キスの日
夕食を終え、片付けを済ませてリビングルームに戻ると、拓人がぼんやりとテレビを見ていた。
テレビの向かい側、テーブルを挟んで置かれているソファーに座る拓人の横に腰をおろし、いつものように二人で番組を眺める。
ふと、今日の日にちを思い出し、ささやかなイタズラ心が生まれた。
「ねぇ、拓人」
拓人の手が横にあるのをいいことに、肘の辺りの服を掴み、名前を呼びながらちょいちょいと引っ張る。
案の定、拓人は呼びかけに応じて彩の方に顔を向けた。
拓人が言葉を発する前に顔を近付ける。
――ちゅ。
一瞬だけ、二人の唇が重なった。
「えっ?」
突然の出来事に、拓人の瞳が大きく見開かれる。
キスをされたことに気付いた拓人が彩を見る前に、横からぎゅーっと抱きついた。
「彩?」
頭上から、彩の行動に戸惑う拓人の声が降ってくる。
「今日はさ、キスの日みたいだから……」
小さな声でそう答える。
不意に思い付いた行動だったが、今思えば、大胆なことをした気がする。
「彩」
優しい声で名前を呼ばれ、恐る恐る顔を上げる。
「――!?」
再び、二人の距離がなくなった。気が付けば、拓人の唇が彩の唇に触れていた。
口付けは先程より長く、離れた時には瞳にうっすらと膜が張っていた。
上にある顔を軽く睨むと
「キスの日、なんでしょ?」
と、楽しげな笑みと声が返ってきた。
Fin.
《ひとやすみ》
今日はキスの日というツイートを何回もリツイートして、何か話書けたらいいなぁとぼんやり思っていたら降ってきました(笑)
最後の方で少し暴走して行き詰まることもありましたが、なんとか間に合いました!一安心です。
久しぶりに甘々な話を書いた気がします。なんだか恥ずかしいです。でも、書いていて楽しかったです。
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