♥ 瀬圉家 9 / 本家 9 / 別邸 / ダイニングキッチン
──*──*──*── 別邸
──*──*──*── ダイニングキッチン
私は別邸の中にあるダイニングキッチンで食べ損なったお昼ご飯を食べていた。
凝った料理なんて作れないから、ベーコンエッグチーズをフライパンを使って作った。
レンジでチンすれば直ぐに食べれる便利なエトウのゴハンの白米を2パック使う。
チンし終わって熱々の2パックを丼の中に入れる。
熱々の白米の上に作ったベーコンエッグチーズを入れて出来上がり。
実に簡単な料理!
これを料理と言って良いのか──って思うけどね。
玄武ったら、『 もっと料理らしい料理が食べたい 』とかって文句を言って来るけど知らんぷり。
自分で作った料理を自分で食べるなんて嫌なんですけど!
誰か私に美味しい手料理を作って食べさせてくれないかな……なんて思ったり。
玄武
『 …………はぁ…。
何故、衛美の趣味が料理でないのか… 』
衛美
「( 玄武、煩い。
いいでしょ、別に!
ベーコンエッグチーズだって立派な料理じゃないのよ。
これでも一応は手間を掛けてるのよ。
フライパンにオリーブオイルを入れて、刻み生姜とすりおろし生姜を炒めて、香りを出してからベーコンを焼くでしょ。
ベーコンの上に割った玉子を入れて、粗びき味塩コショウを振りかけて、ピザ用チーズをふんだんに入れて、パセリと柚子を散らして作った衛美特製スペシャルベーコンエッグチーズなのよ。
私にしては凝ってる料理でしょ? )」
玄武
『 …………はぁ…。
刻み生姜は市販の中瓶に入ってるものだろう。
すりおろし生姜はチューブだし、パセリ,柚子も市販の小瓶に入ってるものだろう。
まぁ…不味くはないが、ワタシは料理らしい料理を食べたい…。
実体化までしたのに… 』
衛美
「( 我が儘言わないで!
あんまり言うと、お夕飯はカップ麺にしちゃうんだから! )」
玄武
『 え〜〜〜〜〜。
カップ麺は嫌だぞ!
カップ麺は非常食ではないか。
ちゃんとした料理が食べたい! 』
衛美
「( うっさい!
文句言うなら実体化して玄武が美味しい料理を作って私に食べさせてくれたら良いのよ!
私に手料理を求めないでちょうだい! )」
玄武
『 ……………はぁ…。
ひもじい…… 』
衛美
「( 次、溜め息吐いたらカップ麺だから! )」
玄武
『 え〜〜〜〜〜。
酷いぞ、衛美! 』
衛美
「( 酷くないわよ!
私はカップ麺でもレトルトでも構わないんだから。
好きだもの )」
玄武
『 ………………ワタシは好きではない… 』
衛美
「( 玄武は式神でしょう?
何で式神が料理に拘るんだか… )」
玄武
『 良いではないか。
式神にも細やかな楽しみは必要だ 』
衛美
「( アンタの細やかな楽しみは食べる事じゃなくて── )」
玄武
『 衛美、電話だ 』
衛美
「( はいはい。
取るわよ。
どうせ本邸からでしょ )」
リビングに入って、ジリリリリリリ──と鳴ってる電話の受話器を取る。
私は「 もしもし、衛美です 」と返事をした。
だって、別邸にある電話が繋がってるのは本邸だけなんだもん。
受話器から聞こえて来たのは、お祖父様の声だった。
私はお祖父様の話を一通り聞いた後、受話器を電話の上に置いた。
玄武
『 誰からだ? 』
衛美
「( お祖父様から。
『 今から本邸に来れるか? 』だって。
『 遅いお昼を食べてる最中だから今直ぐは無理 』って断ったの。
15時頃に別邸を出るって言っといたわ )」
玄武
『 1時間も後ではないか。
1時間も何をする気だ? 』
衛美
「( 念の為に入浴しとくの。
夜まで長引いたら疲れちゃってお風呂どころじゃなくなりそうだし… )」
玄武
『 賢明だな 』
衛美
「( 私が入浴してる間、実体化して見張っててくれる?
誰か来ても私は出れないし )」
玄武
『 任せろ。
追い返してやろう 』
衛美
「( 追い返さなくていいから!
用件は聞いてほしいかな )」
玄武
『 心配するな。
ワタシ流の “ おもてなし ” をしてやる。
ゆっくり入浴してるといい 』
衛美
「( 心配だわぁ〜〜 )」
玄武
「 心配するな。
──どうだ、衛美。
──今時の服にしてみたぞ 」
実体化してくれた玄武は、ちゃんとした日本人の姿になってくれたみたい。
髪と瞳を黒色にしてくれて、身長も170cmぐらい。
服装も今時のイケメンが好んで着るような、格好良くて素敵な洋服を選んでくれてる。
まぁ、其処のソファーの上に置いてある男性用雑誌メンズッションの記事で紹介されてる服なんだけどね…。
誰の忘れ物かしらね。
衛美
「 玄武、素敵過ぎる!
カッコイイ!!
映画もその格好にして! 」
玄武
「 そうか?
衛美が言うならそうしよう 」
衛美
「 ──じゃあ、私はお風呂に入って来るね。
後宜しく〜〜 」
玄武
「 任せるといい 」
実体化してくれた玄武に後の事を任せて、私は洗面脱衣室へ直行した。
洗面脱衣室の奥が浴室になっているんだけど、何時でも入れる温泉になってるの。
≪ 瀬圉家 ≫は敷地内に温泉を持ってるから凄い。
露天風呂専用の離れまで作ってるぐらいに温泉好きみたい。
衛夛は毎日、温泉に入れるんだから羨ましいわぁ。
洗面脱衣室の中は湯冷めしない作りになっていて、一般家庭の洗面脱衣室よりも広くて、伸び伸び着替える事が出来る。
もう逸そ、別邸で暮らしたいかも。
引き込み戸の取っ手を左手で握って、左側へスライドさせてから、私は洗面脱衣室へ入った。