♥ 大学 1 / 昼休み 1 / お誘い
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「 ──瀬圉さん!! 」
玄武
『 来たぞ、衛美。
懲りない男だ 』
衛美
「( …………日本語が通じないのかしら?? )」
玄武
『 此処は大学なのだろう?
十分通じていると思うが? 』
衛美
「( 何処がよ…。
“ 近付くな ” “ 構うな ” “ 触るな ” って、確かに言ったわよ? )」
玄武
『 余程、衛美と “ 友達 ” とやらになりたいのかもな 』
衛美
「( そこだけ強調しないで… )」
境戸託司
「 瀬圉さん!
昼食一緒に── 」
衛美
「 食べない 」
境戸託司
「 瀬圉さん……俺、諦めないよ。
諦めたら其処で終ってしまうからね。
瀬圉さんと友達になりたい俺の気持ちは本物だよ。
だから、諦めたりしないんだ!!
友達になってくれるまで俺は毎日、瀬圉さんに声を掛けるよ。
一緒に登校したいし、一緒に下校したい。
お昼も一緒に食べたいから、昼食にも誘う!
俺、欲張りなんだ。
覚悟してよね 」
玄武
『 転んでもタダでは起きない男だな 』
衛美
「( 私は拒否してるっていうのに!
これじゃあ、ストーカーじゃないのよ… )」
玄武
『 友達になってやったらどうだ?
襲われそうになったらワタシが守護るし 』
衛美
「( 加減が出来ないでしょ! )」
玄武
『 加減する必要はない。
衛美に危害を加える者は誰であろうと排除する。
例外はない 』
衛美
「( …………嫌よ… )」
境戸託司
「 瀬圉さん、今朝の事…気にしてる?
安心して、瀬圉さんには触らないように気を付ける。
瀬圉さんが俺に触ってくれるまで、俺は待つよ。
昔から待つのは得意なんだ(////)」
衛美
「( ………… )」
玄武
『 衛美、どうした? 』
衛美
「( …………分からない。
分からないけど…今、何か…… )
…………いいわ。
確めてあげる… 」
境戸託司
「 え? 」
衛美
「 境戸君が、友達になっても大丈夫な人なのか──って事。
今から宜しく… 」
境戸託司
「 瀬圉さん!!
俺の方こそ、宜しく!
お試し期間って所かな?
それでも嬉しいよ(////)
あっ、今は苗字呼びだけど、友達になったら下の名前で呼んでもいいかな? 」
衛美
「 …………なれたら、ね 」
境戸託司
「 有り難う!
瀬圉さん 」
衛美
「( …………本当に何だったのかしら?
さっきの……一瞬感じたのは… )」
玄武
『 それを確める為に──か? 』
衛美
「( だって、気になるじゃない?
このまま放っておけないもの……。
玄武、私を守護ってね… )」
玄武
『 ──衛美!!
ああ、勿論だ。
安心して、不安要素を確めるといい 』
衛美
「( ……言っとくけど、ちゃんと手加減してよ! )」
玄武
『 ………………分かっている 』
衛美
「( 今の間は何?
ちゃんと解ってるんでしょうねぇ? )」
玄武
『 ……勿論だ 』
衛美
「( 何で目を逸らすのよ!
あの時の事、忘れたなんて言わせないわよ! )」
玄武
『 ……あの時??
──はて?
何かあったか? 』
衛美
「( ……怒るわよ。
有り過ぎて分からないのね?
なら、思い出させてあげる!
私が小学生の低学年だった時よ。
友達のF子ちゃんと私は、3人のクラスメイトの女子に校舎の裏へ連れて行かれたわ。
覚えてる? )」
玄武
『 …はて? 』
衛美
「( ──くっ、惚けるつもり?
