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♥ これは式神  作者: 雪*苺
十日目 / 水曜日 5月1日
72/104

♥ 依頼場所 2 - 4 / 廃神社 3 / 退魔師という仕事 6


衛美

「 …………それを言われちゃうと……ねぇ?

  ──ところで、肝心の古井戸はにあるの?? 」


厳蒔弓弦

「 そうだな。

  古井戸を見にたのだったな 」


玄武

「 古井戸は裏手にある。

  よどみだけでなく、腐敗臭も酷いから気を付けろ 」


衛美

「 は?

  腐敗臭って…なんで?? 」


玄武

「 呪具の効果だな。

  結界を張っても臭い迄は防げない。

  マスクを持参するべきだったな 」


衛美

げんぅ〜〜〜!! 」


玄武

「 怒るなえい

  じゅの回収は式神にさせる。

  離れた場所でづると見ていればいい 」


衛美

ほんに?

  離れてていいの?

  変なのに襲われたりしないでしょうね?

  私は見えないんだからね! 」


玄武

「 安心していい。

  えいづるには結界を張っておく。

  結界の中から出なければ安全だ。

  此方こちらからは攻撃が出来る。

  づるに任せればいい 」


衛美

げん…… 」


玄武

「 そんな顔をするな。

  煽っても式神はなびかないぞ 」


衛美

「 はぁ?!

  煽ってないし!!

  ──もうっ、さっさと古井戸に行きなさいよぉ!! 」


玄武

づるえいを頼む 」


厳蒔弓弦

「 任せてくれ 」


──*──*──*── 裏手


 神社の裏手に着くと、確かに古井戸がある。


 随分と歴史を感じる年期の入った古井戸。


 古井戸には蓋がされていて、塞がっているみたい。


 づるさんと私を残して、げんは1人で古井戸に向かって歩いていく。


 かなり離れているけど、確かに臭う…。


 鼻が曲がりそうなぐらい酷い臭いじゃないのは、古井戸から離れているからだと思うんだけど…。


 明かりのない真っ暗な廃神社なのに井戸がちゃんと見えるのは、げんのお蔭だったりする。


衛美

「 ……ほんに古井戸の中にじゅがあるのかしら……。

  じゅを回収したら “ のろわれた家 ” のあくりょうが弱くなると思いますか? 」


厳蒔弓弦

「 あの家と古井戸との関係性は分からないが、げんが言うならそうなのだろう 」


衛美

「 …………どんなじゅなのかしら… 」


 づるさんの隣でげんの様子を見ているけど、生憎と後ろ姿しか見えない。


 げんなにをしてるのかしらね??


衛美

「 ……夜の廃神社って不気味ですよね?

  昼間でも不気味だと思いますけど…。

  なにも出てませんよね…… 」


厳蒔弓弦

「 それは分からないな。

  仮に出てたとしても結界から出なければ安全なのだから、ジッとしていればいい 」


衛美

「 …………ですよね… 」


 私は余計な事を考えるのをめた。


 げんは古井戸の口を閉じている蓋を取ったみたい。


 古井戸の様子はげんの姿で隠れていて見えないけど、もしかしたら敢えて見えないように立ってくれているのかも知れない。


 げんの優しさなのかしら??


 古井戸からなにかが出ててるみたい??


 からか「 ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛── 」なんていう喉が潰れたような気味の悪い声が聞こえてる。


 なんの声なのかしら??


衛美

「 ──づるさん、この気味悪い声ってなんなんでしょう… 」


厳蒔弓弦

「 声?

  私はなにも聞こえないが? 」


衛美

「 えっ?

  でもでも、今、からか『 ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛── 』って声みたいなのが聞こえてるんですけど…… 」


厳蒔弓弦

「 そう…なのか?

  …………………………。

  済まないえい……、どうやら私にはなにも聞こえないようだ… 」


 わざ(わざ)耳を澄ませてくれたづるさんは、首を左右に振りながら声が聞こえない事を教えてくれた。


 づるさんに聞こえない声……。


 どうして私には聞こえるのかしら…??


厳蒔弓弦

「 ──見えないえいにしか聞こえない声か…。

  なにか意味があるのかも知れないな。

  あとげんに相談してみるといい。

  げんなら理由を知っているかも知れないからな 」


衛美

「 …………はい。

  そうしてみます… 」


 まで聞こえるのか分からない不気味な声は両耳を塞いでみても聞こえてる!


 まるで頭の中に直接響いているみたいな感じ??


 頭の中で声が聞こえなんで最悪な気分!!


 ってげんが張ってくれた結界の中よね?


 なんとかしてほしい!!


 今、ぐにでも 結界から出てげんに思いっ切り抱き付きたいぐらい!!


 助けてほしいっ!!


 頭の中に響く不気味な声に耐えられなくなった私は、立っていられなくなって、近くの木に背中を付けて凭れた。


 早くじゅの回収を終わらせてぇ!!






玄武

「 ──予想外に戸惑った。

  えいづる──大事はないか? 」


厳蒔弓弦

げん、私はなんともないが、えいが参っている状態だ 」


玄武

えいがか?

  ──どうしたえい


衛美

「 ……げん………… 」


 私に声を掛けてくれたげんに抱き付いた私は、声を上げて泣いた。


 泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、泣いて──、大泣きした。


 づるさんが近くにるのにお構いなく、まるで()をこねる子供みたい泣きじゃくった。


 もっと心配そうな声で名前を呼んでくれてもいいのに、げんは通常運行な声で私の名前を呼んで「 どうした? 」って聞いてる。


 そんなの私にだって分からない!!


 げんが優しく背中を擦ってくれるから少しだけど落ち着いてたかも知れない。


 漸く泣きむ事が出来た私は小声で「 げん… 」と呟いた。


厳蒔弓弦

げんえいは大丈夫なのか? 」


玄武

「 さぁな…。

  ワタシにも分からない。

  泣き疲れたのか眠ってしまったな。

  ──づるえいなにか言っていたか? 」


厳蒔弓弦

「 あぁ……『 声が聞こえる 』と言っていたな。

  私にはなにも聞こえなかったが、えいには声が声が聞こえていたらしい 」


玄武

「 ──声か…。

  それがどんな声だったかえいから聞いてないか? 」


厳蒔弓弦

「 言っていたな。

  確か──── 」

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