♥ 瀬圉家 12 / 本家 12 / 本邸 3 / 応接間 3
玄武が弓弦さんの額に判子を押す。
弓弦さんの額に付いたのは青みがかった緑色。
弓弦さんもセーフで、安心した。
次は私の番。
お父さんがセーフだっからと言って、私もセーフとは限らない。
だって、お母さんの家系に≪ 祿棠家 ≫の血が入っていたら、私はアウトだもの。
弓弦さんの時よりもドキドキするぅ〜〜。
玄武が判子を私の額に付けてくれた。
私の額に付いたのは────。
衛美
「 ──玄武、私は何色なの?
赤色じゃないわよね? 」
玄武
「 安心するといい。
衛美も同じ緑色だ 」
衛美
「 セーフなのね?
良かった〜〜!! 」
玄武
「 判子はワタシの善意で貸し出してやろう。
1本5万だ 」
衛美
「 コラぁ!
何でお金を取るのよ!
非常事態なんだから、お金を取るなんて駄目だからね! 」
玄武
「 衛美のお小遣いにと思ってな。
お小遣い、欲しくないのか? 」
衛美
「 欲しいけど…。
1本5万は高いでしょ? 」
玄武
「 高くはない。
本来ならば10万は下らない品物だ。
非常事態だからこそ、ワタシは善意で5万にしている。
50%OFF、半額だぞ 」
衛美
「 …………お祖父様…玄武が御免なさい… 」
鴇胤
「 構わん。
5万で良いなら、50本用意してくれ。
判子の用意が出来次第、≪ 瀬圉家 ≫を総動員して2人1組で陰陽師と退魔師の元へ派遣さる。
判子を押して回らせよう 」
衛美
「 大変な作業になりそう…。
事情を話しても、素直に押させてくれるのかな… 」
鴇胤
「 ……難しいかも知れんな。
≪ 祿棠家 ≫は≪ 瀬圉家 ≫より権力がある。
≪ 祿棠家 ≫から圧力を掛けられると難しくなるかも知れん 」
衛美
「 そんな… 」
玄武
「 動く前に≪ 嵩原家 ≫≪ 安倍家 ≫≪ 營譱家 ≫の当主へ連絡した方が良いだろう。
≪ 祿棠家 ≫の当主が霄囹の傀儡になってなければ良いな 」
衛美
「 …………ねぇ、何で祿棠霄囹は目覚めたの?
今まで音沙汰なかったんでしょう?
どうして今頃? 」
玄武
「 さぁな。
ワタシは霄囹ではないから分からない。
今、出来る事は近い未来の為に少しでも被害を減らす努力をする事だ。
鴇胤、残りの判子を用意したぞ。
250万を忘れるな 」
鴇胤
「 分かった。
衛美の口座へ振り込んでおこう。
弓弦君は玄武殿と衛美と共に別邸に泊まってくれ 」
厳蒔弓弦
「 分かりました 」
衛美
「 お祖父様……、私にも何か出来る事はない?
私に出来る事があるなら── 」
鴇胤
「 衛美、それには及ばんよ。
衛美は陰陽師でもなければ、退魔師でもないんだ。
何時も通りの生活を送ってくれたらいい。
暫くは別邸から大学へ通ってもらう事になるがな 」
衛美
「 大学へ行ってもいいの? 」
鴇胤
「 うむ、衛美に関しては今まで通りに過ごしてもらいたい 」
衛美
「 お祖父様、有り難う!
別邸からでも大学に通えるのは嬉しい(////)」
鴇胤
「 玄武殿と弓弦君が傍に居てくれるなら安心だからな。
弓弦君、衛美を頼むよ 」
厳蒔弓弦
「 はい。
退魔師として、婚約者として、衛美を守ります 」
玄武
「 弓弦には衛美をストーカーから守ってほしい 」
厳蒔弓弦
「 ストーカー?
衛美はストーカーに悩んでいるのか? 」
衛美
「 えっ?
…………まぁ、ストーカーと言うか何と言うか……。
アプローチをやたらとして来る学生が居るには居るけど……。
講義で会う事はないんです。
登下校と昼休みに声を掛けられるぐらいで…… 」
厳蒔弓弦
「 そうなのか?
登下校と昼休みだけでなく、講義も同席しよう 」
衛美
「 えっ?
いいんですか?
図書館でアルバイトはいいんですか? 」
厳蒔弓弦
「 構わない。
婚約者がストーカー被害に遭っているのにアルバイトを優先させるわけにはいかない 」
衛美
「 弓弦さん(////)」
玄武
「 弁当は重箱を使えよ。
ストーカーに男子力とやらを見せ付けてやる為にな! 」
衛美
「 玄武、面白がってるでしょ〜〜 」
玄武
「 面白がってない。
ストーカーの “ あわあわ ” する顔が見たいだけだ 」
衛美
「 玄武ぅ〜〜〜 」
厳蒔弓弦
「 腕に縒りを掛けて弁当を作るとしよう。
明日は大学へ行くのか? 」
衛美
「 ううん、行かない。
明日は玄武と映画を観に行こうと思ってるんです 」
厳蒔弓弦
「 映画? 」
玄武
「 衛美,弓弦、別邸へ戻ろう。
ワタシは料理を食べたい 」
厳蒔弓弦
「 分かった。
何か食べたい料理はあるか?
リクエストがあるなら聞こう 」
玄武
「 そうか?
それなら── 」
衛美
「 玄武、ワタシが食べれる量にしてよ! 」
玄武
「 心配するな。
ワタシが直に食べれる 」
衛美
「 そう言えば…玄武ったら、お茶も飲んでたし和菓子も食べてたわね。
式神なのに飲食が出来るのね 」
玄武
「 飲食の必要はないが、実体化していれば飲食も可能だ。
ワタシは特別な式神だからな 」
衛美
「 それならそうと、もっと前に教えてほしかったわ… 」
玄武
「 言うのを忘れていた。
今、分かったのだから良いだろう。
早く別邸へ戻るぞ 」
衛美
「 はいはい。
──お祖父様、お先に失礼します 」
伯父さんとお父さんの姿は見当たらなかった。
玄武が 追加で出した50本の判子を持って、伯父さんと一緒に応接間から出て行ったみたい。
お父さんと会えたのに一言も話せなかったな……。
お父さんとお母さんも別邸に泊まるのかしらね?
玄武
「 ──衛美、何をしている。
早く来ないか 」
衛美
「 は〜〜〜い 」
弓弦さんがドアを開けてくれている。
私を急かす玄武と一緒に弓弦さんと応接間を出た。