第二話
自分で言うのも何ですが。
この国でおれ『セツ・デ・クラリス』の名を知らない者はいない。
……たぶん。
各国から猛者があつまるアトラスの武術大会で準優勝。
賞金と、憧れの職業ナンバーワン・高収入・高待遇といわれる王宮騎士団への入団許可を得たのが16才の頃。
いずれも史上最年少。
で、現在18才。
これまた史上最年少で王宮騎士団の最強部隊・一番隊の隊長を務めている。
わぁ、やっぱおれってすご……いやいや、おれの話はいい。
今はグレン。
『グレン・テレシア・セントレア』
先程までおれと言い合っていたセントレアの王子、次期国王陛下の結婚問題だ。
前にも言ったように、今この国ではこの話題で持ちきりになっている。
現在20才。
もうとっくに結婚していてもおかしくないのに、婚約者すらいないなんて王家では前代未聞。
幼馴染のおれでさえ、彼の浮いた話をひとつも聞いたことがない。
陛下には『政略結婚なんぞしなくても、政治はできる』と言って、かたくなに列国からの見合いを断り続けている。
まぁ確かに、彼はまだ王位を得ていないにもかかわらず、大臣たちに交じって政治をとり、国を良く治めていた。
しかも
し・か・も
彼は武術大会の優勝者。
王宮騎士団の元締め、王宮騎士団長も勤めている。
王子にもかかわらず、だ。
つまり、おれはやつに……失礼。
グレン王子に負け、現在彼の部下、兼幼馴染。
友人としては、やはり彼の結婚問題については心配なわけで、今回ちょっとばかりおせっかいを焼いてみたのだが……
陛下はうまく話しをまとめてくれるだろうか。
実はもう、東の姫君はこの国に来ている。
実際会って話をしてみたら、聡明でやさしい姫君だった。
しかもかわいい!!
きっとお互い好感を持つだろう。
グレンはおれたちの自慢の王子だし、彼女もきっと大丈夫。
グレンには幸せになって欲しい。
おれにはできない。
部下としても、幼馴染としても。
あの秘密があるかぎり……