一度で二度イケルバイブ
<主要登場人物>
■マッチ(近藤雅紀)男 現33歳元サラリーマン→さえないサラリーマンを経て現在無職求職中。独身。
頭の回転は悪くは無いが勉強は苦手。勉強出来そうに見られるためよくガッカリされることが多い。
社会に出ても同じく。
■野山 男 現33歳元警官 →現在サラリーマン。遠距離の彼女と結婚し現在3つ子の良き父。
警官を辞めた理由は決して明かさないがバカ。顔は男前だが昭和スター的な一昔前の顔立ち。ホモにモテることしばし。
■水元由美子 女 現32歳 既婚。ダンナとセックスレス。ショックン時はお嬢育ちのためわがままだった。グロイ話やマニアックなエロ話が好きで興味のあるものには突き詰めてのめり込むタイプ。畠山とは犬猿の仲だった。
<設定>
■ショックン(職業訓練校)卒業から9年、マッチと野山は久しぶりに再会して安い居酒屋で飲んでいた。
マッチ「野山、水元さん覚えてる?」
野山「えー?誰だったっけ?」
マッチ「わがまま放題の水元由美子だよ。」
野山「あーね!」
マッチ「この前街で偶然会ってさ。知り合いの結婚式の帰りって言ってたけど。水元さん自体はもう既に結婚してて今度旦那の転勤で名古屋いくんんだって。」
野山「はあ~あの水元さんが結婚ね~。でもさすがに卒業してから9年だしね。水元さん今何歳?」
マッチ「たしか32歳。結婚して5年目とか言ってたよ。」
野山「へー。どう?変わってた?」
マッチ「いや。なんかレーザー治療とかで30万かけてシミとか取ったらしく意外にきれいだったよ。なんか最近の技術の進歩はすごいって言ってたよ。進歩よりもチ■■の方に興味があった水元さんがね~。俺達もいろいろホントかよっていう話聞かされたしね。チ■■が親指くらいの親指姫ならず親指王子の話とか。」
マッチ「そうそう!でも最近の話聞いたらそんなの卒業してからパッタリらしくてショックンの暇な時代がピークだったんだって。最近なんかあんまり膣の粘液が乾燥してるもんだから駅まで歩くだけで股ズレ起こすって言ってたよ。」
野山「なんかそこら辺は昔の発言とあんま変わってないね。」
マッチ「でもね、あんだけ野山のことを”卒業までに一度は頂く”って豪語してた人が今は畠山と同じ運命を共にしてるんだって。」
野山「セックスレスってこと?」
マッチ「イーエス!」
野山「あんだけ余分なエロを振りまいてた人がね。」
マッチ「なんか人って変わるもんだね。それで不満ないの?って聞いたら特にないって。結構満足寄りなんだって。」
野山「じゃあまあいいんだろうね。」
マッチ「うん。そうだろうね。でも最近少しだけ心境変わってきたんだって。」
野山「そうなの?どうして?」
マッチ「バイブが関係してるんだってよ。」
野山「バイブ?」
マッチ「そう。野山バイブって知ってる?」
野山「女の人のアソコに突っ込むやつでしょ?。」
マッチ「そう。振動により快感を得られる性具のことだよ。一般的に男性が女性にいたずらチックに使用して最初は嫌がっていた女性もだんだんと気持ちがよくなってきていやらしい声を出しはじめ最終的に絶頂に達するのを男性が上から目線で見て楽しむのに使用する玩具。そんなイメージない?。」
野山「うん。まあそんな感じ。説明長いけど。」
野山「まあ言ってみれば男性の使う道具の一つ。って感じでしょ?」
マッチ「うん。でも案外そうでもないみたいなんだよ。。アダルトショップでバイブを買っていく方ベスト3には女性の一人客なんだって。」
野山「へーマジ?」
マッチ「水元さんもさバイブ買ったんだって。」
野山「マジ?」
マッチ「マジ。」
マッチ「でそれを短編小説にしたんだって。さっきメールでデータもらったから見る?」
野山「題名何?」
マッチ「一度で二度イケルバイブ」
野山「やめとこう。」
マッチ「そだね。絶対グロいし。」
野山「でも多分感想聞かれるよね。絶対。」
マッチ「確かに・・。じゃ感想だけ適当に考えてメールしよっか。」
野山「いいね!。」
マッチ「でも感想何て言う?」
野山「そだね~。読んでないから難しいね。題名が一度で二度~だから乾電池とソーラー電池の2電源式のバイブの話なんじゃないかな?晴れの日がずっと続くといいねって感想は?」
