♥ 瀬圉家 1 / 本家 1
──*──*──*── 本家
衛美
「 相変わらず、大きな屋敷ね〜! 」
本家の土地は、かなり広い。
住宅の10件家分の敷地の別邸が東西北の位置に1ヵ所にずつ建っていて、その左右には大きな倉が1つずつ建っているし別邸の後ろには離れまである。
3ヵ所の別邸の真ん中には時代を感じさせる本邸がある。
本邸の大きさは、3ヵ所の別邸を合わせた敷地面積よりも広い。
時代を感じる大きく立派な倉なんて本邸の後ろに4つも建っている。
離れに至っては本邸の左右に2件も建っている。
然も本邸は池に囲まれていて本邸へ行く為には、これまた時代を感じる厳かな橋を渡らなければいけない。
橋は正面に1つしかない。
橋に行き着く前には、立派な寺社が建っている。
つまり寺社の後ろに本邸と別邸があるって事。
≪ 瀬圉寺社 ≫は寺と神社が1つになっている。
今日、日本では神棚と佛檀と別々に祭っているが、以前は一緒に祭っていたものを実は分離したのである────と教わった。
平田新道の影響を多分に受け、王政復古と同時に、新道復古、廃佛毀釈を唱え、明治政府が樹立するや、江戸時代の佛教中心の宗教政策を改め、新道中心主義を採用して、明治元年3月祭政一致、神祇官再興の布告が発せられ、続いて神佛分離、国民総氏子の布告が発せられて、一大宗教改革がなされて、今日に至ったものである────と教わった。
そんなわけで、宗教改革が行われる前の在り方で寺と神社を1つにしているのだとか。
≪ 蒔邑寺社 ≫も同じ。
≪ 瀬圉寺社 ≫の右横には、実践哲学の勉強を學べる建物が建っている。
“ 実践哲学を學ぶ場所 ” という事で學舎と呼ばれている。
私も衛夛も、両親に連れられて行ってたっけ。
中学生になってからは、何処かの部活に必ず入部して部活動に励まないといけなかったから、私の方はスッカリ御無沙汰になってしまったけど……。
本家の養子となった衛夛は毎日、欠かさずに勉強会に参会していたのかも知れない。
衛夛は私と違って頭も良いから、勉強会の内容にも付いていけると思う。
佛教大学の教授や佛教学者にも理解するのが難しい内容らしいから……。
衛夛
「 衛美、利樹さんが出て来たよ! 」
衛夛に声を掛けられた衛美は學舎の玄関辺りへ目を向ける。
學舎の玄関から出て来たのは、長身の若者だ。
長身の若者は誰かと親し気に話をしていた。
離れた場所から見ても、彼の背が高い事がよく分かる。
衛美
「 利樹さん……リッちゃん。
…………やっぱりカッコいい(////)
ねぇねぇ、数年見ない内に前よりも男前になったんじゃないの!! 」
衛夛
「 そうか?
変わらないと思うけどな〜。
オレ、しょっちゅう此処で顔合わせるしな〜 」
衛美
「 毎日見てるから分からないんだよ!
ねえ、未
私も大学生になったんだし、リッちゃんと付き合っても犯罪にならないと思うの 」
衛夛
「 諦めてなかったの? 」
衛美
「 当然でしょ!
『 女子大生になったらね 』って言われただけだし。
約束通
衛夛
「 ……………………遠回しに “ 断られた ” って思わないの?
利
衛美
「 はあ?
どうして?
付き合えないなら、ちゃんと付き合えない理由を言って断ればいいじゃない。
何
自分が悪者になりたくないから?? 」
衛夛
「 …………オレに聞かれても分からないよ… 」
衛美
「 いいよ、もう!
リッちゃんに言って来
衛夛
「 あ〜〜〜……うん…断られてもドンマイな? 」
衛美
「 “ 断られる ” って決め付けないでよ!! 」
衛
衛夛
「 …………………… “ 自覚がない ” ってのは恐いねぇ… 」