♥ 瀬圉家 18 / 本家 18 / 別邸 6 / ダイニングキッチン 2
厳蒔弓弦
「 ──今、玄武が食べてるのが最後だ 」
衛美
「 えぇっ?!
玄武ったら、また1人で食べちゃってるの??
玄武の食いしん坊!!
少しは私に残しといてよ!! 」
玄武
「 嫌だな。
起きてこない衛美が悪い 」
衛美
「 何ですってぇ!! 」
厳蒔弓弦
「 玄武と衛美は仲が良いな。
まるで兄妹のようだ 」
玄武
「 確かにな。
惚れた弱味…と言うのかもな。
ワタシにとって衛美は年の離れた妹のような存在だ。
可愛くて仕方無い 」
厳蒔弓弦
「 衛美のような妹がいたら毎日が楽しそうで退屈しなさそいだな 」
玄武
「 ならば、弓弦も衛美を妹だと思えばいい。
妹として接したら少しは女性不信も改善するかも知れないぞ 」
厳蒔弓弦
「 どうかな…。
私の女性不信は身内の姉達が原因だからな…。
難しいかも知れない…… 」
玄武
「 妹と姉は別物だぞ。
妹に対しては兄の権限で命令も出来るし、パシリにも使えるからな 」
厳蒔弓弦
「 いや……婚約者の衛美に命令は出来ない。
パシリも流石にな…… 」
玄武
「 そうか?
残念だな、衛美 」
衛美
「 ちっとも残念じゃありません!!
もう、好き勝手に言ってくれちゃって!
何が妹よ。
孫の間違いでしょう 」
玄武
「 孫とは違うな 」
厳蒔弓弦
「 玄武は千年以上も前に生み出された式神だったな。
衛美が孫でもおかしくないかも知れないぞ 」
玄武
「 ………………。
いや、やはり違うな。
孫と言うより妹だ。
眞小呂は弟のような存在だったしな 」
衛美
「 ねぇ、玄武……。
私は榻萠之眞小呂は本当に私の前世なの? 」
玄武
「 そうだ。
嵩原衛姫も瀬圉衛柚も衛美の前世だ 」
衛美
「 …………何か信じられない話よね…。
私がお祖母様のお祖母様だったなんて、嘘みたいな… 」
玄武
「 そうだな。
ワタシも此程最近に転生するとは思わなかった 」
衛美
「 ねぇ、転生陣ってなんなの?
霄囹が言ってたでしょ。
『 転生出来たし要らない 』とか言ってたけど…… 」
玄武
「 さぁな。
ワタシも詳しくは知らない。
通常の転生とは違うようだ 」
厳蒔弓弦
「 どう違うんだ? 」
玄武
「 通常の転生は、死んだ人間が手前の襖を開けて次の部屋へ入るようなものだ。
生前で功徳を積んで貯めた善根── 謂わば黒字貯金だな ──によって、来世へ生まれ変わる期間が変わり、より良い恵まれた環境の元へ生まれる事が出来る。
貯金が多ければ早く生まれ変われるし、五体満足な身体で人間として生まれ変われる。
貯金が少なければ、生まれ変わる迄の時間が長くなり、稀に五体不満足な身体で生まれ変わる。
逆に赤字貯金ならば、直ぐに生まれ変われるが、人間には生まれ変われない。
善根を積めない動植物に生まれ変わるのを何千,何万と繰り返し、赤字貯金が無くなるまで続く 」
厳蒔弓弦
「 それが通常の転生なのか。
転生陣を使うと何が変わるんだ? 」
玄武
「 眞小呂の霊魂と共にワタシも時代を越えられるようになる。
本来は閉まっている襖は開いている状態になっている。
本来は手前の部屋にしか入れないが、部屋を移動する事が出来、好きな部屋を選ぶ事が出来る。
選んだ部屋へ生まれ変わる事が出来る。
環境は選べないが、五体満足の身体で生まれる事が出来る。
前世の記憶は魂に記録され蓄積される。
様々な体験,経験から得られた膨大な知識が魂の奥底で眠っている。
全ての前世の記憶が戻ってしまうと、脳が記憶の処理に追い付けず、廃人になり兼ねない。
廃人になりたくなければ、前世の記憶など思い出さないに限る 」
衛美
「 …………霄囹はそれを知ってるの? 」
玄武
「 さぁな。
其処まではワタシも知らない。
記憶の事を知っていてあんな事を言ったとすれば、性根は腐りきっている。
元から腐っていたがな 」
衛美
「 …………そう… 」
玄武
「 衛美が霄囹に言ったように、眞小呂の人生は既に終わっている。
衛美が眞小呂の記憶を思い出す必要はない。
“ 瀬圉衛美 ” として生まれた以上、衛美には新たに与えられた人生を全うする権利がある。
前世はあくまで前世でしかない。
既に終わった人生に衛美が縛られる必要はない。
仮に衛美の前世を知っている輩が現れ、 “ 前世では衛美の婚約者だった ” と言って来ても無視すればいい。
衛美には弓弦が居るからだ。
しつこければワタシが人知れず始末してもいいぞ。
完全犯罪なら任せろ 」
衛美
「 …………有り難う…。
今は気持ちだけ受け取っておくわ…。
玄武ってば直ぐ “ 完全犯罪 ” って言うんだから… 」
玄武
「 ワタシにしか出来ない事だからな! 」
衛美
「 ドヤ顔で言わないでよ… 」
厳蒔弓弦
「 玄武は今までに完全犯罪をなし得た事はあるのか? 」
玄武
「 前世までならある。
今世では未だないな。
衛美が嫌がる所為だ。
何時も虫の息で生かしてやってはいる。
ワタシは完全に息の根を止めてやりたいのだが、衛美が嫌がる。
衛美は自分に危害を加えた犯罪者共に対して甘いのだ。
ワタシは気に入らないが…衛美が望む以上、無視は出来ない 」
厳蒔弓弦
「 そ…そうか……。
( 衛美も人知れぬ苦労をしているのだな… )」
玄武
「 弓弦もしつこい女に困った時は遠慮なく言え。
ワタシが病死に見せ掛けて始末してやる 」
厳蒔弓弦
「 …………心の中に留めておこう… 」
玄武
「 そうか?
解剖をしなければ、死因が分からないように隠蔽する事も出来るからな。
足は付くまいよ 」
厳蒔弓弦
「 …………そう、だな…。
( これが〈 守護り手 〉の守護り方なのか… )」




