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第六話

『こちらでございます』と、連れてこられたのは王宮の奥にある中庭。


そこには、騎士団の制服を着た見慣れた人物がいた。

「……せんせい?!」

先生、こと当時の王宮騎士団団長『クロエ・バレンシア』は、驚いて目をパチパチさせているわたしにかまわず、いつもの穏やかな声で中庭へと招き入れた。


彼もまた父の友人の一人で、月に何度か孤児院を訪れて剣術指導をしてくれていた。

わたしも男の子たちに混じって指導を受けていたのでよく知っている。

普段は穏やかな人だけど、剣を持つと鬼の団長へと豹変するんだよね……

「わたしはグレン王子の剣術指導もしてるんですよ。ふふふ、常々セツさんと王子は良き友人、良きライバルになると思ってたんです!! それで、ぜひ王子の剣術のお相手にと、陛下に頼んでこちらに連れて来てもらったんですよ」

先生はにこにこしながら、ゆっくりと前を歩く。

――そうだったんだ。

先生は前から『筋がいい。ぜひセツさんにきちんと剣術を習わせてみてください』と両親に話してくれていた。

しかし、さすがの両親も娘を男ばかりの剣術指南場や騎士学校に入れるのはためらって『お願いします』とは言えなかったらしい。

月に数回の剣術指導だけではちょっと物足りなさを感じていたけど、仕方ないかと諦めていた。

でも、王子さまの剣術の練習相手になるってことはつまり、先生からほとんどマンツーマン状態で剣術指導が受けられる!! こんな嬉しいことってない。


ん?!


ちょっと待って!! 前々から思ってたけど、先生もわたしのこと男の子だと思ってる?!

じゃなきゃ1日だけとはいえ、わたしを王子の剣術の練習相手に指名したりしないよね?!


「はぁー」

何だか悲しくなってきた。

「ん?? どうかしましたか?」

「いえ、なんでもないです」

そういえば、当の王子様が見当たらない。

取り合えず気を取り直して、あたりを見渡していると、中庭にある百日紅の上から声がした。

「クロエ……そいつはだれだ?」

「あぁー王子?! またそんな所に登って……早く降りてきて下さい。この子が以前お話ししていたセツさんですよ」

「ふ〜ん……」

王子と呼ばれた少年は、さっと木から降りてわたしの目の前にやってきた。


同じくらいの背丈に黒髪グレイの瞳の少年は、わたしの周りのどの男の子とも違って見えた。


妙に品格があって、人を惹きつける力がある……だってさっきから目がそらせない。

王族の人ってみんなそうなのかな? さっき会った陛下にはそんなこと感じなかったけど……

「おい!! 聞いてるのか?」

「??」

わたしは王子さまの前なのにぼーっとしていた。

「剣術は強いのかって聞いてるんだ」

「へ?! わっわかりません、ほかのひととあまりしたことないし……」

「じゃあ勝負だ」

「しょーぶ?!」

「5本勝負だ、いくぞ!!」

王子は腰にさしていた2本の剣のうち、ひとつをわたしに放り投げた。

「えぇ?!」

はっ早すぎない?!

もう少しお喋りしてからとか……せめて準備体操だけでもさせほしい。

っていうか何度も言うけど、わたし一応女の子だからっっ!!


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