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はつゆき。

 出版社を出て、携帯電話のメールや電話の受信を確認すると、一件のメールがきていた。

送り主は、桜の咲く季節に恋人になり現在同居中の彩からだった。


『打ち合わせ終わったら教えて』


 いつもはこんなこと言ってこないため、珍しいなと思いつつ電話帳を開く。そして、メールの送り主に電話をかけた。


『もしもし?』

「彩? 今、終わったよ」

『じゃあ、ちょっと待ってて。今からそっちに行くから』


 少しだけ弾んだ声に、彩の機嫌がいいことを知る。


「それはいいんだけど、今、どこにいるの?」


 どうせ答えてもらえないだろうと思いつつ、一応尋ねてみる。


『ひ・み・つv 』


 案の定、返ってきたのは楽しそうな声でのはぐらかしだった。


「判った。待ってるよ」


 これ以上長電話しても仕方がないので、大人しく引き下がることにした。通話が終わり、携帯電話を鞄の中にしまう。

 ふと空を見ると、どんよりと薄暗い雲が空を覆っていた。今朝は晴れていて、冬の澄んだ青い空が広がっていたはずなのに、たった数時間で空は顔色を変えてしまった。普通なら、気分が沈んでしまうような曇り空なのに、彩の機嫌はよかった。


 出版社の前で彩を待つこと数分が経った。にこにこと嬉しそうな笑顔を浮かべて、彩が歩いてきた。


「早かったね。本当に、どこにいたの?」


 この出版社は家から電車で数駅のところにある。だから、家にいなかったことは判る。


「それは、教えない」


 笑顔を浮かべて言う彩は楽しそうで、これ以上聞いても無駄だと悟った。それに、本人の機嫌が良いからそれでいいかと思う。


「わかったよ。で、どうするの? このまま帰るの?」

「どうしよっか」

「どうしよっかって……」


 思わず脱力してしまう。


「うーん……」


 空をみて、この後どうするか考えているようだ。それもほんの少しのことで、すぐに答えが返ってきた。


「お茶してから帰ろう」


 そして向かったのは、出版社から駅に向かう途中にある喫茶店だった。そこで数時間過ごしてから、同じ家に帰るために電車に乗った。

 駅の改札を抜けて、街に出る。寒い中賑わう街をゆっくり歩きながら家へ向かった。

 街を抜けたころ、空から白い花が降ってきた。


「雪だ……」


 隣からほっとしたような優しい声で嬉しそうな呟きが聞こえてきた。


「ほんとだ」


 今年になって初めて降った雪。ここは都会に近いから、今回は積もらないだろう。


「朝からなんか降りそうだったんだよねー」


 宙を舞う雪を見ながら、彩がぽつりと言葉を零す。ひょっとして……。

 なんとなく、彩の機嫌が良かった理由とわざわざ出版社まで迎えに来てくれた謎が判った気がする。

 それを本人に言うのは恥ずかしかったし、今更口にすることでもなかったので言わないことにした。それに、先程の話を掘り返して今の時間を駄目にしたくなかった。


「早く帰ろうか」


 彩のコートが白い雪に少しずつ染められていくのを見て、早く家に戻ろうと声をかけた。


「そうだね。傘、忘れてきちゃったし」


 少し先を歩いていた彩が振り返り、困ったような顔で笑う。それに苦笑を返して、彩の隣を歩く。

 もう少ししたら、辺りは白い世界に変わるだろう。


Fin.


…ひとやすみ…

 まだ雪を見ていなくて、みたいな~なんて思っていたら降ってきた話です。小話じゃなくて雪が降ってきてほしかったです(笑) ゆっきーだーるま(雪だるま)の絵を4つ描きながら下書き(もはやプロットと呼べないくらいしっかりした内容だったw)を作り、テスト期間中だったので下書きのまま放置。それからもそもそと書き始めました。ら、完成してサイトに載せる前に雪が降ってきてしまいました(哀)大急ぎでラストを仕上げました(笑)

 ちょっと可愛らしい行動に出た彩を書きたかっただけです。はい。まぁ、毎回毎回私の自己満足で成り立っているので今更ですね(笑)

私がオリジナル創作をするのは、あくまで趣味であり、そして、私のストレス発散みたいなものですからww


サイト掲載:H26 2/4

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