マッチ「浅い言葉の中に深い意味をはらんでるような意外にいい感想かもね。でもソーラー電源だと日中べランダとかもしくは車のダッシュボードで充電するの恥ずかしくない?おそらくソーラーの電源ではないね。電源なら100歩譲ってダイナモ発電式じゃない?発電ハンドルグルグル回すやつ。停電時のラジオとかであるよねよく。」
野山「いやいやダイナモの発電ハンドル回しながらってかなり器用な人じゃないと難しくない?アソコからピンポン玉飛ばす人と同じくらいの境地に達しないと無理だよ。」
野山「あ、変形案はどうかな?。スイッチ押したら無数のトゲが出てくるとか。」
マッチ「う~ん・・・」
マッチ「あのさ、なんか俺達発想のベクトルが間違ってる気がしない?」
野山「かも。」
マッチ「方向変えよう。」
野山「うん。」
マッチ「一度で二度ってことはさ、一つ食べたら2度美味しいみたいなことじゃないかな。」
野山「と言いますと?」
マッチ「昔さ、棒アイスで回りは普通のアイスなんだけど棒がガムで作られてたやつ知ってる?あれはアイス食べた後棒も食べれて2度美味しいってことなんだよ。だから今回の場合もさ、何か巨大なアメとかで作られてて使用後は食べれますよ~ってことで一度で二度~なんじゃないかな。おっ、この味イケル!みたいな。交互に使用すれば二度どころのおいしさじゃないよこれ。」
野山「おいおい、マッチはホントバカだなあ。ちゃんと考えてんのか。ふつうアメとかでやらんでしょ。常識で考えて。ほら、アメたくさん食べたら口切れちゃう時あるでしょ。社会にはPL法っていう製造メーカー責任もあるんだよ。だから安全の面からもアメという考えはナンセンスだよ。まったく。」
マッチ「じゃあ何だよ。」
野山「グミさ。」
マッチ「そっか。そういえば巨大な熊のグミを見た事ある。全長25センチくらいの。ソニプラか何処かで。確かにアメなんかよりも安全だ。そして噛む力が衰えた現代人にはぴったりの食材だ。どちらに使っても肉体が切れる事もない!くやしいが理にかなってる!」
野山「じゃあ感想は”やっぱ硬さよりデカさだよね!”で決まりだね。」
マッチ「いや待て!俺達は重大なミスを犯しているのかもしれない。水元さんのミスリーディングにまんまとはまってね。」
野山「え?どゆこと。」
マッチ「通常バイブはアソコに挿すもんだろ。そこがそもそものトリックなんだ。
抜け穴は一つじゃない!」
野山「え?」
マッチ「穴はもう一つあるだろ。」
野山「まさか!」
マッチ「そう。そのまさかだ。お尻の穴をすっかり忘れていたんだよ僕達は!いや、忘れていたと言うよりも忘れさせられていたと言う方が正しいのかもしれない。バイブは普通アソコに挿すもんだという余計な一般常識によってミスリードされたんだ。水元さんの巧みなマインドコントロールによってね。このバイブという言葉に隠された別の使用方法から目をそらすために。今はっきり言おう。水元さんならバイブをお尻に挿しかねない!もしそうならお尻に挿したグミの棒を美味しく食べたりはしない!よって今我々の追っているバイブはアメでもグミでもない可能性があるということだ!」
野山「そ、そうだったのか~!」
マッチ「あ、でも今また新たにひとつの仮説が!。」
野山「なに?」
マッチ「水元さんならやりかねない・・・・。」
野山「・・・確かに・・・・・食べるかも・・・。」
マッチ「うあ~!!わからない!一体どんなバイブだって言うんだ!!そして水元は一体いくつのトラップを仕掛けたら気が済むんだ!。手がかりは無いのか!。あ-もう!ショカツはなにやってんだ。しらみつぶしに探してんのか!」
野山「マッチ・・・」
野山「・・・読もうか・・・おとなしく・・・。」
マッチ「そだね・・・。」
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<■一度で二度イケルバイブ■> 著 水元由美子
由美子のマンションにバイブが届いた。
由美子はネットでバイブを注文したのだ。
もちろん初めてだ。
別にどうしてもほしかったわけではない。
いつものネットサーフィンでたまたま見つけたのだ。
「一度で二度イケルバイブ!」そのフレコミに興味というかなんとなしに関心を引かれたといった方が正しいのかもしれない。
結婚5年目旦那とのSEXは殆どと言っていいほどないに等しいがそれに不満を持っているわけではない。