──猫じゃらしを手に持ったR恵とN子とY子の3人に言われたの。
笑いながら『 ズボンとパンツを下ろせ 』って。
F子ちゃんは泣いてたし、私もわけが分からない。
逃げれないようにって、3人に囲まれて、追い込まれて…2人でズボンに手を掛けたら──…どうなったか覚えてるでしょう? )」
玄武
『 …さあ? 』
衛美
「( 覚えてないって言うの?
あんな酷い事をしといて! )」
玄武
『 酷い?
ワタシは何も酷い事はしていない。
寧ろ酷い事をしのは、あの3人だ。
衛美を辱しめようとした。
ワタシは悪意の塊を砕いただけだ 』
衛美
「( 3人の子宮を破裂させといて何、言ってんの!!
3人共、大手術をして子宮を摘出したのよ!
あの歳でよ。
小学生よ、低学年でよ!! )」
玄武
『 それが?
ワタシには関係無い。
ワタシは衛美の〈 守護り手 〉だ。
ワタシはワタシの役目を果たしたに過ぎない 』
衛美
「( ……やり過ぎ、なのよ… )」
玄武
『 当然の報いだ。
衛美を辱しめて、あの程度で済んだ事を感謝されてもいいぐらいだ。
生き長らえているあの3人は今もこの空の下で、のうのうと人生を謳歌しているのだろう?
ワタシは今でも生かしてしまった事が心残りだ… 』
衛美
「( 好きな人と巡り会えて、付き合って、結婚しても、子宮がなきゃ…愛してる人の子供は産めないのよ? )」
玄武
『 そうだな。
衛美を辱しめようとした当時の自分達の愚行を悔やんで苦しむのだろうな?
物足りないが、いいのではないか? 』
衛美
「( 良くないわよ!! )」
玄武
『 ワタシは…あの時、衛美がワタシに助けを求めてくれた事が心の底から嬉しかった。
衛美に必要とされていると感じたからだ。
つい、感窮まってはしゃいでしまった(////)』
衛美
「( はしゃいで、あの惨事はないでしょ!
F子ちゃんは3人が悲鳴を挙げて倒れたのを見て、お漏らししたまま気を失っちゃうし!!
私…大変だったんだからね!! )」
玄武
『 …そう言えば、あの後、大勢の大人が来ていたな 』
衛美
「( そりゃ、あんな痛ましい事件が起きれば、誰も知らん顔なんて出来ないわよ……。
大体、子宮の破裂は妊婦さんに起こるものなのよ?
妊娠も出来ない子供も身籠れない小学生の低学年の女子児童の3人が、立て続けに同じ症状で倒れるなんて──普通じゃ有り得ない事よ。
騒ぎになるわよ!
ならない方がどうかしてるわ… )」
玄武
『 衛美……。
今回はワタシを信じろ。
ワタシも過去の行いから学んだ。
大丈夫だ 』
衛美
「( …………いいわ。
今は、信じてあげる )
──境戸君は何処でランチしたいの? 」
境戸託司
「 ──え? 」
衛美
「 『 え? 』じゃなくて… 」
境戸託司
「 瀬圉さんは何処で食べたいの?
俺は瀬圉さんに合わせたいな(////)」
衛美
「 ……そう、なの?
変わってるわね…。
──そうね…今日は天気が良いから中庭のテラスで食べたい気分…かも 」
境戸託司
「 中庭のテラスだね。
何処に座ろうか?
日影が強いから、日蔭のテラスにしようか? 」
玄武
『 ……衛美、今のが駄洒落か? 』
衛美
「( 違うと思うわ…。
日影は日差しの事よ。
別に駄洒落を言ったわけじゃないと思うけど? )」
玄武
『 そうか… 』
衛美
「 ねえ、境戸君。
今のって、駄洒落なの? 」
境戸託司
「 え?
何がだい? 」
衛美
「 『 日影が強いから、日蔭のテラスで 』って言ったでしょう?
駄洒落を言ったの?? 」
境戸託司
「 えぇぇっ?!
