♥ 瀬圉家 10 / 本家 10 / 本邸 1 / 応接間 1
──*──*──*── 本邸
──*──*──*── 応接間
お祖父様に電話で呼ばれた私は、実体化した玄武と一緒に本邸の応接間に居る。
私と玄武はソファーに座っている。
私の右横に座っているのは玄武で、玄武の右側に座っているのは弓弦さん。
どうして弓弦さんが、私と玄武と同じソファーに座っているのかは分からない。
当事者は私なのに、何故か玄武が真ん中に座っているのも分からない。
別に真ん中に座りたいわけじゃないけど…。
私のお向かいにあるソファーには、お祖父様,伯父さん,お父さんが座っている。
弓弦さんの前には伯父さん,私の前にはお父さん,玄武の前にはお祖父様が座っている。
お祖父様は険しい顔をして玄武を見詰めているみたい。
見詰めている──っていうよりも睨んでるのかも知れない。
玄武を見ているお祖父様の目力……ガチで怖いかも…。
玄武が実体化してる所為で、思念で会話が出来ないから不便。
玄武は式神なんだから、実体化してても式神なわけだし、思念で会話が出来てもおかしくないと思うんだけど……。
お祖父様,伯父さん,お父さん,弓弦さんが揃ってる前で、玄武と内緒話なんて出来ないわ…。
どうしよう…。
玄武……お祖父様達に変な事を言わなければいいけど……。
当の玄武はというと、高級な湯呑みに注がれた高級煎茶を飲んでいる。
飲み方が無駄に上品なのは平安仕込みなのかしらね?
一緒に出されている和菓子を食べる玄武の姿も絵になるわぁ……。
まぁ、玄武は美丈夫で美麗人だものねぇ。
そりゃ絵にもなるわ…。
平安時代には絶対にいない美成年だもん。
玄武の右隣に座って、和茶を飲んでる弓弦さんも美成年だけど、玄武を見慣れちゃってる私は、弓弦さんを見ても胸がときめいたりはしない。
弓弦さんも随分と絵になるよねぇ。
いけない内容の本が出来上がっちゃうぐらいには、玄武と弓弦のツーショットは絵になる。
玄武
「 ──それで、鴇胤はワタシに何を聞きたい?
祿棠冥晶の事か?
祿棠霄囹の事か?
ワタシの事か? 」
鴇胤
「 ──うむ、全てだ。
玄武…と言ったな。
貴殿は遠古の祖母──瀬圉衛柚に取り憑いていた霊か?
モノノケか? 」
玄武
「 ワタシは霊の類いでもなければ、モノノケの類いでもない。
ワタシは榻萠之眞小呂に生み出された式神だ。
眞小呂は間違いなく平安時代最強の陰陽師だったが無名でな、知る者は誰も居ないだろう。
どちらかと言えば、祿棠霄囹の方が陰陽師としては名が知られているだろう 」
衛美
「 玄武、有名な陰陽師は安倍晴明じゃないの? 」
玄武
「 安倍晴明の名が知られているのは一般人の中だけだ。
陰陽師業界では祿棠霄囹の方が名は知れている。
安倍晴明は確かに天才だったが、ワタシの眞小呂のように自身で様々な術式を作る事は出来なかったからな。
それに関しては霄囹も同じだ。
自身で様々な術式を生み出したワタシの眞小呂の方が陰陽師としては凄い 」
衛美
「 そうなのね…。
眞小呂の作った術式を霄囹が盗んで有名になったって事? 」
玄武
「 そうだ。
眞小呂からは、『 霄囹とは兄弟のように育った唯一無二の親友だ 』と聞いていた。
その兄弟のように育った唯一無二の親友に騙され、裏切られ、術式を盗まれ、眞小呂が手に入れる筈だった地位も名誉も奪われ、霄囹に捨てられたわけだがな。
馬鹿の付く程のお人好しで無欲だった眞小呂は、欲深い霄囹にとって都合が良かったのだろうな 」
衛美
「 私を横目で見ながら言わないでよ!
私は眞小呂じゃないんだからね 」
玄武
「 眞小呂が作った術式を自分が作った術式として陰陽師業界で公表した霄囹は、祿棠家に迎えられ、以後は “ 祿棠霄囹 ” と名を改め、陰陽師業界の新星として死ぬまで君臨する事になる 」
衛美
「 そっか、だから≪ 祿棠家 ≫の冥晶さんは霄囹の子孫になるのね 」
玄武
「 祿棠冥晶は霄囹に憑依陣を使われてしまった。
その所為で冥晶の霊能力は憑依陣に根刮ぎ吸い尽くされてしまった。
冥晶に霊能力が戻る事は2度とない。
憑依陣を使われた事で冥晶は遅かれ早かれ霄囹の傀儡と化してしまう。
息を引き取ったならば早々に火葬してしまう事だ。
骨にしてしまえば傀儡に出来ないからな 」
衛美
「 玄武、死んでしまっても身体があれば傀儡にされるの? 」
玄武
「 肉体があれば、死者を式神にする事も可能だ。
死者を式神にする術式を生み出したのもワタシの眞小呂だ。
凄いだろう! 」
衛美
「 まるで息子自慢ね…。
冥晶さんが霄囹の式神にされたら拙いの? 」
玄武
「 そうだな…。
並の陰陽師や退魔師では歯も立たないだろうな。
あの犬ころもワタシには大した事はないが、強い式神には変わりないしな 」
衛美
「 “ 犬ころ ” じゃなくて、フェンリルね。
──お祖父様、冥晶さんってそんなに強い陰陽師なんですか? 」
鴇胤
「 ──うむ。
御三家の中でもトップに入る強さを誇っていた。
惜しい人を亡くしてしまった… 」
衛美
「 亡くしてしまった──って事は死んじゃったの?? 」
鴇胤
「 あぁ……酷い衰弱ぶりでな、運ばれてから30分後には息を引き取ったそうだ 」
衛美
「 そうなんだ…。
あっ…じゃあ、冥晶さんの遺体はどうなるの? 」
◎ 変更しました。
転移陣 ─→ 憑依陣




