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第三十話

件の武術大会で、おれはなんとかセツに勝ち優勝することができた。

まさか同じブロックになるとは思っていなかったので驚いたが、久々に本気でやりあえて楽しかった。

少しはいい所を見せられたのでは?と思っていたが、セツは負けたのを悔しがるばかりで……

あいつのなかでおれは所詮ただの友人、ただのライバルなのだと落胆しながらも、優勝のオプションでついてくる王宮騎士団長の任を拝命し、同じく騎士団へ入団の決まっていたセツの側で地道に努力していくことにした。

騎士団へ入団すると、場内にある騎士団の寮へ入らなければならない。

セツが城へ来てくれたのは嬉しいが、あいつはあんな男所帯へ放り込まれた後どうするつもりだったのか……入団後すぐは2・3人の相部屋が常だ。おれが寮で生活するという案は、大臣たちによって早々に却下されたので、騎士団長の権限を使い色々理由をつけてセツは一人部屋にした。



「お前の努力の方向は間違ってるぞ」と突っ込みを入れてきたのは、他のブロックで優勝していたヴァン。数少ない同年代の出場者ということもあり、大会の待合室ですぐに打ち解けた男だ。

その時はおれが王子だと知らなかったらしく、後から知ったときは随分驚いていたが、その後も態度を変えないでいてくれる。

セツのことも「あの子女の子じゃないのか? 知り合いなら紹介してくれよ」と大会中しきりに聞いてまわっていたので、一発殴ってから……


全てを話してしまった。


セントレアでは女性騎士の前例がなかったが、傭兵をして各国を渡り歩いてきたヴァンには、男装をして出場していたセツがどうもひっかかったらしい。

そろそろ腰を落ち着けたいと話していたヴァンも、大会の出場理由は騎士団へ入団することだった。

騎士団の中に一人は理解者がいた方が、きっとセツのためになるだろう。そう自分に言い聞かせて、秘密を話してしまったことへの罪悪感から必死で逃げた。

なぜこんな大事な話をしてしまったのか自分でも分からない。


でも、もう限界だったのかもしれない。

誰かに話して楽になりたかった。

クロエのために必死で強くなろうとしているセツを見るのはつらい。

いっそ全てばれて普通の女の子に戻ってくれたらいい。

そしたら無理やり妃に召し上げて、王宮の一室に閉じ込めてしまえるのに。

ただ、それはひどく空しく。そんなことを一瞬でも考えてしまった自分に腹が立った。

このままずっと友人でもライバルでも何でもいい。

セツが側にいてくれたなら、きっと自分は何者にでもなれると思った。

ひどく自分勝手な思いを噛み締めながら、もう誰にもセツの秘密をばらすものかと固く誓った。


あいつがいなくなるのは、まだ耐えられそうにない。


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