♥ 下校 2 / 湖世苺公園
──*──*──*── 湖世苺公園
玄武
『 ──此処が例の公園か 』
衛美
「( 湖世苺公園ね。
この先に汚い湖があるのよ。
──ほら、案内図に描いてある )」
玄武
『 確かに大きな湖だな。
深そうだ 』
衛美
「( ちょっと……物騒な事を考えたりしてないでしょうね… )」
玄武
『 まさか… 』
衛美
「( だったら、ちゃんと私の目を見ていいなさいよ! )」
玄武
『 何も考えてない… 』
衛美
「( 本当に、玄武って── )」
境戸託司
「 瀬圉さん、湖があるよ!
随分と大きいな湖だね。
( いーよな〜〜。
湖でボートデート。
…瀬圉さんとボートデートしたい。
──ああ、でも…此処の水は汚いから駄目なんだっけ…… )」
衛美
「 深そうね。
コッシー、いるかも 」
境戸託司
「 コッシー??
──ああ!
湖世苺公園だから、コッシー?
ハハハ、瀬圉さんって、UMAを信じてるの?
可愛いね(////)」
衛美
「 言ってみただけよ…。
湖なんていいのよ。
早く専門店へ行きましょう 」
境戸託司
「 あっ、待って!
瀬圉さん 」
玄武
『 店が見えて来たな 』
衛美
「( オシャレな外装ね。
専門店というよりカフェぽいわ )」
境戸託司
「 うわ〜、アレが苺スイーツの専門店なんだね。
外装から女子向けだね… 」
衛美
「 入るの止める? 」
境戸託司
「 入りたいよ!
折角、此処まで来たんだから、入るよ!
恥ずかしくなんかないよ、俺は!!(////)」
衛美
「 そう…。
なら、入りましょう 」
瀬圉衛美は、その場に境戸託司を残したまま、スタスタと専門店へ向かって歩き出した。
境戸託司
「 あっ、待ってよ、瀬圉さん!!
置いて行くなんて冷たいよ… 」
衛美
「 湖の水よりは冷たくないと思うけど? 」
玄武
『 雨水程度だ 』
衛美
「( 式神に温度が分かるの?? )」
玄武
『 霊能力の強弱によるがな 』
衛美
「( そうなの?
私の霊能力じゃあ、温度は感じられない? )」
玄武
『 実体化していない状態で温度を感じるのは無理だな。
実体化しているなら感じるかも知れないな 』
衛美
「( 何よ、確めた事ないの?
今まではどうだったのよ? )」
玄武
『 意識をしていなかったからな。
分からない 』
衛美
「( なら、今夜辺りにでも試してみましょ )」
玄武
『 何をして試す? 』
衛美
「( そうね、先ずは浴槽で実体化するの。
次に熱湯を肌に掛けるの。
温度を感じるか分かるでしょう?
手っ取り早くていいでしょう? )」
玄武
『 ふむ…なる程な。
良い案だ』
衛美
「( …………言ってはみたけど…火傷しないわよね? )」
玄武
『 それはどうかな?
今夜が楽しみだ 』
衛美
「( …………不安だわ。
他の方法も考えてみる… )」
玄武
『 そうか?
楽しみにしていよう 』
衛美
「( そりゃどうも… )」
境戸託司
「 うわぁ……近くで見ると想像以上にファンシーだね…。
瀬圉さん、中に入る前に写メ、撮っていいかな??
実はさ──……こんな事も有ろうかと、自撮り棒を持参してるんだ。
店をバックに一緒に撮ってもいいかな?? 」
境戸託司は自分の鞄から愛用の自撮り棒を出すと、衛美に見せる。
衛美
「 …………用意が良いのね境戸君は… 」
境戸託司
「 ……俺と写るのは、嫌…かな? 」
衛美
「 別に嫌じゃないわ。
私はカメラに魂を抜かれるなんて思わないもの 」
境戸託司
「 アハハ!
懐かしいな〜、それ!
中学生の頃だったかな?
写真を撮る時、ネタにして友達とふざけてたよ 」
衛美
「 撮るなら早くして 」
境戸託司
「 あっ…うん!
直ぐ撮るよ 」
境戸託司は、愛用の自撮り棒に自分のスマートフォンを取り付けた。
苺の専門店をバックにして、衛美と境戸託司が横一列に並ぶ。
衛美の肩と自分の肩が触れる事のないようにと、境戸託司は、1つ分の拳が入る隙間を開ける。
男性不信で男性恐怖症の衛美への配慮だろう。
境戸託司
「 ──じゃあ、撮るよ、瀬圉さん。
──さんはい、おいちーず☆ 」
カシャッ
衛美
「 ……ちょっと、今の掛け声は何なの? 」
境戸託司
「 え?
ああ、『 おいちーず 』の事?
『 はい、ちーず 』の事だよ。
意味は全然…違うけどね。
── “ 美味しいチーズ ” を縮めて “ おいちーず ” って言うんだ。
俺…チーズが好きだからさ、写真を撮る時の掛け声に使うようにしてるんだ(////)」
衛美
「 そ、そう… 」
境戸託司
「 ──見て、瀬圉さん。
きれいに撮れてるよ。
初めてのツーショットだね(////)」
衛美
「( …………玄武は写ってないわね )」
玄武
『 式神だからな。
実体化すれば画面にも写る 』
衛美
「( そう言えば…、実体化した玄武を写真に撮った事はなかったわね… )」
玄武
『 今夜にでも撮ってみるか? 』
衛美
「( そうね。
いいかも )
境戸君、その画像、私のLINEにも送ってくれるわよね? 」
境戸託司
「 え?
──うん!
勿論だよ!(////)」
衛美
「 写真も撮った事だし、早く中へ入りましょう 」
境戸託司
「 うん…そうだね!
( ああ…本当にデートみたいだよ…。
夢なら覚めないでほしいな〜〜〜。
瀬圉さんと2人きりの時間が、ずっと続けばいいのになぁ…。
両想いになって瀬圉さんの名前を呼びたいよ。
“ 衛美 ” って……近くで呼びたい。
いや、耳元で優しく囁きたいな!! )」
衛美
「 どうしたの、境戸君。
出入口で突っ立っていたら邪魔になるわよ… 」
境戸託司
「 ……え?
あれ??
──うわたぁあっ?!
す、すみません!! 」
我に返った境戸託司は、ぶつかりそうになった3人組の女性に頭を下げて謝った。
衛美
「 ボーとしてるなんて…、具合でも悪いの?
大事を取って帰る?
無理するのは良くないわよ 」
境戸託司
「 瀬圉さん(////)
違うから!
俺の身体は元気まん丸だよ!
具合は頗る快調だから!!
瀬圉さんとスイーツを食べれるのが嬉しくて意識が飛んじゃっただけだよ(////)」
衛美
「 はあ?
意識が飛んだの?
……此処に居て本当に大丈夫なの?? 」
境戸託司
「 大丈夫だよ、瀬圉さん。
俺は男だからね!
ちょっぐくらい意識が飛んだって、どうって事ないよ。
それに、健全たる男子には、よくある事なんだ。
心配は無用だよ☆ 」
衛美
「 そ、そう…なの?
境戸君が其処まで言うなら気にしない事にするわ… 」
境戸託司
「 うん。
有り難う!
それじゃあ、今度こそ、本当に中へ入ろう! 」
衛美
「 そうね 」
衛美と境戸託司は、苺の専門店の自動ドアを抜けて、店の中へ入った。