♥ 瀬圉家 7 / 本家 7 / 本邸 6 / 裏庭 2
玄武
「 衛美に危害を加えなければ、ワタシは何もしない。
安心していい 」
厳蒔弓弦
「 …………玄武と言ったな。
『 危害を加えなければ── 』と言ったが、正確にはどのような行動が危害に入るんだ?
出来れば教えてほしい 」
玄武
「 気軽に “ 玄武 ” と呼んで構わないぞ。
弓弦は衛美の婚約者だからな。
特別だぞ 」
厳蒔弓弦
「 …………感謝する… 」
玄武
「 そう緊張するな。
衛美に触れさえしなければ殺しはしない 」
厳蒔弓弦
「 ──殺す!?
穏やかではないな…… 」
玄武
「 当然だ。
今は未だワタシの衛美だ。
衛美は未婚だからな。
現代で言えばプライベートSPとやらか?
ボディーガードのようなものだ 」
厳蒔弓弦
「 …………そうか… 」
玄武
「 衛美に触れたければ、衛美と結婚とやらをして夫婦となる事だ。
それまでは許さない。
衛美に怪我をさせるのも、虐め,暴力の類いも駄目だ。
物理的なものも精神的なものも当然駄目だな。
ワタシには衛美の感情が浮き沈みが手に取るように分かる。
仮に衛美が否定してもワタシを止めても、手元が狂って重傷を負わせてしまうかも知れないな。
命は取らないでやるから安心はしていい。
一生ベッドから離れられなくなるだろうがな 」
衛美
「 玄武!
弓弦さんを脅さないでよ!
婚約を解消されたらどうするの!
責任取って相手を見付けてくれるんでしょうねぇ? 」
玄武
「 ワタシが居る。
必要ない。
子は成せないが、ワタシが子供の姿で守護ってもいい 」
衛美
「 …………そりゃどうも… 」
厳蒔弓弦
「 式を挙げる日が来るかは兎も角、玄武が衛美を守護ってくれるなら、有り難い事だ。
これまで通り、出張には出れそうだな 」
衛美
「 出張って何ですか? 」
厳蒔弓弦
「 退魔師は依頼主から依頼が入ると適任者が日本全国に派遣されるようになっているんだ。
依頼には短期出張と長期出張があって、長期出張の依頼はあまりないが稀にある。
殆んどが厄介な内容だ 」
衛美
「 派遣されるんだ…。
退魔師って大変なんですね…… 」
玄武
「 弓弦、遠古を連れて避難しろ。
一戦交える事になりそうだ 」
衛美
「 どういう事? 」
玄武
「 奴のお出ましだ 」
衛美
「 はぁ?
奴って誰よ?
冥晶さんは子孫なんでしょ? 」
玄武
「 弓弦、遠古と家の中へ入れ 」
厳蒔弓弦
「 分かった。
衛美はいいのか? 」
衛美
「 私が傍に居ないと玄武が暴走しちゃうから此処に居ます 」
厳蒔弓弦
「 暴走するのか? 」
衛美
「 やりたい放題、好き勝手に暴れちゃうって言うか──。
私が居れば玄武は加減してくれますから 」
厳蒔弓弦
「 そうか。
玄武から離れるなよ 」
衛美
「 任せて!
( 玄武とは離れられない関係なんだけどね… )
──玄武、どういう事なの?
ちゃんと教えて! 」
弓弦さんがお祖母様を連れて家の中へ入ったのを確認した玄武は、人形をした真っ白くて薄っぺらい紙人形を四方へ飛ばして結界を張ったみたい。
玄武が結界を張るなんて事、今までなかったのに──。
何かヤッバい展開になりそう。
お母さんが居なくて良かったわ。
玄武
「 憑依陣だ。
奴が来た。
盗人の──霄囹!!!! 」
衛美
「 盗人??
どういう事なの?? 」
?
「 ──盗人 とは酷いなぁ…。
眞小呂はオレに譲渡してくれたんだよ。
じょ・う・と──。
意味、分かるかなぁ? 」
玄武
「 何が譲渡だ、甚だしい!!
ワタシの眞小呂を騙してモノにした事は知っている! 」
?
「 相変わらず暑苦しくてウザイのな、お前は…。
眞小呂は何故お前みたいなウザくて嫉妬深い式神なんかを作ったんだか…。
オレが傍に居たのに…… 」
玄武
「 愛想を尽かされたのが分からないのか。
しつこくて執念深いお前と友人でいる事に疲れたんだ。
眞小呂はワタシに癒しを求めたのだ 」
衛美
「 玄武は癒し系と言うよりトラブルメーカーじゃないの?
私…玄武に癒された事なんて1度もないし… 」
玄武
「 衛美は “ 女の子 ” だからな。
ワタシも弁えているという事だ 」
衛美
「 弁える──って何をよ?
──でもまぁ、今はそんな事いいのよ。
アンタは誰なの?
身体は冥晶さんだけど、中身は違うわよね? 」
祿棠冥晶
「 あぁ…身体ね。
そうだね、身体は確かに祿棠冥晶のだよ。
冥晶には深く眠ってもらっている。
今、祿棠冥晶の意識を乗っ取っている状態になるね 」
衛美
「 霄囹…さん?
どうして出て来たりしたの? 」
霄囹
「 ……さて、何故かな?
妙にムズムズしてしまってね。
あぁ…オレの本体は此処にはないよ。
オレを攻撃したら、祿棠冥晶の身体が壊れるよ。
あははははっ!! 」
衛美
「 本体は別にある──って、態々意識を飛ばして来たって事?? 」
霄囹
「 残念。
意識ではなくて思念体だね。
ふぅん…?
君が眞小呂の転生体なんだ?
転生陣──完成してたんだ…。
オレには不完全な転生陣を残して、自分は完成した転生陣を使うなんて酷いんじゃないのか、眞小呂ぉ〜〜〜 」
衛美
「 私は眞小呂じゃないわよ!
アンタは何か気持ち悪い!!
私は眞小呂じゃないから、アンタと仲良くなる気なんて欠片もないからね! 」
霄囹
「 ──女に興味はないよ。
前世で飽きる程、女で遊んだからさぁ。
眞小呂の生み出した術式は一生遊んで暮らせる程、重宝したよ 」
衛美
「 霄囹って、最低じゃんね。
きっと陸でもない陰陽師だったんでしょうね! 」
◎ 変更しました。
転移陣 ─→ 憑依陣