結婚して一緒に住み始めるとSEXの頻度は激減するという話は20代前半で結婚した友達から聞いていたしSEXがなくても旦那と家族としてどこかに行ったり一緒に食事をしたりTVを観たりと誰かとの生活を楽しめていたからだ。
そんな生活の中でバイブを注文したのはやはりただのなんとなくだ。
そんな趣味もないし。
自分でも特に思い出す程の理由がない。
ダブルインカムで子供もまだなく特にお金も持て余すほどはないが特に困ってもいない。
そんな状況が軽い購買意欲を引き出したのかもしれない。
由美子はバイブのスイッチを入れてみた。
自分が知っている知識をもってして特に何か違う様子はない。
「やはりただのせこいキャッチコピーか。」少し安心を覚えた。
ここ何年性生活から遠ざかっている上さらに一度で二度なんてそんな予想もできない未知の世界が存在するかもしれないということに恐怖を感じてもいたからだった。
女というものから遠くなっていくような恐怖。
そしてその恐怖は安心とタッグを組んで怒りへと変化した。
「誇大広告で訴えてやろうか。」
しかし訴えて裁判なんかになったらいろいろとプライベートを聞かれるのはいやだし。
そんな考えが頭をよぎった。
最近の裁判ドラマでそんなくだらない知識だけは豊富だ。
旦那には買ったのなんて言わないでおこう。というか言うつもりは毛頭ない。
言わないでおこうと思ったのは欲求不満のメス豚等と思われるのがシャクなのもあるがこんな平たい生活の中で一人だけの秘密を持つということをちょっとした楽しみとして取り入れたからだった。
バイブはタンスの一番下の奥に隠した。
ホントに見つけられたくないものなら今時タンスに隠すのはナンセンスだが分かるとこにヒントを置くのも由美子流の楽しみ方のひとつなのだ。
その夜由美子はノートパソコンに夢中だった。
由美子は今SNSにはまっているのだ。
SNSとはコミュニティ型のWebサイトのことで友人・知人間のコミュニケーションを円滑にする手段や場を提供したり、趣味や嗜好、居住地域といったつながりを通じて人間関係をつくるサービスだ。
由美子は趣味が多い。
多いというより移り変わりが多い。
あるときは通販のジュースミキサーであったり乗るだけで痩せる振動するマシンであったり、はたまた1体何万円もするカスタム人形であったり。
日本に季節は4つだが由美子には季節がいくつもある。
そんな感じだ。
いろんなツイッターなど新サービスが横行する現在で今更SNS?なんて思うかもしれないがまたその季節が突然来たというだけの話だ。
この季節が続くのかすぐ終わるのかは天気のように断言はできない。
ただ言えるのは今はその季節であるという事実だけだ。
大自然の中の小さな人間の存在のようにそれには逆らえない。
由美子が使っているSNSはメッセンジャーと電話を併せたようなサービスで安い千円くらいのマイクヘッドセットがあればパソコンに映る相手を見ながら会話ができる。
しかし由美子が使っているのは四千円はするマイクとヘッドフォンだ。
家電売り場で店員にしつこく聞きまくって最終的に決めたのがこれだった。
なんでも凝り性なのが由美子の特徴といってもよいかもしれない。
ブームに乗るつもりはないがただ必要なものに対しては自分への投資という言葉で解決する方法を知っている。
今は午後10時。
由美子はオランダのスティファン(以降SF)という少年と近頃頻繁にこのSNSを利用して連絡を取っている。
SFは向こうの高校生で16歳。
日本でいうけっこうなイケメンにあたり北欧系ミュージシャンかサッカーMFにいそうと言った感じだろうか。
身長は16歳でも185センチあってビールもOKな国だから日本の高校生とはまた違う。
そして由美子はアパレルで働く23歳。
ということになっているが本当は32歳既婚者だ。
由美子はそんなとこがある。
その場限りの嘘を言ってしまうとこがあるのだ。
しかし人を陥れる嘘はつかないというのが由美子の信条としてあるのは確かだ。
実際アパレルで働いているとうとこしか正しくはない。
が誰も傷ついてはいないし傷つかないだろうというのが由美子の見解だ。
由美子はSNSでいろんな外国人と話をした。
由美子は英語が片言レベルなので英語を学びたいというのが当初の目的だった。
