表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/101

いさかい

「天使……スフレ」

「っすよ。あいつは天使っす。それも、ヨハネスん時に見た顔っすね。名前は確か――」

「ラファエルだ。ゴミクズどもが」


 アゼル、もとい、ラファエルが俺たちに手を向ける。

 まばゆい光と頭が痛くなる音が響き、気がつけば吹き飛ばされていた。

 マジかこいつ――

 背中を木に強か打ち付けながらも、俺は立ち上がった。


「俺は……地獄の王だぞ……! こんな、こんなことでやられるってのか? ああ?」

「ご主人、基本的に自分より強い相手にはいつも大体ぼろ負けっす」

「るせえ」

「地獄の王、か。誰が決めた? ゴミクズども。貴様ら纏めて殺してやろう。消毒しなくては」


 相当な力を持っているのは間違いないし、こいつは悪魔を殺せる。

 今まずいのは、ツバキ、レーザム、ネラをこいつに殺されること。いいや違う。

 こいつ、主語に何度か我々と言っていた。複数人いるのか。なんだこのくそ悪魔ども。

 ああいや、天使か。


「天使が居るとは思いもよらなかった。だが、神様の存在なんて、信じられんな」

「居られる。神は今も我々の行動を見て下さっている。だからこそ、薄汚いゴミである貴様らを排除するのが私たちの仕事だ。私たちは神の戦士なのだから」

「ああそうかい。だがな、そのゴミを創り出したのもまた神だぞ。どうだ? この矛盾」

「考えない。神は常に正しい。間違えは全くない。つまり、私は正しく生まれた貴様らを正しく始末するのが仕事だ。だが……面倒だ。貴様らの道具もあると聞く――」


 その時、止めておけばいいのに、暗部兵士がラファエルの腹に短刀で一撃加えた。

 白い服に赤い染みが広がっていく。


「汚らわしい、人間風情が」


 ラファエルは短剣を抜くと、暗部兵士の頭を掴み、また焼ききる。聖なる炎というか、光で。

 何のことはないが……こいつ、こいつも、普通の武器では死なないのか。

 やれやれまずいことになった。聖冥の剣も知っているのなら、どうする?

 どのみちこのみち、剣なしでも殺せるあいつの方が何枚か上手だ。


「人間も殺すのか。人の保護者だろ。神の祝福は、ご加護は」

「知った、ことか。神の愛を金で買おうとする連中だっているんだ。汚らわしい。人は全く不完全なものだ。なのに、神の御寵愛を受けている。祈れば許され、神の御胸に抱かれる。我々が守る必要もない。良き人間ならば神のみもとに行くだろう」

「それで、勇者という器に乗り移って世直しを始めるのか? 手始めに、悪魔の武器が氾濫する帝国を国ごと焼き払うか」

「それも良い。しかし、勘違いもあるな。勇者は私たちの器になるために生まれたんだ。天使の武器を使え、福音に守られる特別な人間。その対価として、我々の器になってもらう」

「なるほど。勇者でも厄介だってのに、天使かよ。しかもお前ら、弱点もないんだろう?」

「神は自分に似せ、人間を作る前に完璧な天使を作った。貴様が持っている聖冥の剣、あれは天使の物だ」

「なら、お前も殺せるのか。それは良いこと聞いた。だが、残念なことに今は」


 俺は黙示録を取り出し、ページを捲って掲げる。

 時を同じくして、スフレが漆黒の翼を広げた。


「……貴様」


 ラファエルはスフレに何か言いたげだったが、知ったことじゃない。


「アポカリプト」


 今はもう、逃げるしかないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