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♥ これは式神  作者: 雪*苺
四日目 / 木曜日 4月25日
20/104

♥ 登校中 3 / in玄武


玄武

えい……さわらせなかった? 』


衛美

「( いやよ!

   また酷い目に遭わせる気だったんでしょ!

   けい君をどうしようとしてたの? )」


玄武

『 どうも… 』


衛美

「( げん!! )」


玄武

『 ………………言わないと駄目か? 』


衛美

「( 大体の想像は付くけど、教えなさいよ )」


玄武

『 言いたくない 』


衛美

「( げん!!

   私にも知る権利はある筈よ )」


玄武

『 …怒るだろう? 』


衛美

「( 怒るわよ。

   内容によるけど…… )」


玄武

『 ………………きらいにならないか? 』


衛美

「( 私がげんを??

   ……なれないと思うけど? )」


玄武

『 ……臓器を体内で破裂させようかと… 』


衛美

「( はぁあ? )」


玄武

えいは、騒ぎになると困るのだろう?

  ならば騒ぎにならぬようにと思っての配慮だ。

  体内で臓器を破裂させれば、壁も天井も窓ガラスなども壊れたり、汚れたりしないだろう?

  エコな方法だ。

  ああ…でも、口から少量の血が出るだろうから廊下は汚れてしまうな…… 』


衛美

「( ……体内で内臓を破裂させる──って…。

   れいのうりょくまで出来るっていうの?! )」


玄武

『 式神は万能ではないが、大抵の事は出来る。

  ワタシは特別だからな、人間の臓器を破裂させるなどは朝飯前だ 』


衛美

「( ……なんて…事なの… )」


玄武

『 霊能番組で見るだろう?

  手をかざした霊能者が空気中に遊在するれいを他人の身体からだへ注ぐ場面を。

  こうとか言ったか? 』


衛美

「( ああ…そう言えば見るわね。

   気分の悪い人や痛みを訴える人に手をかざしたり、手で擦ったり、さわったりして、元気にさせる人。

   名前は覚えてないけど…。

   確か…その人は気功じゃなくて “ ()()()()() ” って言ってたわ。

   あれって、自分のれいのうりょくを使うんじゃないの?

   陰陽師はかみにんぎょうれいのうりょくそそいで式神を馬車馬のようにコキ使ってたのよね? )」


玄武

『 ……コキ使っていたわけではないが、身の回りの世話や雑務をさせていた事は事実だな。

  人件費も掛からず、食費も掛からず、術者には従順だからな。

  ──確かに自分のれいのうりょくを他人の身体からだへ当てたり、そそいだりしている者もいるが、あれば当人の勘違いだ 』


衛美

「( 勘違い??

   どういう事? )」


玄武

そもそも、自分のれいのうりょくを他人の身体からだに当てたり,入れたする事は出来ない。

  れいのうりょくの使い過ぎで、身体からだが重くなったり、えらくなったりするのは事実だがな。

  実際にはだ、この空気中に遊在しているれいれいなどと呼ばれているしんぶつお力(エネルギー)であるしんりきを動かす為に、自分のれいのうりょくを使っているに過ぎない。

  目に見えない不思議な力を目に見えないれいのうりょくを使い動かすのだから、疲れて当然だな 』


衛美

「( れいのうりょくりきんで溜めてから使う人もいるわよね?

   あれも同じなの? )」


玄武

『 同じだ。

  普段のれいのうりょくは垂れ流し状態だ。

  その垂れ流されているれいのうりょくを1ヵ所に集めて使うのはきわめて賢い方法だ。

  誉めてもいい 』


衛美

「( ふーん…そう、なんだ。

   …………垂れ流しになってるって事は、私のれいのうりょくもなの? )」


玄武

えいれいのうりょくは、ワタシに流れているぞ。

  えいれいのうりょくの貯蔵庫になっている──と言えばわかるか? 』


衛美

「( 貯蔵庫…ねぇ )」


玄武

『 貯蔵しているえいれいのうりょくを使う時はれいのうりきに変換して使っている。

  れいのうりょくではないから、他人の身体からだの中をいじる事もやすく出来る──というわけだ 』


衛美

「( そ、そうなの……。

   嬉しそうな顔して話さないでほしいんだけど… )」


玄武

『 血液を沸騰させる事も出来る。

  血管を縮めたり広げたり、脳をゲル状に溶かす事も、臓器を腐らせる事も出来るぞ。

  再生不可能に骨を粉砕させる事も出来る。

  なんでも出来るぞ。

  ──吹っ飛ばすのもいいが、次からは体内で済まるか? 』


衛美

「( だ・か・ら、嬉しそうに言わないで!

   お願いだから )」


玄武

えいに迷惑は掛からない 』


衛美

「( そーゆう問題じゃなくて……。

   兎に角、そういう物騒な事も “ 禁止 ” だからっ!! )」


玄武

『 え〜〜〜…。

  ワタシはえいの為に… 』


衛美

「( 正当化する為に私を使うのはめて! )」


玄武

『 してない… 』


衛美

「( 認めなさいよ!

   私がなにも知らないとでも思ってるの??

   小学生じゃないんだから、誤魔化されないわよ )」


玄武

『 誤魔化してない… 』


衛美

「( 肩が触れただけとか、手が触れただけとか…そういう些細な事で、私のれいのうりょくを使うのはめて! )」


玄武

『 無理だ。

  それは出来ない 』


衛美

「( どうしてよ……。

   ちょっとよ?

