♥ 瀬圉家 11 / 本家 11 / 本邸 2 / 応接間 2
衛美
「 ≪ 祿棠家 ≫に引き取られちゃったら拙いんじゃないの? 」
鴇胤
「 ≪ 瀬圉家 ≫で葬儀をして遺体を火葬するわけにはいかん。
例えどんな事情があったとしてもだ。
事情は説明するが、信じてもらえるかは分からん 」
衛美
「 そんな……。
じゃあ、冥晶さんの遺体は霄囹の手に渡って、式神にされて傀儡化されちゃうって事なの? 」
玄武
「 そうなる。
冥晶だけではあるまいよ。
霄囹の血を引く子孫は憑依陣の被害に遭うのは間違いない。
第2,第3の冥晶が増えるのは見物でもある 」
衛美
「 玄武、ちょっと不謹慎じゃないの? 」
玄武
「 霄囹の手に渡る前に、さっさと火葬してしまえば良いのに、しないのが悪い。
ワタシは危険性を話したぞ。
ワタシの忠告を活かすも殺すも鴇胤次第という事だ。
緊急召集でも掛けてはどうだ?
被害者が増えるぞ。
≪ 瀬圉家 ≫中に≪ 祿棠家 ≫の血を引いている者は居ないのか?
いれば大変な事態になり兼ねないぞ。
結界陣の中で隔離でもしていた方がいいな。
退魔師の中にも≪ 祿棠家 ≫の血を引く者が居ないか調べた方がいい。
居るなら霄囹の憑依陣の餌食とならぬように結界陣の中で隔離するといい 」
衛美
「 何か大変な事になっちゃったわね… 」
玄武
「 これからなる 」
衛美
「 でも…結界陣の中に入ってもらって隔離するのは大変なじゃないの?
それに誰が憑依陣を跳ね返せるような強力な結界陣を張るって言うの? 」
鴇胤
「 おぉ、それもそうじゃな。
陰陽師の御三家と退魔師の御三家以外にも陰陽師,退魔師は多い。
どうしたものか…… 」
衛美
「 …………玄武…どうするの? 」
玄武
「 ワタシに聞くな。
ワタシに出来る事は限られている。
万能な式神等何処にも居ない 」
衛美
「 そんな…… 」
厳蒔弓弦
「 玄武、何とか出来ないのか?
霄囹の血を引いた子孫を調べるのは大変な作業になる。
少しでも作業を楽にする方法はないか? 」
玄武
「 ワタシに意見を求めるな 」
衛美
「 玄武… 」
私は玄武の袖を引っ張って、上目遣いに見詰めてみた。
少しだけ両目に涙を溜めてね!
玄武は見下ろす形で私の顔をジッ──と見詰めている。
相手は式神だし、泣き落としは通じないか。
玄武
「 …………はぁ…。
ワタシは衛美に弱いな。
何とかしてみよう 」
衛美
「 玄武!
有り難う!! 」
玄武
「 条件がある 」
衛美
「 条件?
何なの条件って?
何でも言って!
お祖父様の財力と権力で出来るような事なら! 」
鴇胤
「 これ、衛美。
あまり無理を言うんじゃない 」
玄武
「 まともな手料理が食べたい。
カップ麺やレトルトではない手間を掛けて丁寧に作られた真心のこもった美味い手料理だ 」
衛美
「 玄武、この期に及んで未だそんな事── 」
玄武
「 『 何でも 』と言ったのは衛美だぞ。
ワタシはカップ麺もレトルトも食べたくない。
手料理が食べたい 」
衛美
「 今のレトルトは昔と違って格段と美味しくなってるじゃないの!
お湯で温めるのとレンジでチンするレトルトの何が不満だって言うの?
第一、食べるのは玄武じゃなくて私なの!
食事ぐらい私に合わせなさいよ 」
玄武
「 嫌だな。
毎日、レトルト食品ばかりだと飽きる。
ワタシは飽きた 」
衛美
「 種類は沢山あるんだから飽きないでしょうがっ!! 」
鴇胤
「 ………………。
これこれ、落ち着きなさい、衛美。
これを気に料理を習ってみてはどうだ?
毎日、レトルト食品ては流石に不憫ではないか? 」
衛美
「 お祖父様は黙って!
私は自分で作った料理を自分で食べるのは嫌なの!
玄武が私に手間暇掛けて作った料理を食べさせてくれたら問題ないでしょ 」
玄武
「 式神に料理をさせるとは──、とんだ主だな 」
鴇胤
「 …………兎に角だ、美味い手料理であれば良いのだな?
今夜は此方で用意させてもらうとしてだ── 」
厳蒔弓弦
「 私で構わないなら作ります。
1人暮らしが長いので料理は得意です。
玄武の口に合う料理を作れるか分かりませんが、私は衛美の婚約者ですし 」
鴇胤
「 おおっ、そうか、弓弦君。
衛美の代わりに作ってくれるか! 」
衛美
「 弓弦さん、料理が得意なの?
弓弦さんの手料理、私も食べてみたいです! 」
玄武
「 …………店でもないのに男の手料理を食べるのか?
美味いのだろうな? 」
衛美
「 何で上から目線で偉そうなのよ。
然も嫌そうに! 」
厳蒔弓弦
「 今晩の夕飯は私が作ろう。
玄武の口に合うか御世辞抜きで確かめてくれたらいい 」
玄武
「 ほぅ……言ったな?
厳しく採点してやるから覚悟しておけ 」
衛美
「 玄武、態度が大きいわよ… 」
玄武ってば涼しい顔で高級茶と和菓子のお代わりを要求している。
衛美
「 玄武、少しは遠慮しなさいよ…… 」
玄武
「 ──此処に判子を用意した。
ワタシが用意した特別な判子だ。
額に押すと印が付く。
霄囹の血を引く者なら赤い印が付き、無関係ならば緑の印が付く。
これで少しは区別もし易くなるだろう。
その場で赤い印の者だけを捕らえ、搬送先で隔離すればいい 」
衛美
「 “ 捕らえる ” って犯罪者じゃないんだから!
“ 手厚く保護する ” でいいんじゃないの? 」
玄武
「 言い方は何でも構わない。
先ずは敷地内に居る全ての者の額に判子を押す事だな。
試しに判子を押してみろ 」
鴇胤
「 おおっ、そうだな。
よし、折角だ、試してみよう 」
玄武が用意した判子を持ったお祖父様は、伯父さんとお父さんの額に判子を押した。
伯父さんとお父さんの額に付いた印の色は青みがかった緑色。
伯父さんとお父さんはセーフみたい。
伯父さんがお祖父様の額に判子を押すと、青みがかった緑色の印が付いたから、お祖父様はもセーフね。
次は弓弦さんの番。
何かドキドキしちゃう!
◎ 変更しました。
転移陣 ─→ 憑依陣
種類は一杯 ─→ 種類は沢山