か昔って何時なの? 」
玄武
『 千年以上前だ。
眞小呂が生きていた時代だ。
あれは “ 妖樹 ” という植物だ 』
衛美
「 妖樹??
妖樹って何なの?? 」
玄武
『 妖魔の生まれる樹だ 』
衛美
「 妖魔??
妖魔って何?? 」
玄武
「 妖魔は魔素で構成された生物だ。
魔素を持たない野良式神は、霊感の強い者にしか見えないが、妖魔は霊感の弱い者にもハッキリと見える。
妖魔は共喰いはしないが、肉食だ。
あらゆる生物を容赦なく喰らうのが妖魔だ 』
衛美
「 人間を喰らう??
そんな危険極まりないのが生まれる樹なの?? 」
玄武
「 そうだな。
妖樹には妖花という花が咲く。
妖花が散ると妖果という実が実る。
妖果が熟すと地に落ちる。
地に落ちた妖果から妖魔が生まれる。
生まれた妖魔は餌を求めて街中を徘徊し、あらゆる生物を襲う。
勿論、人間もだ。
大変な事になるぞ。
見物だな 』
衛美
「 何が『 見物だな 』っよ!!
見物にしちゃ駄目でしょ!!
何とかしないと! 」
玄武
『 何とも出来ないな 』
衛美
「 嘘、言わないで!
玄武には出来るじゃない! 」
玄武
『 ワタシには妖樹を消滅させる事は出来ない。
出来るとすれば妖樹を召喚した者だけだ 』
衛美
「 妖樹を召喚した者??
どういう事なの? 」
玄武
『 あの妖樹を召喚するには、活きのいい大量の霊魂を必要とする。
活きのいい大量の霊魂を入手するには、大量の人間を集める必要がある。
大量の人間は赤い雪が降った日に行方不明になった500名近い人間達と言ったところか 』
衛美
「 ちょっと……何でそんな事が分かるのよ? 」
玄武
『 妖樹を召喚する事が出来るのは、1人しか居ないからだ 』
衛美
「 …………誰が召喚したのか知ってるの? 」
玄武
『 霄囹だ。
妖樹の事を知っているのは、眞小呂とワタシと霄囹だけだからな。
大量の活きのいい霊魂を必要とする妖樹召喚の術式を眞小呂は破棄した。
然し、眞小呂が破棄した筈の術式を霄囹は人知れず盗んでいたのだろう。
全く…やってくれたものだな 』
衛美
「 ……あの妖樹を消滅させる為には、嫌でも霄囹に会わないといけない──って事? 」
玄武
『 そうなるな 』
衛美
「 ………………仮に会えたとして、霄囹は妖樹を消滅してくれると思う? 」
玄武
『 しないだろうな。
消滅させる気があるなら、初めから妖樹を召喚したりしない。
交渉しても決裂するのは目に見えている 』
衛美
「 そんな……。
じゃあ、どうするの?
このまま知らん顔なんて出来ないわよ! 」
玄武
『 妖果が実り熟して落ちるまで半年は掛かる。
それ迄は妖樹は無害だ。
普通に暮らせばいい。
半年後はリアルな地獄絵図を見れるぞ 』
衛美
「 見たくないわ! 」