Tea Party
たまには、小さな記念日に便乗してみようと思ったんだ。
《Tea Party》
住宅街にこっそりと建っている喫茶店「Alice」。
この日も、店内にはいつものゆるやかな時間が流れていた。
「はい、どうぞ」
常連となった小説家と、この店の店員の一人で彼の恋人でもある彼女が、見慣れたやりとりをしていた。
いつもというわけではないが、彼女は小説家が注文をする前にコーヒーとお菓子を持っていく。その時に交わされる何気ない会話が、この店の雰囲気に合っていて心地好いのだ。
「あれ? 今日は紅茶なんだね」
テーブルに置かれたカップとお菓子を見て、小説家が不思議そうに言う。普段はコーヒーを淹れてきてくれる彼女が、この日は珍しく紅茶を淹れてきたようだ。
「今日は、ね……」
「何かあったっけ?」
「11月1日は『紅茶の日』なんだよ」
だから、今日は紅茶を淹れてきてみたのだと、彼女は言った。
「そっか」
それを聞いて納得した小説家は、優しく笑った。そして、軽く店内を見渡す。
店内には、オーナーと店員である彼女、そして一人の客しかいなかった。
「少し、みんなで休憩しようか」
柔らかい声で、小説家が提案をする。彼女は少し目を見張ったあと、オーナーに声をかけた。
少しして。店内では、三人だけのささやかなお茶会が始まった。
Fin.
H25 11/2
…ひとやすみ…
11月1日は「紅茶の日」だということをTwitterで知りました。最初は短い話も書く気はなかったのですが、ほのぼのとしたワンシーンが頭に浮かんできたので、勢いで書いてみました(笑)