第四話
静かな夜の闇に、剣がぶつかり合う音が心地よく響く。
「ちょっと会わない間に、また腕を上げんたんじゃないか。セツ隊長」
「(思ってもないくせに)……早く本題に入ったらどうです?」
「まぁ、そうせかすな。久々に会った我が子の成長ぶりに、喜びを噛み締めてるんじゃないか」
「父上がなかなか家に帰ってこないからでしょう」
剣を交えながら話すのは、けっこうきつい。
こっちはそろそろばててきたのに、剣の師でもある父はまだまだ余裕そうのが悔しい。
かれこれ、この状況が1時間ほど続いているにもかかわらず、だ。
「あはは、それもそうだな。しかし、お前も王宮に入り浸りじゃないか」
父の声がワントーン下がり、そう言うとやっと剣を下ろした。
「そろそろ潮時なんじゃないか、セツ……セシリア」
「……分かってるよ」
それから、どちらともなく家に戻りベットに入った。
が、なかなか寝付けない。
寝る前の適度な運動は、快眠につながるって言うけど今のはどうだった?
「潮時かぁ」
思わず独り言ちて、ごろんと寝返りをうっった瞬間
ドン
という音と共に、ベットから落ちてしまった。
今日は厄日かもしれない。
グレンとの待ち合わせには遅刻するし、こちとら疲れてて早く寝たいのに、さっきの運動のせいで目がさえてしまうし。
さっきの父の言葉が頭から離れなくて、独り言ちてしまうし……おまけにベットから落ちるし。
セツ
本名『セシリア・デ・クラリス』一生の不覚。