いろんな英会話スクールに行ったり聞いたりした結果金がかかりすぎるのと通う時間などで自分にはあわないと判断した。
SNSにしたのは無料で外国人と話ができると思ったからだ。
当初は会話目的だったがだんだんと写真、顔出しOKの人を探すようになった。
まあそれは人としての性だろうか。
たしかに勉強するなら楽しく勉強したいとうのが本音だ。
そんな外国人と話をして、といってもそこまで英語が堪能ではないのでチャットメッセージ文も加え意思の疎通に努めたおかげでなんとかお互いの言ってる内容は理解できたのだ。
しかし外国人も日本人も変わらないのはHな話にもって行くことだ。
由美子はそれにちょっといや気がさしていた。
そんな時に出会ったのがSFだった。
異国の田舎地方の16歳の少年の可愛らしさと清純さにコロリときたのだった。
といっても16歳の割りに大人な感じではあるが。
SFと仲良くなりたいという気持ちから23歳という嘘が出たのだ。
顔のシミを取るのに数十万円払った直後でもさすがに10代というには自分の中で罪悪感を感じた。
この嘘に悪意はない。
由美子はそう自分に言い聞かせていた。
SFとはここ3ヶ月ほとんど毎日連絡している。
SFも日本語を学びたい気があるらしくすこし片言ではあるが話せるようになっていた。
旦那はいつも帰りが遅く、今日も会社の飲み会で0時くらいまでは帰らない。
「今日はSFとゆっくり話せるわ」由美子は思った。
SFとネットを繋いで他愛のない話をした。
でもなんだか今日は話が盛り上がらない。
SFもなにかソワソワしているし上の空って感じだ。
確かに毎日話しているとそんな時もある。
しかし最近そういう雰囲気が回数を伸ばしてきている。
32歳がばれたか!?
由美子は一瞬冷や汗をかいた。
いやそんなはずはない。
自分に言い聞かせ由美子は気を取り直してSFに聞いた。
「何か用事があるんじゃないの?」
「NO、NO」
SFの答えだった。
由美子はパソコンに映るSFのカメラ画面をよく目を凝らしてみた。
するとSFは下半身を、股間をもぞもぞしてるではないか。
由美子はあのSFがと目を疑ったがSFも青春真っ只中の16歳。
そうしてても不思議はない。
由美子は初めて嘘が役にたったのかもしれないと思った。
由美子は32歳。
16歳の一方通行のテレフォンSEXを目の当たりにしてもまだ余裕がある自分がいた。
年の功?。
SFの2倍生きてきたという年月と経験がそう感じさせたのか。
答えは出ないことにしたがそれは由美子に王者の貫禄のような自信をプレゼントした。
王者由美子は今心のガウンを脱いだ。
ゴングは鳴ったのだ。
引退寸前の王者と体当たりで向かってくるチャレンジャー。
カチカチの挑戦者は経験のまだ浅い若者だ。
由美子は4、5年前の記憶へアクセスしながらカメラに顔を近づけ自分が思う一番Hな顔をしてみせた。
今まで会社の上司のオッサンやカネズル相手に社会を生き抜くためという名目で自然に身に付いたテクニックだ。
するとどうだろうSFは深いボディブローを喰らったかのような顔でこちらを見返したではないか。
由美子は「ちょっと待ってて」そう言って席を立った。
その時由美子はニュートラルコーナーへ悠々と帰ってきた世界ボクシングチャンピオンのように軽やかな気分だった。
振り返って画面に映るSFは足にキテル挑戦者のように体力を温存してかピクリとも動かず小刻みに呼吸をしていた。
しかし互いに次のラウンドでキメルということは互いに自覚しているようでもあった。
由美子はタンスの引き出しの一番下の奥から今日届いたあのバイブを密かに忍ばせた。
もちろんSFには見えないように。
こういうトビ道具のようなモノを使うのは反則行為なのかもしれないが絶対に負けられないというチャンピオンの意地のような気持ちがバイブを握るコブシを固くさせていた。
それはまさに由美子の信念の表れを全世界に示すかのように固かった。
「おまたせSF」由美子はそう言ってそのゴングが鳴り響くと同時に由美子とバイブにスイッチが入った。
ブイーン。
バイブの低音が鳴り響く。
「!?」一瞬戸惑うSF。
「ネットの無線接続のせいじゃない?」由美子が返す。
「いつか由美ちゃんに会いたいな」SFのジャブパンチ。
「わたしもSFに会いたいよ。」由美子も負けじと手数を出す。
お互いいい感じに体が温まってきた。チャンス!
