♥ 下校 1 / 校門 / 待ち合わせ
──*──*──*── 校門
境戸託司
「( うわぁ〜〜〜!!
瀬圉さんからの初LINE!!
う、嬉しい(////)
あぁ…でも、何て素っ気ない内容だろう…。
顔文字や絵文字を使ってる俺が馬鹿みたいだよ……。
瀬圉さんとの間に温度差を感じる……。
いや、でも…この温度差を埋めないと!
Wデートの為に!! )」
玄武
『 ……スマホとやらを見ながらニヤニヤしているな。
…無視して帰るか? 』
衛美
「( ……しないわ。
ちゃんと声は掛けるわよ )
──境戸君、お待たせ 」
境戸託司
「 瀬圉さん!
大丈夫だよ。
瀬圉さんの為なら、何時間でも待つよ! 」
衛美
「 ……待たなくていいから。
境戸君の最寄り駅は何処? 」
境戸託司
「 え?
俺の最寄り駅は──徳条駅だよ。
瀬圉さんの最寄り駅は? 」
衛美
「 善師駅。
反対方向ね 」
境戸託司
「 …………本当だね。
( まさかの反対方向?!
これじゃあ、大学から最寄り駅までの15分しか話せないじゃないか!
……いや、未だLINEがあるし!
仲良くなるチャンスは幾らでも…ある筈!! )」
衛美
「 どうしたの?
駅に行くでしょ 」
境戸託司
「 あ、うん…。
──あのさ、駅に向かう前に何処か寄らない?
今の時期は日も長いし、電車の数も1時間に4本もあるし、寄り道とか──。
い、嫌かな? 」
衛美
「 いいけど…。
何処に寄るつもり? 」
境戸託司
「 ええと…… 」
玄武
『 考えてないのか。
思い付きで言うとは… 』
衛美
「 そう言えば、近くに公園があったわね?
湖世苺公園──だったかしら? 」
境戸託司
「 え?
ああ、うん。
確かにあるね。
大きな湖があって、ボート漕ぎが出来るんだよね。
桜の咲く季節にはカップルがボートデートしてる 」
衛美
「 湖の水は濁っていて汚いのに…人気スポットなのが不思議だわ 」
境戸託司
「 桜が綺麗だからね…。
ボートに乗らなくても花見が出来る場所もあるし…。
夜はライトアップされるから夜桜が綺麗だよ。
夜ならボートに乗っても湖の水の濁りも気にならないと思うし、ロマンチックだよ 」
衛美
「 そうかしら?
夜だろうと昼間だろうと湖の水が汚い事には変わらないわ。
夏には蛍を湖に放し飼いにするみたいだけど、蛍が可哀想…。
湖には蛍の死骸が浮いているし、ロマンチックとは言えないわ 」
境戸託司
「 …………た、確かに蛍は可哀想だね。
…綺麗な水辺でしか生きられないみたいだし… 」
衛美
「 ボートに乗って何が楽しいのかしら?
水が汚いのに…。
芽生えるものも芽生えないと思うわ。
デートコースとしては下の下ね 」
境戸託司
「 …………手厳しいね…瀬圉さん… 」
衛美
「 ボートデートは嫌いなの 」
境戸託司
「 そ、そうなんだ?
…瀬圉さんはボートデートした事があるの??
そんな相手がいたんだね…。
──何か先を越されたみたいで悔しいな… 」
衛美
「 デートする相手なんていた事ないわ。
湖の水を見たら、ボートに乗らなくても幻滅するでしょう? 」
境戸託司
「 え?
あれ、いないの?? 」
衛美
「 境戸君にとっても湖の水は、どうでもいい派なのね…。
気が合わなくて残念だわ 」
境戸託司
「( え〜〜〜……… )
……水が綺麗な場所でならボートデートしてもいい? 」
衛美
「 そうね。
どうせボートに乗るなら、水の綺麗な池や湖がいいわ。
誘われたボートデートの水が汚かったら、気持ちも冷めるわ。
この人にとって、私はその程度だったのね──ってね 」
境戸託司
「 …………そ、そうなんだ…。
ボートデートには水の綺麗さも大事なんだね… 」
衛美
「 嫌われても構わないなら、水に拘らなくてもいいと思うわ 」
境戸託司
「 …………覚えておくよ 」
衛美
「 そう?
気にしない女性の方が多いかもね。
ボートの話は終わるけど──、湖世苺公園にはビニールハウスがあるわよね 」
境戸託司
「 ああ!
あるね。
年中無休で苺を育ててる──って。
瀬圉さん、もしかして? 」
衛美
「 その “ もしかして ” よ。
苺のスイーツ専門店が公園の中にあるでしょ? 」
境戸託司
「 うん、確かにあるね!
其処に寄りたい? 」
衛美
「 どうせならね。
いい? 」
境戸託司
「 ──勿論だよ!!
男が1人で入るのに恥ずかしい外装だから、諦めてたんだよ(////)
初めて行く相手が瀬圉さんで嬉しいよ(////)」
衛美
「 そう?
……変わってるのね 」
境戸託司
「( 駅と反対方向だから寄る機会はなかったけど…行けてラッキーだな〜。
後で宮島に自慢してやろう!
写メって見せびらかせてやらないと!! )
──行こう、瀬圉さん! 」
衛美
「 張り切っちゃって…。
そんなに嬉しいの? 」
境戸託司
「 嬉しいよ!
今なら、空だって飛べそうだよ!! 」
衛美
「 ……そりゃ良かったわ… 」
玄武
『 吹っ飛ばしてみよう 』
衛美
「( 止めてあげて!
死んじゃうから。
……それに、不安の原因が分からないままになっちゃうでしょう? )」
玄武
『 死にはしない。
今まで衛美に危害を加えた者は生きているだろう 』
衛美
「( そうだけど…。
兎に角、今は余計な事しないで )」
玄武
『 苺スイーツに免じてな 』
衛美
「( ……ありがと )」