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さんわ。


何をしてるんだろう。

出されたお茶を飲みながら思う。


目の前でお茶を飲んでる少女はカノンと名乗った。花の音と書くのだというのはいまいち分からない。何を書くんだ?

腰が抜けたカノンに案内されるままに辿りついた一軒屋。そこに招かれ、淹れ方を教わって淹れたお茶は美味しい。自分で言うのもなんだけれど美味しい。才能があるのかもしれない。


そんなことを思いながらお茶を飲んでいて気づいた。カノンは倒れている俺に言った。家に帰りたいけど帰り方が分からないの、と。

…ここじゃないのか?自分で案内して鍵開けてのんびりしてるここじゃないのか?

思わず首を傾げた。


「でね、王子様。隣の大陸に現われた勇者の話知ってる?」

「うん?勇者…って、ああ。第一王子自ら旅の共についていったっていうあれ?」

「そー。それそれ」


隣の大陸と言っても、間にいくつもの島を挟んでいるため結構遠い。そのせいか交流もない。それでも大陸を渡る商人や旅人から流れる噂はある。その中の一つが今言った勇者の話だ。


この大陸は案外平和だが、隣の大陸はそうでもない。突如として現われた魔王とその手下である魔物との戦いが歴史に残るほどに繰り返されている。

不思議なことにその大陸以外に魔物が現われたことはない。隣の大陸だけだ。何だ。何かあるのか。呪われてるのか。

実際はどうなのかは知らないが、とりあえずそういうわけで今の大陸中一の大国オーランスを先頭に魔王軍との戦いが繰り広げられている。


どちらが有利かといえば魔王軍。人間側は苦しい状態に追いやられた。

そんな中に現われたのが勇者だ。


「隣の大陸が信仰する女神オーランディアが寄越した救世主で、不思議な力を使って侵攻してきた魔王軍を退けた…確か、年端もいかない少女だって聞いたな」

「私より三つくらい上じゃないかな。高校の制服着てたし」

「……うん?」


何の話。






「その勇者が召喚されるのに巻き込まれたのが私だったりするの~」






表情が少し動いたくらいにしか見えなかったが、恐らくにっこり笑顔、なのだろう。それに思わず笑顔を返した。











*






あれはどしゃぶりの雨の日だった。

ねえ、馬鹿なの?死ぬの?そんなふうに自分を罵った日、傘を忘れた私は走っていた。

私以外のくらすめいとが傘を持ってきたにも関わらず、忘れた私はやまない雨に痺れを切らして走っていた。家に帰ったらしゃわーだ。お風呂だ。お母さん、お風呂沸かしておいて~!とてれぱしーを送りながらばしゃばしゃ音を立てながら走って。

寒い冷たい瞬間移動したい~~~!!そんな心の叫びを上げた時、私はちゃんと傘を差してる女の子とすれ違った。その時だ。


「いきなりその子の足元から光が射してね、は?と思って振り返ったら目の前真っ白になって」


驚いた顔の女の子と目が合ったのは覚えてる。

その後は知らない。気がついたら森の中にいた。


「……え、と?」

「そこでお師匠様に拾われて、どうやら召喚に巻き込まれたってことが分かって」

「まて。ちょっとまて」

「は~い」


アディアード王子様は額に手を当てて、空いてる方の手のひらをこっちに向けた。

うん。これ嘘?本当?妄想?みたいな感じ?


「つまり、勇者と同じ世界の人間?」

「うん」

「女神が勇者を召喚したのに巻き込まれて?」

「そう」

「お師匠様に拾われた?」

「まんまだねえ」


そんなことあるのか?いや、でも、とこっちを見た王子様は、そういえば時々発音可笑しいもんなあと呟いた。

うん。そう。基本すらすらしゃべれるんだけども、時々舌ったらずになる。

この世界はいくつも国があって大陸もあるのに言語は統一されてる。謎だ。何で統一されてるの。可笑しくない?

お師匠様に突っ込んだら、そういうものだから納得しなさいと言われた。きっとお師匠様も知らないんだ。

まあ、そういうわけで、言語が統一されてるんだから私のような話し方になるのは可笑しい。


「…とりあえず、続きをどうぞ」

「はあい。でね、そういう感じで世界を渡っちゃったから、帰り方分かんなくて。お師匠様も専門外だって言うし」

「お師匠様って何の?」

「魔法」


魔法使いです。お師匠様。普通にいるみたいです。魔法使いって。

魔法使いは国に申請して名前登録しないと指名手配です。魔法は使えない人からしたら対抗のしようもないから、ちゃんと国が管理しようってことらしい。私もしてます。登録。


「だから召喚魔法なんてお師匠様の管轄じゃないって思ったんだけど、人が使えるものじゃないんだって」

「なら俺なんてもっとダメだろ」

魔法使いじゃないし、と眉を寄せた王子様に、ううん、と首を横に振る。

「王子様じゃないとだめなの」

「俺?」

そそ、と頷けば、こて、と王子様が首を傾けた。…何か可愛らしい仕草が似合うな、王子様。かっこいいくせに、可愛らしい仕草も制覇とか。ちくしょう、美形っていいな…。

なんてことを思いながら、両手を胸の前で組んで王子様を見上げる。











「血、ちょうだい?」












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