駄洒落を言ったつもりはないよ(////)
けど…、そう聞こえちゃったんだね(////)」
衛美
「( 違うみたいよ )」
玄武
『 ノリが悪いな 』
衛美
「( …チャラいよりマシよ )
中庭に行きましょう。
境戸君、手ぶらだけど何か買うの? 」
境戸託司
「 え?
あ…買わないよ。
友達が弁当を作って来てくれてて──、食堂で受け取る事になってるんだ 」
衛美
「 手作りのお弁当?
モテるのね、境戸君って。
その子と一緒に食べなくていいの? 」
境戸託司
「 瀬圉さん(////)
勘違いしないでほしいんだけど…、弁当を作ってくれるのは女の子じゃないから(////)」
衛美
「 ……は?
異性じゃないの?
──同性?!
境戸君って、恋愛対象は同せ── 」
境戸託司
「 ち、違うから(////)
有り得ないから(////)
恋愛対象はちゃんと女の子だから(////)
そっちの勘違いしないで!!
気になってる子に言われたら凹むよ… 」
衛美
「 ……悪かったわ。
料理男子と仲良いの? 」
境戸託司
「 うん…。
『 彼女に作ってあげてる 』って言ってたよ。
俺とは幼稚園からの幼馴染みでさ、序に作ってくれてるんだ。
──高校の時、女子が俺に弁当を作って来てくれてたんだけど…とてもじゃないけど、食べきれなくて大変だったんだ。
それを見兼ねた友達が── 料理好きな事もあってね──作ってくれるようになったんだよ。
いい奴なんだ(////)」
衛美
「 苦労してたのね… 」
境戸託司
「 女子の手作り弁当のお蔭で太っちゃってさ(////)
体型を戻すのにも苦労したよ(////)
大学デビューに合わせてダイエットを始めたんだけど、間に合ってホッとしてるんだ 」
衛美
「 境戸君は太り易い体質なの? 」
境戸託司
「 う〜ん……どうかな?
そんな事なかったと思うよ。
急激に太り出したのは、女子が差し入れてくれた弁当を食べ始めてからだし… 」
衛美
「 良かったわね。
体型が戻って 」
境戸託司
「 本当にね!
瀬圉さんは何を食べるの?
そのバスケットは…… 」
衛美
「 作って来たの。
ベーグルサンド 」
境戸託司
「 べ…ベーグルサンド!?
朝からベーグルサンドを作ったの?!
凄いね!
瀬圉さんも料理が好きなの? 」
衛美
「 違うわ。
ベーグルパンは母が焼いたの。
パン作りが趣味なのよ。
私は冷蔵庫に入ってる食材を選んで挟んだだけ 」
境戸託司
「 いいな〜〜…瀬圉さんの手作りベーグルサンド!
俺も食べたいな〜〜 」
衛美
「 あげないわよ。
料理好きの友達に作ってもらったらどう? 」
境戸託司
「 宮島作ってくれるかな…。
彼奴の彼女、米派だからなぁ…。
難しいかも知れないけど… 」
──*──*──*── 中庭
──*──*──*── テラス
?
「 おーい!
託司!
弁当、持って来たぞーー! 」
境戸託司
「 あっ、宮島!
サンキューな 」
衛美
「( …………第3者から見ると、絵になるカップルに見えるわ…。
イケメン過ぎるのも問題ね… )」
玄武
『 あの目を見る限り…だが、彼女持ちか怪しいな 』
衛美
「( 目を見ただけで分かるの? )」
玄武
『 伊達に千年以上も生きてない。
様々な男を見続けて(き)来た経験だな。
宮島とやらは十中八九、境戸託司を好いている。
恋愛視点とやらでな 』
衛美
「( …………教えてあげた方がいいのかしら? )」
玄武
『 教える必要はない。
このまま知らぬ方が面白そうだ 』
衛美
「( 悪い式神さんね… )」