   ほんの少し!

   ガッツリさわったわけでもないのよ?

   どうして駄目なの?? )」


玄武

『 契約…だからな 』


衛美

「( どういう事?

   なんなの契約って… )」


玄武

『 ワタシを実体化させたがったむすめがいてな…、その願いを叶える為に交わしたものだ 』


衛美

「( げんの実体化を望んだ子がいたの? )」


玄武

『 ああ…。

  契約を交わしたからな……、むすめが望むたびにワタシは実体化しなければならなくなった──というわけだ 』


衛美

「( それで──、今に至ってるって事? )」


玄武

『 そうなる 』


衛美

「( ……げんは実体化したくないの? )」


玄武

『 そうだった──というべきだな。

  当時は慣れなかった事もあり、不便だったからな。

  現在はそうでもない。

  慣れてしまえば大した問題ではないからな 』


衛美

「( 問題はあるのね… )」


玄武

『 少なからずな。

  何事にも問題は付いて回る。

  実体化する為には、貯蓄してある大量のれいのうりょくを使わなければならない。

  変換したれいのうりきを使うが、それだけでは足りない。

  実体化すると、維持させなければならない。

  その為に更に大量のれいのうりょくが必要となる。

  尽きないれいのうりょくがあればいいが、尽きないれいのうりょくない。

  かでれいのうりょくを調達しようにも不可能に近い。

  ──でだ、むすめとワタシは契約を交わした。

  契約の恩恵を受ける事によって、実体化する為に必要なれいのうりょくが、ごく少量で事足りるようになった。

  実体化を維持させるにもだ。

  貯蓄しているれいのうりょくが、ゴッソリ消化されなくなり、ワタシは嬉しい限りだ 』


衛美

「( …………そんなに実体化するのって大変だったの? )」


玄武

『 ワタシは並の式神ではないからな。

  余計にれいのうりょくの消費が激しい。

  それにむすめは──自分に見えているワタシの姿を他の人間にも見せたいとも言っていたしな…』


衛美

「( ???

   ──えと、それじゃあ…今、私に見えているげんの姿は、その子の目に見えていた姿…なの? )」


玄武

『 そうなる。

  ワタシ自身も実体化をして、鏡なるものを見るまでは、容姿の把握はしていなかった 』


衛美

「( そう…よね。

   実体化すると鏡にも映るものね。

   初めて自分の容姿を見た時は、どんな感じだったの?

   どう思ったの? )」


玄武

『 「 ああ、これが… 」と思ったぐらいだ 』


衛美

「( は?

   それだけ?? )」


玄武

『 そう──…いや、そうでもないか。

  「 ぎんはつだな 」とも思ったな 』


衛美

「( ……そ、そう?

   随分と冷静な反応だったのね… )」


玄武

『 日本人は黒髪で黒眼なのに対し、ワタシはぎんはつがんだった。

  当時の人間の背と比べてもワタシの背は高かった。

  人前に出る時は日本人らしく黒髪,黒眼に変えていたし、背丈も必要に応じて変えていた 』


衛美

「( でも、どうして日本人離れした容姿を想像したのかしら?? )」


玄武

『 月とすっぽんだ 』


衛美

「( …は?

   なに?? )」


玄武

『 ああ…月と亀の間違いだ 』


衛美

「( ますます分からないんだけど…… )」


玄武

『 ワタシはじんいっしんであるげんだ。

  ──実際はかみではないからじんと呼ぶのも、いっしんと数えるのも間違いなのだが……今は横に置いとくとしてだ──、人間が思い描いたげんの姿は亀と蛇が合わさった姿だろう?

 「 色的にも容姿的にも月を象徴しているように見えた 」と言っていた 』


衛美

「( ……それでぎんぱつがんってわけなのね。

   ちょっと、その子と会ってみたかったかも!! )」


玄武

『 千年以上も時が過ぎているからな。

  とっくにかの誰かに生まれ変わっていると思うぞ 』


衛美

「( 記憶を持って生まれ変わっていたりしないかしら? )」


玄武

『 どうかな。

  それはしんぶつが必要に応じてなされる事だ。

  ワタシには検討も付かない 』


衛美

「( そっか……残念かも。

   ──現代に生まれ変わっていて、げんを見る事が出来るくらいれいのうりょくが強かったら──、今のげんを見てどう思うだろうね。

   げんられている私になにを思うのかな…… )」


玄武

えい……考えるな。

  会えない方がいい。

  会えない方が幸せだぞ 』


衛美

「( …………そう、なの? )」


玄武

『 そういうものだ。

  過去は過去でしかない。

  後戻りも変える事も出来ない。

  嘆かれてもワタシにはなにも出来ない…。

  出来る事ならば、出会わないでほしいとワタシは願う 』


衛美

「( げん……。

   ──じゃあ、この話はでお仕舞いね!

   話がかなり脱線しちゃったから戻すけど──って、なんの話をしてたんだっけ?? )」


玄武

『 思い出さなくてもいいぞ 』


衛美

「( はあ?!

   ちゃんと思いだすわよ!!

   昼休み迄には思い出すから、覚悟しときなさいよ!! )」


玄武

『 …………………………はあ… 』


衛美

「( なんで溜め息くのよ?? )」

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