ラジオ・コントロール・ガール①
季節は移り変わり、梅雨。
髪の毛が纏まらない季節。髪の毛がぴょんとはねて、ヒステリックが溜まりやすい季節。洗濯物が乾かなくていらいらする季節になった。
今年の私はなぜか乾かない洗濯物を見るとドライヤで乾かしたくなった。洗濯物の量が多い時はコインランドリィに行くようになった。ママと二人で暮らす狭いアパートには乾燥機がないからだ。ママは洗濯に励む私を見て、不審がった。「なぁに、失恋でもした?」
私は笑って誤魔化したけど、意味分からん、って考えないでいたけれど、どこかでしっかりと感じていた。
感じている。
私の心臓に縫い付けられたギアから、願いを感じている。
願い。
……あなたは何を、願っていたの?
朝には久しぶりに晴れていた梅雨空が放課後には自らの使命を思い出したかのように天に灰色の雲を作り始めていた。
その様子を私は頬杖付いてぼうっと眺めていた。
「どうしたの?」ヨウコが私の机にお尻を乗せて聞く。「黄昏れちゃってさ」
「別に黄昏れてなんてないし、」私はニッと笑顔を作って鞄を持ち席を立った。「さ、行こ、ってシキは?」
「風紀委員の会同があるんだって、だから二人は先に行ってだって、」ヨウコは絶品の笑顔を作って私の手を触る。「だから今日はミャコちゃんと二人きりだね、あはっ」
「シキが二人で先に行ってなんて言ったの?」私はヨウコを疑う目をする。「信じられないな」
「たまには二人きりになりたいな、」ヨウコは私に身を寄せて来て、猫撫で声、というものを出す。「最近ずっと、四人なんだもん、四人もいいけど、二人もいいよ」
ヨウコは私の胸元を指でなぞる。その仕草がいじらしくて、堪らない。ヨウコはしっかり私が揺らぐツボというものを把握しているのだ。
「可愛いやつめ」
私は教室に誰もいないのを確かめてから、ヨウコの頭を撫で、キスしようとした。
その瞬間だった。
ストロボ。
強い光にはっとなる。
振り返る。
閉まっていたはずの教室の後ろの扉が開いていて、そこから立ち去る女子のスカートの裾は確認することは出来た。
写真を撮られてしまったのだろうか。
ヨウコと私が寄り添い合ってキスしようとしている写真を。
まあ別に、どうだっていいけど。
「どうだってよくないっ、」ヨウコは血相を変えて言う。「委員長だ、委員長の仕業だよ、あいつ私たちの写真をコレクションしてるんだよ、マジ気持ち悪いっつうの、こらぁ、待てぇ!」
「あ、ヨウコ!?」
私の静止を振り切り、ヨウコは委員長を追って教室を出て行った。
私も追いかけた方がいいのかなって迷っていると、スマホが震えた。
藤井からのメールだった。
画面を確認する。
『お嬢がスズ嬢に拉致られた』
私の思考は止まってしまった。
スズがメグミコを拉致った?
ちょっと、よく分からない。
とにかく声を出さずにはいられなかった。「はあ!?」
私しかいない教室に、私の声が響く。
窓に視線を向ける。
雨が降ってきていた。