「由美ちゃんどんな下着なの今日。。」いけると踏んだのかSFが突然大振りの右ストレートを打ってきた。
外人によくある誘い口だ。
そんな大振りのパンチがチャンピオンにあたるわけがない。
「SFの好きなやつよ。」由美子のダッキングでかわすとみせかけつつ「裸なの。」由美子は言った。
由美子ががプライドとキャミソールを投げ捨てたと同時にSFへのカウンターパンチが炸裂した。
もだえるSF。かなり苦しそうな様子。
しかし苦しい時に出した奇跡のパンチがクリーンヒットするっていうのはボクシング漫画の中では形成を逆転する定石法だ。
今回もまさにそれ。
「由美ちゃん。。この夏、由美ちゃんに会いに行っていい?I LOVE YOうっ・・。」
下半身にきてるSFの前かがみになりながらの一撃。
SFが日本に自分に会いに来るっというある意味意表をついた攻撃は一瞬由美子をひるませた。
「だめよ」由美子は小さな声になっていた。
日本にSFが来たら32歳で既婚がばれるかもしれないという一抹不安がよぎったからだ。
しかしそれと同時にSFの吐息のような I LOVE YOU とその苦しそうな顔が由美子の不純物の混じったマン 汁に火をつけた。
大人びてるとはいえ相手は16歳。
オトコとして見てはダメだと由美子を説得する名トレーナー丹下ダンペイを由美子は左フックで払い飛ばした。
長い間味わっていない、味わうことさえ忘れてしまった感情が蘇ってきた。
由美子はバイブを自分の穴の中で激しく動かした。
SFは言った。「由美ちゃんに会いに行くよ今度の夏休み」
「だめよ」由美子はバイブを強く動かしながら言った。
会ってみたいという気持ちはあったが会ってはいけないと、自分を叱り戒める意味でさらにバイブを強く押し入れた。
由美子は苦しみ、もがいた。
バイブを握りながら自分の中でC4(プラスチック爆弾)でも握っているかのような感情を覚えていた。
爆発するんじゃないか。
しかし一方ではラグビーの試合が終わった後のノーサイドという”敵も味方もない”という清々しさに似た気持ちの片鱗も生まれかけていた。
「じゃあ由美ちゃんが遊び来なよ!オランダ案内するからさ」SFもくいさがる。
必死のクリンチだ。
「ね、おいでよ!」SFが言う。
由美子はなにも答えない。
「ねえ由美ちゃん聞こえてる?、」さらに由美子は答えない。
「ねえ由美ちゃんてば、来てくれるの?来ないの?どっちなの?」由美子は黙ったままだった。
由美子が試合放棄したかにも見えたまさにその時、由美子が言った。
「イクーっ!!!」
そう、画面からは見えないところで由美子の手首は高速運動を繰り返していたのだった。
「ありがとう由美ちゃん来るの楽しみに・・」SFはその後に何か言ったんだと思うが由美子はバタンとノートパソコンを閉じた。
由美子は洗面所へ行きすぐにシャワーを浴びた。
そしてベットで横になると深く深呼吸をした。
次の朝由美子は朝早く目を覚ました。
隣にはいつ帰ってきたのか旦那が寝ていた。
ふと鏡を見た。
昨日髪を乾かさないまま眠ってしまったために爆発してしまった髪を見て由美子は我ながら少しおかしくなった。
そして決めた。
バイブが在る事を旦那に言おうと。
友達の結婚式二次会のビンゴで当たったというウソはもう考えついていた。。
(END)
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( 読み終わって野山 マッチタバコを吸う。 )
野山「結局分かんなかったね・・・・バイブの材質・・・・。」
マッチ「うん。」
マッチ「ちょっと分かりかねるってメールしとくよ。」
野山「だね!。」
(終わり)